JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2026-4
発生年月日 2022年07月31日
事故等種類 転覆
事故等名 コンテナ専用船まや転覆
発生場所 山口県徳山下松港第1区の晴海7号岸壁  徳山下松港地ノ筏灯台から真方位164°1,210m付近
管轄部署 広島事務所
人の死傷
船舶種類 貨物船
総トン数 500~1600t未満
報告書(PDF) 公表
公表年月日 2026年04月23日
概要  コンテナ専用船まやは、船長ほか5人が乗り組み、荷役を請け負った会社の社員2人が乗船し、徳山下松港第1区の晴海7号岸壁に着岸中、同岸壁にあるガントリークレーンで積荷役を行い、全てのコンテナを積載した後、令和4年7月31日12時35分頃に転覆した。
 まやは、転覆後に沈没して濡損(全損)を生じ、コンテナ106個が流出したが回収され、また、ガントリークレーンは、ケーブルリールの曲損等を生じた。
原因  本事故は、船長が、井本商運株式会社(以下「A社」という。)運航担当者が提示した、まやの自由水影響を考慮した見掛けの重心と横メタセンタとの距離を表すG₀M値(以下「G₀M値」という。)が大幅に不足する‘A社運航担当者が作成したまやのコンテナの最初の積付け計画(以下「第1次センタープラン」という。)を修正した積付け計画’(以下「本件センタープラン」という。)を受け入れ、まやが、本件センタープランのとおり、コンテナの積荷役を行ったため、徳山下松港第1区の晴海7号岸壁における荷役作業中、船尾トリムで復原力が不足した状態になり、左舷側に約5°傾いたところでブルワーク下部の放水口から海水が流入して更に復原性が低下し、計画された最後のコンテナを積載した後に、左舷側への傾きが増加していき、転覆したものと考えられる。
 船長が、G₀M値が大幅に不足する本件センタープランを受け入れたのは、A社運航担当者に第1次センタープランでは輸送できないと回答し、再度送られてきた本件センタープランを確認して、復原性がほとんど改善されていないことを認識したものの、まやが、山口県岩国港の入港及び荷役作業を控え、スケジュールが決められていた中で、本件センタープランの更なる変更を要望すれば、関係の会社に迷惑をかけると思ったこと、また、傾斜を5°に至らない程度に保って航行すれば、何とか阪神港神戸区まで帰航できるものと思っていたことによるものと考えられる。
 船長が、その際に、A社運航担当者に回答せずに積極的に意思疎通を図ろうとしなかったのは、A社運航担当者が当初から全てのコンテナを何としても運ばせようとしているのではないかと思い、また、過去に、休日に連絡しようとした運航担当者が電話に出なかったことや、避泊を要望した際に承認されなかった経験があったことによるものと考えられる。
 さらに、船長が、まやを管理し、船長など乗組員が雇用されている会社の社員として、A社に派遣されているとの認識があり、A社との間で問題が生じると、同会社の運営に影響すると思い、A社運航担当者が要請に応じない場合には、従わざるを得ないと考えていたことは、A社運航担当者に積極的に意思疎通を図ろうとしなかったことに関与したものと考えられる。
 A社運航担当者が、船長から第1次センタープランの修正を要望されたものの、荷物を削減せずに重い荷物の下部への移動のみを行い、G₀M値がG₀M許容限度よりも約0.8m不足する本件センタープランを船長に提示したのは、まやが二層甲板型の総トン数749トンのコンテナ専用船(以下「749トンコンテナ専用船」という。)と同等の1,200tのコンテナ積載能力を保有しているものと思い、船長から荷物の削減について明確な要請がなかったと認識したことによるものと考えられる。
 A社運航担当者が、G₀M値が許容限度に比べて大幅に不足し、まやの復原性が危険な状態にあることを認識できなかったのは、まやのコンテナ積載重量が、これまで749トンコンテナ専用船の積載重量の目安として適用してきた約1,200tで、船長が了承すれば問題なく運航されるものと思い、また、‘コンテナの積付け状態における復原性等に関する要素を計算する専用アプリケーションソフトウェア’(以下「専用ローディングアプリ」)で確認を行っていなかったことによるものと考えられる。
 A社運航担当者が、第1次センタープラン及び本件センタープランを専用ローディングアプリで確認しなかったのは、日頃からまやの燃料及び清水などの正確な数値を把握できないと思っていたこと並びに最終的に船長が専用ローディングアプリで確認してまやの安全性を判断するものという認識を持っていたことによるものと考えられる。
 A社運航担当者が、一層甲板型のコンテナ専用船であるまやが、他の749トンコンテナ専用船と同様の性能及び積載能力を有していると思ったのは、まやの復原性などが他の749トンコンテナ専用船と異なるなどと教えられておらず、また、まやの運航を担当した間、まやの積載重量が1,000tを超えることがなく、安全な運航が続けられていたことによるものと考えられる。
 A社において、運航の可否の判断を船長に求めているものの、船長及び運航担当者の間における措置について、明確な規定がなく、まやの特性については、運航担当者のOJTにおいて引き継がれる仕組みになっていたが、引き継がれてこなかったことから、本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。
死傷者数 なし
勧告・意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。