JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2012-5
発生年月日 2012年01月02日
事故等種類 乗揚
事故等名 瀬渡船蛭子丸乗揚
発生場所 大分県佐伯市芹埼鼻東方沖  佐伯市所在の入津港浜村防波堤灯台から真方位110°6,000m付近
管轄部署 門司事務所
人の死傷 負傷
船舶種類 瀬渡船
総トン数 5t未満
報告書(PDF) 公表
公表年月日 2012年05月25日
概要  A船は、船長Aが1人で乗り組み、釣り客12人を乗せ、平成24年1月2日06時00分ごろ佐伯市入津漁港西野浦地区の船だまりを出港し、芹埼鼻南方沖の磯に向かった。
 船長Aは、通常、05時00分ごろ出港していたが、正月であったことから06時00分ごろに出港し、入津漁港内を約6ノット(kn)の速力(対地速力、以下同じ。)で航行した。
 船長Aは、A船にレーダー、GPS及び魚群探知機などの航海計器がなかったので、操舵室の左舷前方に設置しているサーチライト(以下「ライト」という。)を使用して防波堤、養殖筏、陸岸、岩などを照射したり、定置網に取り付けられた標識灯などにより船位を確認したりしながら手動操舵で航行した。
 船長Aは、佐伯市洲埼付近で約15knに増速し、同市龍宮鼻と防波堤との間を通過したのち、龍宮鼻の北方に設置された定置網の北側を東進し、芹埼鼻北方の定置網の東端に設置された標識灯を右舷に見て通過した。
 船長Aは、いつもは芹埼鼻北方の定置網の東端に設置された標識灯を確認したのち、芹埼鼻東方沖にある2個の岩(通称「双子岩」)などをライトで照射しながら確認するために約6knに減速していたが、出港時刻を1時間ほど遅らせたため、少しだけ減速して約13~14knで芹埼鼻東方沖に向けて南東進した。
 船長Aは、ライトを点灯し、船位を確認するための最初の目標としていた北側の岩をライトで照射して船位を確認したのち、次の目標の岩(以下「本件岩」という。)があると思われる方向にライトを照射したが、いつもの速力に減速していなかったので本件岩にライトを照射する前、06時20分ごろ入津港浜村防波堤灯台から真方位110°6,000m付近の本件岩に乗り揚げた。
 A船は、しばらく本件岩に乗り揚げた状態となっていたが、ゆっくりと左舷側に傾斜を始め、船底を上にした状態で転覆し、船長が、船室にいた釣り客5人と操舵室の後方などにいた釣り客7人に早く室外に出るように指示した。
 船長A及び釣り客11人は、A船の船底及び本件岩に上がったが、釣り客1人(以下「釣り客A1」という。)が、転覆したA船の船尾甲板にあるいけすの中に閉じ込められ、船底に上がった釣り客の1人が06時25分ごろ海上保安庁に118番通報し、船長Aが乗揚場所を説明した。
 船長Aは、船底に上がったが、海に投げ出されたときに携帯電話が使用できなくなったので、ビニール袋に入れていた他の釣り客の携帯電話を借りて家族に連絡し、僚船及び消防への通報を依頼した。
 本件岩に上がった釣り客の1人(以下「釣り客A2」という。)は、他の釣り客が本件岩に上がるのを手助けしていたときに海中に転落し、波にさらわれて行方不明となった。
 事故の知らせを受けた僚船2隻(以下「B船」及び「C船」という。)は、本事故発生場所に向かい、B船が、06時35分ごろA船の船底及び本件岩に上がっていた釣り客10人を救助し、入津漁港に搬送した。
 船長Aは、転覆したA船の船底部に残っていけすの中に閉じ込められた釣り客A1の救助に当たり、船尾部のいけすの中から釣り客A1の声が聞こえたので、C船から受け取った錘付きのロープをA船の左舷船尾部から海中に垂らし、釣り客A1と話をして状況を確認しながらいけすの中から脱出させようとした。
 釣り客A1は、救命胴衣の浮力によって潜ることができなかったので、救命胴衣、磯靴及び上衣を脱いでいけす内から脱出し、船長Aが垂らしていたロープを手繰って海面に浮上することができ、07時ごろC船に揚収されて入津浦港に搬送された。
 船長Aは、救助に駆けつけた他の僚船(以下「D船」という。)に移乗して行方不明の釣り客A2の捜索に当たった。
 釣り客A2は、釣り客10人の搬送を終えて引き返してきたB船によって発見、救助され、入津漁港に搬送された。
 船長Aは、D船で入津漁港に帰港した。
 A船は、転覆したのちに沈没し、後日、船体の一部が引き揚げられた。
(付図1 推定航行経路図 参照)
原因  本事故は、夜間、A船が、芹埼鼻東方沖を南東進中、船長Aが、ライトを照射しながら船位測定の目標としていた本件岩を探す際、いつもの約6knの速力に減じず、約13~14knの速力で航行しながら本件岩を探したため、本件岩をライトで照射する前に本件岩に乗り揚げたことにより発生したものと考えられる。
死傷者数 負傷:2人(釣り客)
勧告・意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。