委員長からのメッセージ

就任にあたって

(写真)李家委員長
 この度、運輸安全委員会委員長を拝命いたしました李家(りのいえ)です。
 運輸安全委員会は、航空、鉄道及び船舶の事故等の調査を適確に行い、その結果に基づいて事故等の防止、被害の軽減に必要な提言を行うことを任務としています。公正・中立の立場から、日本の運輸の安全を守る重要な組織であり、委員長として、その期待の大きさと責任の重さを感じております。

 運輸安全委員会のミッションは、『私たちは、適確な事故調査により事故及びその被害の原因究明を徹底して行い、勧告や意見の発出、事実情報の提供などの情報発信を通じて必要な施策又は措置の実施を求めることにより、運輸の安全に対する社会の認識を深めつつ事故の防止及び被害の軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させ、人々の生命と暮らしを守ります。』です。このミッションの下、運輸安全委員会では様々な取組を進めてきています。

 例えば、各分野でデジタル化が進展する中、事故があった機体、車両、船舶等に残された事象やデータの解析を行うほか、ドローンや3Dスキャン装置などの新たな機材を導入して事故現場の状況等を正確に把握するなどの科学的・客観的な調査を推進し、公正・中立な立場からの適確な事故原因の究明に努めています。

 また、一つ一つの事故等調査報告書のほか、蓄積した調査結果を特定のテーマで分析し、事故等の傾向や共通する防止策等について、具体的事例を交えて紹介する「運輸安全委員会ダイジェスト」や「地方版分析集」を発行して安全啓発活動に活用するなどの情報発信も進めています。

 さらに、国際的な取組に目を向けると、事故調査当局間におきまして、個々の事故調査において実務レベルの連携や協力を行うほかにも、トップレベルや各分野のエキスパートなどで意見交換や交流を進めています。
 航空及び船舶分野では、国際機関の枠組のもとでこれらの取組が進められています。鉄道分野では、昨年(令和6年)10月に、世界初の鉄道事故調査当局の国際的枠組みとなる「国際鉄道事故調査フォーラム(RAIIF)」を運輸安全委員会の提唱により設立し、第1回を東京で開催しました。
 今後も、より一層の国際的な連携強化と安全性の向上につながる取組を進めていきたいと考えています。

 このような成果も踏まえつつ、空飛ぶクルマや自動化など新たな技術を取り入れたモビリティによる事故等への対応も見据え、運輸安全委員会のミッションを踏まえた取組を委員、職員が一丸となって更に推し進め、事故等の原因究明と再発防止のための提言を通じて、運輸の安全に十分に寄与することのできる組織であり続けられるよう、努力してまいりたいと考えております。

 

     令和7年5月

運輸安全委員会委員長 李 家 賢 一