
| 報告書番号 | MA2025-10 |
|---|---|
| 発生年月日 | 2021年05月27日 |
| 事故等種類 | 衝突 |
| 事故等名 | ロールオン・ロールオフ貨物船白虎ケミカルタンカーULSAN PIONEER衝突 |
| 発生場所 | 愛媛県今治市梶取ノ鼻北北東方沖(来島海峡航路西口付近) 桴磯灯標から真方位285°1.4海里付近 |
| 管轄部署 | 事務局 |
| 人の死傷 | 死亡:負傷 |
| 船舶種類 | 貨物船:タンカー |
| 総トン数 | 10000~30000t未満:1600~3000t未満 |
| 報告書(PDF) | 公表/説明資料 |
| 公表年月日 | 2025年10月30日 |
| 概要 | ロールオン・ロールオフ貨物船白虎は、船長ほか11人が乗り組み、来島海峡航路西口を出て安芸灘南航路に向けて南西進中、また、ケミカルタンカーULSAN PIONEERは、船長ほか12人が乗り組み、来島海峡航路西口に向けて北東進中、令和3年5月27日23時53分38秒頃、愛媛県今治市梶取ノ鼻北北東方沖において、両船が衝突した。 白虎は、左舷中央部に破口を生じて沈没し、船長及び乗組員2人が死亡したほか、乗組員5人が負傷した。また、ULSAN PIONEER は、船首部が圧壊し、球状船首に曲損等を生じたが、死傷者はいなかった。 |
| 原因 | 本事故は、夜間、来島海峡航路で南流時の航法が指定されている時間帯に、同航路西口から南西進しようとしていたA船と安芸灘南航路から来島海峡航路西口に向け北東進中のB船とが互いの進路を交差する状況で接近中、A船が、同航路出航後に安芸灘南航路に針路をとってもB船との衝突のおそれはないものと判断し、来島海峡航路を出航後間もなく、両船が1M程度の距離まで接近した時期に、B船に対して操船意図を無線で伝えないまま左方に30°変針して針路を230°としたため、A船の船尾側を通過することを想定して同航路西口の北側を目指していたB船と短時間のうちに接近することとなり、また、B船の船橋内が予測していなかった突然のA船の変針に混乱する中、航海士B1が船長Bに了承を得ないままA船に対して無線で「Port to Port」(お互いの左舷を対して通過する通航方法)で通過したい旨を伝え、これに同意したA船が右転したものの、B船が、船長Bの「Hard port」(左舵一杯)の指示により、A船との合意どおりに「Port to Port」で避航しなかったため、両船が衝突したものと考えられる。 A船が安芸灘南航路に向けて左方に30°変針する際にB船に操船意図を伝えなかったのは、変針前に航海士A1がレーダーの機能を用いて試行操船を行った結果、B船と左舷を対してCPA0.2M程度で通過できると判断し、衝突の危険性を認識していなかったことによると考えられる。航海士A1が想定したA船とB船の間の通過距離は不十分であるとともに、航海士A1は試行操船の結果が示す小さいCPA値の意味を十分理解していなかった可能性があると考えられる。 船長Bが「Hard port」を指示した意図は明らかにできなかったが、A船が230°に針路を定めた頃、両船間の距離は約0.5Mしかなく、30knを超える相対速力で急速にB船に迫ってきたA船の船影を目の前にして、冷静な判断に基づく操船ができなかった可能性があると考えられる。 A船においては、来島海峡航路西口付近を航行していたにもかかわらず船長Aが在橋していなかったことにより、周囲の見張り、状況判断及びB船との無線交信を適切に実施できる体制ではなかったものと考えられ、このことも本事故の発生に関与したものと考えられる。 また、B船が、当初は北流時に来島海峡航路を通過する計画であったのに、速力調整等を行わず、南流時に同航路に近づいてから通航経路を変更したことは、A船と同航路西口付近で接近する状況を招き、さらに、航海士B1が必ずしも十分な乗船経験がない中、船長Bが昇橋して操船指揮をとる時機が遅れたことも、周囲の見張り及び状況判断に影響を及ぼすこととなり、本事故の発生に関与したものと考えられる。 |
| 死傷者数 | 死亡:船長、機関士2人、負傷:航海士3人、機関長、甲板員1人(白虎) |
| 勧告・意見 | |
| 情報提供 | |
| 動画(MP4) | |
| 備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。