JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2013-9
発生年月日 2013年04月01日
事故等種類 転覆
事故等名 漁船一恵丸漁船大勝丸転覆
発生場所 石川県珠洲市禄剛埼北東方沖 禄剛埼灯台から真方位041°19.6海里(M)付近
管轄部署 神戸事務所
人の死傷 行方不明
船舶種類 漁船:漁船
総トン数 5~20t未満:5~20t未満
報告書(PDF) 公表
公表年月日 2013年09月27日
概要  A船は、船長A、甲板員A1及び甲板員A2の3人が乗り組み、珠洲市蛸島漁港北東方沖の水深約400mの漁場において、あまえび底引き網漁に従事し、4回のえい網で約150kgの漁獲を得た後、平成25年4月1日11時20分ごろ北西方に向けて約1.1ノットの対地速力で5回目のえい網を開始した。
 A船は、12時00分ごろ前進できなくなったので、えい網中の網の一部が根掛かりしたものと思い、機関の回転を上げて離脱を試みたものの、容易に外れそうになかったので、機関を中立にした後、とりあえず、揚網に取り掛かることにし、12時10分ごろ船首部から巻き込みを開始した。
 A船は、12時45分ごろ1,000mの前綱及びチェーンを巻き終わり、奥綱を50mまで巻き込んだところ、ラインホーラーに掛かる負荷が増して巻き込みが停止し、根が船首部直下に位置する状況となった。
 船長Aは、自船の西方約2Mの所において、あまえび底引き網漁に従事していた僚船であるB船に根掛かりしたと伝えたところ、B船がえい航するとの申し出があり、えい航してほしい旨を依頼し、根掛かりした方向と反対方向に船首部からえい航してもらうため、ストッパーを取って奥綱の連結部を切り、奥綱の一端を右舷側通路を通って船尾部の舷縁に立てた高さ約50cmのスタンションをかわし、操舵室後部のフックに掛けた長さ約5mの索に接続したところ、A船は北西を向き、奥綱が張って根が船尾部直下に位置する状況となった。
 B船は、A船から根掛かりしたとの連絡を受けたので、揚網中の網を揚げきって操業を終え、13時35分ごろA船に駆けつけて右舷側から接近し、甲板員Bが、長さ約50mのえい航索に取り付けた先索を投げ、一方をB船の操舵室後方のフックに掛け、もう一方をA船の船首たつに掛けさせ、えい航の準備を整えた。
 このとき、A船は、根掛かりした奥綱が、スタンションの上端を越えて右舷舷縁越しに右舷の下方向に強く張って延びるようになっていた。
 船長Bは、船長Aからの漁業無線による「左、左」との連絡を受け、左転してA船を左転させて南方を向かせ、B船をA船のやや右舷前方に位置させた後、機関をほぼアイドリング状態の回転数毎分(rpm)500として南方に向けてえい航を始め、次第に800rpmまで上げた。
 船長Aは、その後、甲板員A1及び甲板員A2と共に奥綱にストッパーを取り、スタンションをかわして船尾方に取り直そうとし、2回試みたものの、ストッパーの索が切れたり、緩みが不足したりして取り直しができず、3回目の取り直しを試みるうち、13時44分ごろ船体がみるみるうちに右傾斜を始め、右舷側3か所のスカッパーから海水が流入し、右舷側への傾斜が増した。
 船長Aは、B船にえい航を停止させるため、連絡しようとして慌てて操舵室に戻る一方、甲板員A1及び甲板員A2が、バラストタンクに海水を注入しようとして左舷船首甲板に向かい、船長Aにポンプの電源を入れるように頼んだが、注入する間もなく、13時45分ごろ、右舷側に大きく傾斜し、転覆した。
 船長Aは、転覆して反転したA船の操舵室から機関室に逃れ、しばらく同室に留まったものの、船尾側のバッテリー室から脱出し、数分後に海面に浮上した。
 甲板員A2は、船体の下方にいったん閉じこめられたものの、間もなく船体をかわして浮上した。
 船長Bは、A船の転覆に気付いて機関を中立とし、別の僚船にA船が転覆した旨を連絡した後、甲板員Bがえい航索を放してA船から離れ、左転してA船の至近に戻り、船首方に甲板員A2を認めて救命浮環を投下したが、その際、甲板員A2の南東方約5mの所の海面で両手をばたつかせている甲板員A1を認めた。
 甲板員A2は、B船が投下した救命浮環につかまり、甲板員Bが指さす甲板員A1のいる方向に向かい、甲板員A1を探したものの、見付けることができなかった。
 船長Bは、船内から脱出した船長Aを、その後、甲板員A2をそれぞれ助け上げたものの、甲板員A1を見付けることができなかった。
 甲板員Bは、携帯電話で漁業協同組合に事故を通報し、同組合を経由して海上保安部に救助を求めた。
 A船は、15時25分ごろ転覆した場所付近で沈没した。
 船長A及び甲板員A2は、来援した海上保安部の巡視船艇、僚船と共に甲板員A1の捜索に当たり、17時00分に当日の捜索を終えた後、蛸島漁港に戻った。
原因  本事故は、A船が、禄剛埼灯台北東方沖において、B船にえい航されて根掛かりからの離脱作業を行う際、両船間で事前の打合せを適切に行わず、A船の右舷前方にB船が位置し、奥綱が右舷の下方向に張った状態でえい航が開始されたため、えい航索及び奥綱の張力でA船を右舷側に傾斜させる力が働き、A船が右舷側に転覆したことにより発生したものと考えられる。
死傷者数 行方不明:1人(一恵丸甲板員)、負傷:1人(一恵丸船長)
勧告・意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。