委員長からのメッセージ

運輸安全委員会が果たす役割

(写真)李家委員長
 運輸安全委員会委員長を拝命して間もなく一年を迎えます。運輸安全委員会は、航空、鉄道、船舶の事故等の調査を行い、再発の防止と被害軽減につながる提言を行う機関であり、運輸の安全を守る組織の長として、責任の重さを感じてきた一年でありました。

 運輸安全委員会のミッションは、『私たちは、適確な事故調査により事故及びその被害の原因究明を徹底して行い、勧告や意見の発出、事実情報の提供などの情報発信を通じて必要な施策又は措置の実施を求めることにより、運輸の安全に対する社会の認識を深めつつ事故の防止及び被害の軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させ、人々の生命と暮らしを守ります。』です。

 このミッションを果たすために、事故等発生の通報があり次第、航空、鉄道、船舶の三つのモード毎に担当の事故調査官による調査が開始されます。調査の流れとしては、発生直後の事故現場等での初動調査から始まり、関係者への口述聴取や事実情報の収集を積み重ね、事実関係を整理し、分析を進めていくことになります。
 これらの調査においては、迅速かつ精密な情報収集のため、ドローンや3Dスキャン装置等の新たな機材を導入し、調査・分析能力の高度化を進めています。
 調査報告書の案が作成されると、モード毎に構成されている部会での審議が始まります。委員とともに議論を重ね、関係者への意見聴取等の手続を経て、最終的な調査報告書として議決し、国土交通大臣への提出とともに公表することになります。
 調査報告書の公表を通じて、当該事故等の原因究明や再発防止に資するのみならず、三つのモード全てに係る運輸の安全性の向上を目指しております。

 我々の活動は、個々の事故等についての調査報告書の作成のみにとどまる訳ではありません。これまでに蓄積した調査結果を基に、特に重要なテーマを選定し、将来の事故防止を図るため、運輸安全委員会ダイジェストやリーフレット等の安全啓発資料を公表しています。昨年は、鉄道の作業員等が列車に接触して死傷する事故の防止やダイビング船の安全運航に関する資料を作成しました。

 また、調査報告書の公表を待たず、調査の過程において事故等の防止や被害の軽減のために有益な事実情報が認められたときには、速やかに関係機関へ事実情報を提供し、公表することも行っています。昨年は、ヘリコプターによる航空事故や列車が脱線した鉄道事故に関して情報提供を行いました。

 さらに、国際的取組として、世界各国の事故調査当局の集まりである国際運輸安全連合(ITSA)委員長会議などの国際会議において、トップレベルや各分野のエキスパート同士の意見交換と情報共有を通じて、国際的連携の強化を目指しております。鉄道分野では、当委員会の提唱により「国際鉄道事故調査フォーラム(RAIIF)」が設立され、2024年にその第1回を東京で開催し、昨年は第2回が台湾で開催されましたが、このRAIIFは毎年継続的に開催されることになっており、本年シンガポールで開催予定の第3回も当委員会から参加する予定です。

 近年、様々な分野で利用拡大が進んでいるドローン等の無人航空機に関しては、当委員会内で事故等調査の体制が既に構築され活動を続けておりますが、その他に次世代モビリティと呼ばれる新たな輸送手段が脚光を浴びる機会も増えております。例えば、昨年開催された大阪・関西万博では、空飛ぶクルマと呼ばれる次世代の空の移動手段のデモフライトが行われたことは記憶に新しいところです。このような次世代モビリティによる事故等への対応も見据えながら、運輸の安全性の向上という当委員会の使命を果たしていくことができるよう、本年も努めて参る所存です。

 今後とも、皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

     令和8年1月

運輸安全委員会委員長 李 家 賢 一