報告書番号 | MA2012-1 |
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発生年月日 | 2010年06月18日 |
事故等種類 | 転覆 |
事故等名 | カッター(船名なし)転覆 |
発生場所 | 静岡県浜松市浜名湖北部(北区三ヶ日町佐久米南方沖) 三ヶ日町所在の舩岩三角点から真方位289°760m付近 |
管轄部署 | 事務局 |
人の死傷 | 死亡 |
船舶種類 | プレジャーボート |
総トン数 | その他:5t未満 |
報告書(PDF) | 公表 |
公表年月日 | 2012年01月27日 |
概要 | カッター(船名なし)は、静岡県立三ヶ日青年の家における中学校の野外活動授業として生徒18人及び教諭2人が乗船し、とう漕訓練を行っていたが、風波が強くなってとう漕が困難となり、同青年の家のモーターボートMikkabiYouthCenterにえい航されて浜名湖の佐久米南方沖を南西進中、平成22年6月18日(金)15時25分ごろ左舷側に転覆した。 カッター(船名なし)は転覆し、船内に閉じ込められた生徒1人が死亡した。また、オール1本を折損したが、船体には損傷はなかった。 |
原因 | 本事故は、大雨、雷、強風、波浪及び洪水注意報が発表された降雨の状況下、A船が、本件青年の家における本件中学校の野外活動授業に使用され、通常時の訓練方法である東コースによる自主艇として浜名湖北岸沿いにとう漕訓練を行っていた際、風波が強まってとう漕が困難となり、本件所長が、B船で救助に赴き、A船を左斜航状態で、また、湖水がA船の左舷船首側から連続して打ち込む状態でえい航したため、佐久米南方沖を南西進中、滞留水が増加するなどして左傾斜が増したことで左舷側のオールが着水して左回頭し、その後、右舷側に座っていた生徒等の姿勢が崩れて左舷側に移動して左傾斜が更に増したことから、左舷舷端が没水し、湖水が船内に流入して左舷側から転覆したことにより発生したものと考えられる。 (1) 本件所長が、A船を左斜航状態で、また、湖水がA船の左舷船首側から連続して打ち込む状態でえい航したのは、カッターのえい航に関する経験がなく、かつ、知識が乏しかったことから、A船のえい航を開始する際、えい航索の取付けやA船を風上に向くようにえい航しなければならないという気持ちで精一杯であり、滞留水の排水、舵の操作方法等についての被えい航時の注意事項をA船に伝えず、また、風上に向ける進路としたことによるものと考えられる。 (2) A船が大雨、雷、強風、波浪及び洪水注意報が発表された降雨の状況下、本件訓練に使用され、通常時の訓練方法である東コースによる自主艇として訓練が実施されたのは、本件所長及びリーダーである指導員1が、12時ごろの気象予報で気象注意報が発表されていることを知っていたが、15時には東の風、風速4m/sの予報であったので、本件訓練に支障となる気象状況でないと思ったことによるものと考えられる。 (3) 本件青年の家が、本件訓練を通常時の訓練方法で実施していたことは、本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。 (4) A船がとう漕が困難となったのは、本件青年の家では、気象注意報が発表された場合の訓練中止基準が指導マニュアルに規定されてなく、指導マニュアルが適切な内容となっておらず、また、天候不良時や訓練コース選定時機等に関する訓練方法についての指導マニュアル等が適切な内容となっていなかったことなどから、南方からの風波が次第に強まっていたが、本件訓練が継続され、オールが揃わないようになるとともに、船酔いした生徒が発生したことによるものと考えられる。 (5) 気象注意報が発表された場合の訓練中止基準が指導マニュアルに規定されてなく、指導マニュアルが適切な内容となっておらず、また、天候不良時や訓練コース選定時機等に関する訓練方法についての指導マニュアル等が適切な内容となっていなかったのは、 ① A社が、本件青年の家が指定管理者制に移行される際、前所長から県直営時に本件青年の家において実施されていたカッター訓練の中止基準を含む訓練方法等を継承するように申し入れられ、また、本件教育委員会からはこれらに関する申入れが何らなかったことから、1年目は県直営時に本件青年の家において実施されていた中止基準を含む訓練方法等でカッター訓練を行うようにしたこと ② A社が、安全対策についても県直営時に本件青年の家において実施されていた対策を継承すればよいと思い、カッター訓練について、安全面の検討を行わず、県直営時に本件青年の家において定められていた指導マニュアルや指導員間の申伝えを継承していたこと によるものと考えられる。 (6) A社が、カッターのえい航救助に関する要領を含むカッター事故を想定した救助体制等を危機管理マニュアルに定めておらず、また、本件青年の家の職員に対してカッターのえい航訓練を行っていなかったことから、本件所長は、 カッターのえい航に関する経験がなく、かつ、知識が乏しかったものと考えられる。 (7) A社が、カッターのえい航救助に関する要領を含むカッター事故を想定した救助体制等を危機管理マニュアルに定めていなかったこと、及び本件青年の家の職員に対してカッターのえい航訓練を行っていなかったことは、本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。 (8) 本件教育委員会が、A社に対してカッターのえい航救助に関する要領を含むカッター事故を想定した救助体制等を危機管理マニュアルに定めさせておらず、また、本件青年の家に関する事前引継ぎ時を含めてカッターのえい航訓練を行わせていなかったことは、本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。 |
死傷者数 | 死亡:1人(生徒) |
勧告・意見 | 勧告 |
情報提供 | |
動画(MP4) | |
備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。