
| 報告書番号 | MA2013-4 |
|---|---|
| 発生年月日 | 2011年11月15日 |
| 事故等種類 | 死傷等 |
| 事故等名 | 貨物船CABRERA引船春風乗組員負傷 |
| 発生場所 | 山口県下関市角島北西方沖 角島灯台から真方位312°10.2海里付近 |
| 管轄部署 | 門司事務所 |
| 人の死傷 | 負傷 |
| 船舶種類 | 貨物船:引船・押船 |
| 総トン数 | 10000~30000t未満:100~200t未満 |
| 報告書(PDF) | 公表 |
| 公表年月日 | 2013年04月26日 |
| 概要 | A船は、船長A、航海士A、甲板員A1及び甲板員A2ほか19人が乗り組み、中華人民共和国江蘇省南通港の造船所で建造されて平成23年11月4日にA社に引き渡され、当初、オーストラリアに向かう予定であったが、仕向地が日本に変更となった。 A船は、11日に南通港を出港し、関門海峡を経由する計画で福山港に向かった。 A船は、福山港の入港時刻を調整するため、12日20時ごろから角島北西方沖の公海上において船首をほぼ東方に向けて漂泊を開始した。 A船は、15日01時00分ごろ、北緯34°45.2′東経130°26.9′付近で漂泊中、いか釣り漁を操業中の漁船のパラシュート型シーアンカーの錨索がプロペラ及び舵に絡まって航行不能となった。 A船は、B船でえい航されることとなり、海上保安庁の巡視船に警戒されながら漂泊を続け、A社手配のB船の到着を待っていた。 船長Aは、16時00分ごろB船が到着したので、B船とえい航索の取り方についての打合せを行うためにVHF無線電話(16チャンネル)でB船を喚呼したが、B船からの応答はなかった。 航海士A、甲板員A1及び甲板員A2ほか乗組員6人は、えい航索の係止作業に当たるため、A船の船首楼甲板で待機していた。 船長Aは、航海士Aにえい航索の係止作業に関するB船との打合せを任せることとした。 なお、A船の船首楼甲板に装備するボラードの装備数等は、次表「ボラードの装備と名称」のとおりであり、また、配置は、次図「非常用曳航装置のマニュアル抜粋」のとおりであった。 A船は、被えい航時は船首ボラードを使用することとしていた。 航海士Aは、A船の非常用曳航装置のマニュアルに従い、B船からのえい航索を‘船首部ムアリングホール’(以下「船首ホール」という。)から取って船首ボラードに係止することとし、えい航索を揚げるためのロープ(以下「引上げロープ」という。)をB船に降ろしたのち、引上げロープにB船の2本のヒービングラインをつなぎ、ヒービングラインに2本のペンダントワイヤをつないでA船の船首楼甲板上に揚げ、ペンダントワイヤを船首ボラードに係止することとした。 えい航索の係止作業の全体は、以下の順に各索をつないで行われていた。 A船 → 引上げロープ → ヒービングライン → ペンダントワイヤ → 緩衝用ロープ → えい航用ワイヤ → B船 (次図 えい航索説明図 参照) A船は、16時30分ごろ引上げロープ(1本)の片端をB船の船尾に降ろした。引上げロープにB船の2本のヒービングライン先端のアイ(輪)になったロープ端部がまとめてつながれた。 A船は、引上げロープを船首ホール、船首ボラードの順に経由して右舷係船機のワーピングエンドで巻き上げた。 A船は、2本のペンダントワイヤを左右舷に振り分けて取るようにB船から指示されたので、先に揚がってきた1本目のペンダントワイヤのアイをA船のロープストッパー(以下「ストッパー」という。)を使用して仮止めしたのち、2本目のペンダントワイヤを揚げて船首部にある金具にシャックルを使用して仮止めし、引上げロープをほどいて2本のヒービングラインを右舷に係止するものと左舷に係止するものとに左右に振り分けた。 A船は、1本目のペンダントワイヤのアイを右舷ボラードに係止するため、同ワイヤにつながるヒービングラインを右舷係船機のワーピングエンドで巻こうとしたが、仮止めしていたストッパーがペンダントワイヤから外れなくなったので、同ストッパーをノコギリで切り離して巻き始めた。 A船は、次に、2本目のペンダントワイヤのヒービングラインにつないだ引上げロープを左舷係船機のワーピングエンドで巻き始めた。 A船は、右舷係船機のワーピングエンドに巻いていたペンダントワイヤのアイがボラードに掛かる位置になったが、アイの直径がボラードの直径よりも小さかったので、ペンダントワイヤをボラードに回し、同ワイヤのアイにシャックルを取り付けることにした。 (次図 えい航索配置図、ペンダントワイヤ係止予想図 参照) 右舷係船機のワーピングエンドで巻いていたヒービングライン、ペンダントワイヤは、船首楼甲板の右舷前部にあるハッチの角に接触する状況であった。 甲板員A1は、先に切断したストッパーに代わる予備のストッパーを用意して右舷ボラードの右方に、また、甲板員A2がその船首方約1mにそれぞれ立ち、ペンダントワイヤを右舷ボラードに仮止めするため、同ボラードにストッパーを取り付けていたところ、17時00分ごろ、ヒービングラインが破断し、ペンダントワイヤが甲板員A1及び甲板員A2の下腿部に当たリ、両人が悲鳴を上げてその場に倒れた。 (次写真 「ストッパー」、次図 「ストッパーの使用例」、「事故発生当時の甲板員A1及び甲板員A2の位置」 参照) A船の船首楼甲板でえい航索の係止作業に当たっていた乗組員は、悲鳴を聞いて甲板員A1及び甲板員A2のもとに駆けつけ、航海士Aは船長Aに事故の報告をし、船長Aが海上保安庁に対して救助を要請した。 左舷ドラムで巻いていた引上げロープ及びヒービングラインは、操作する乗組員が左舷係船機を離れたので、ペンダントワイヤのアイが金具に仮止めされたまま巻き続けられてヒービングラインが破断するなどし、海面に落下した。 B船は、船長Bほか4人が乗り組み、15時55分ごろA船の漂泊場所に到着した。 船長Bは、船長AからVHF無線電話(16チャンネル)で喚呼されたが、言葉を理解できず、B船の船首を南東方向に向けて波による動揺を最小限に保ちながら、A船の船首付近にとどまるように操船していた。 B船のえい航索は、B船のドラムに巻いているえい航用ワイヤにシャックルで緩衝用ロープをつなぎ、さらに、緩衝用ロープにシャックルで2本のペンダントワイヤをつないで構成されていた。 (前示 「えい航索説明図」 参照) B船は、通常、ペンダントワイヤを被えい航船に渡すためのヒービングライン1本をペンダントワイヤ1本につなぎ、被えい航船の振れ回りを少なくするため、2本のペンダントワイヤを左舷用と右舷用に分け、被えい航船船首部の左舷及び右舷のフェアリーダーをそれぞれ経由して左舷及び右舷のボラードに係止するよう要請していた。 航海士Bは、A船が船首ホールからヒービングライン2本を揚げていたので、ヒービングライン2本を左舷用と右舷用に分け、船首部の左舷及び右舷のフェアリーダーをそれぞれ経由して揚げ、ペンダントワイヤ2本を左舷用と右舷用に分け、A船の左舷ボラード及び右舷ボラードにそれぞれ係止するように身振りで伝えようとしたが、A船の乗組員に理解してもらえなかった。 B船の作業員は、緩衝用ロープを海上に浮かべ、2本のペンダントワイヤを船尾甲板上にコイルし、船尾甲板から船首方の離れた位置に退避してヒービングラインがA船の船首楼甲板に揚げられるのを監視した。 A船は、2本のヒービングラインの長さが異なっていたので、ヒービングラインにつながっていたペンダントワイヤのアイが時間を置いてA船の船首ホールから揚げられた。 B船の作業員は、17時00分ごろ片方のペンダントワイヤが海面に落下し、船首部から下方をのぞいていたA船の乗組員が見えなくなったので、異状の発生を想像していたところ、17時10分ごろA船の船首ホールから下がっていた他のペンダントワイヤも落下してきた。 B船は、付近で警戒に当たっていた巡視船から、A船の乗組員が負傷したことを知らされ、落下してきた2本のペンダントワイヤをクレーンで揚収した。揚収したペンダントワイヤのうち1本には、アイにA船のストッパーの切れ端が付いていた。 B船は、負傷した甲板員A1がヘリコプターで吊り上げられて病院に搬送されたのち、A船の船首部に船首から接近して係留索をA船に渡し、後進でA船を下関市西方沖の六連泊地までえい航した。 甲板員A1は左足部を左脛骨骨幹部開放骨折などの重傷を、甲板員A2は左足部の打撲をそれぞれ負った。 A船は、翌16日、六連泊地で絡索したパラシュート型シーアンカーの錨索を取り除いた。 |
| 原因 | 本事故は、A船が、角島北西方沖で漂泊してB船との間でえい航索の係止作業中、B船からのヒービングラインを右舷係船機のワーピングエンドで巻き、巻き揚げたペンダントワイヤを右舷ボラードに仮止めしようとし、同ボラードにストッパーを取り付けていた際、ヒービングラインが破断したため、作業に従事していた甲板員A1及び甲板員A2の下腿部にペンダントワイヤが当たったことにより発生したものと考えられる。 |
| 死傷者数 | 負傷:2人 |
| 勧告・意見 | |
| 情報提供 | |
| 動画(MP4) | |
| 備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。