報告書番号 | MA2012-4 |
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発生年月日 | 2009年06月13日 |
事故等種類 | 死傷等 |
事故等名 | 貨物船SINGAPORE GRACE作業員死亡 |
発生場所 | 大分県大分市佐賀関港 日鉱製錬株式会社佐賀関製錬所構内原料受入岸壁(広浦A岸壁) |
管轄部署 | 事務局 |
人の死傷 | 死亡 |
船舶種類 | 貨物船 |
総トン数 | 10000~30000t未満 |
報告書(PDF) | 公表/説明資料 |
公表年月日 | 2012年04月27日 |
概要 | 貨物船SINGAPORE GRACEは、硫化銅精鉱の揚荷役のために佐賀関港の岸壁に係船中、平成21年6月13日08時30分ごろ、作業員の1人が荷役作業に当たるため、3番貨物倉内の梯子を降りている途中で倒れ、救助に向かった他の作業員3人のうち、2人も貨物倉内で倒れた。 倒れた3人の作業員は、3番貨物倉から救助されたが、その後、いずれも死亡が確認された。 |
原因 | 一次事故は、本船が、佐賀関港の専用岸壁に係船中、3番貨物倉に積載されていた銅精鉱の揚荷役を行う際、揚荷役に従事する運転手Bが、雰囲気が酸素欠乏状態になっている3番貨物倉に入ったため、酸素欠乏状態の空気を吸入して酸素欠乏症を発症したことにより発生したものと考えられる。 運転手Bが、雰囲気が酸素欠乏状態になっている3番貨物倉に入ったのは、3番貨物倉の昇降口に進入許可表示板が掲示されていたこと、及び1番貨物倉に他の作業員が入って重機車両の運転を始めていたことによるものと考えられる。 3番貨物倉の雰囲気が酸素欠乏状態になっていたのは、3番貨物倉に積載されていた銅精鉱が、ポートモレスビー港から佐賀関港まで輸送される間に酸化し、密閉されていた3番貨物倉内の空気中の酸素を消費したことによるものと考えられる。 3番貨物倉の昇降口に進入許可表示板が掲示されていたのは、フォアマンが、4年前の貨物倉での酸素欠乏による死亡事故後に定められた対策に基づく措置を講じたことによるものと考えられるが、この際、フォアマンは、3番貨物倉の雰囲気が酸素欠乏状態になっていることを認識していなかった可能性があると考えられる。 フォアマンが、3番貨物倉の雰囲気が酸素欠乏状態になっていることを認識していなかったのは、フォアマンを含む荷役監督が酸素濃度計測を定められた方法によらずに行っていた慣行が関与したことによる可能性があると考えられる。 本件製錬所及び本件荷役会社が、フォアマンを含む荷役監督が酸素濃度計測を定められた方法によらずに行っていた慣行を把握せず、定められた方法で酸素濃度計測を行うよう指導していなかったことは、一次事故等の発生に関与した可能性があると考えられる。 二次事故は、運転手Bが倒れた旨の報告を受けたフォアマンが、3番貨物倉の雰囲気が酸素欠乏状態になっていることに気付かなかったため、運転手Bを救助しようとして操作員C及び操作員Fと共に3番貨物倉に入り、フォアマンが酸素欠乏状態の空気を吸入して酸素欠乏症を発症したことにより発生したものと考えられる。 フォアマンが、3番貨物倉の雰囲気が酸素欠乏状態になっていることに気付かなかったのは、運転手Bを救助することの責任感と焦燥感に駆られて冷静さを欠いたことによる可能性があると考えられ、また、ハッチカバーが開放されて時間がたてば、自然換気のみで貨物倉の酸素欠乏状態が解消されると認識していた作業員がいたこと、及び4年前の貨物倉での酸素欠乏による死亡事故以降、本事故発生までの間に酸素欠乏の雰囲気を計測したことはなく、酸素欠乏症による人身事故もなかったことが関与したことによる可能性があると考えられる。 三次事故は、操作員Cが、フォアマン及び運転手Bを救助しようとし、防毒マスクを装着して操作員Fと共に、再び、3番貨物倉に入ったため、酸素欠乏状態の空気を吸入して酸素欠乏症を発症したことにより発生したものと考えられる。 操作員Cが、防毒マスクを装着して3番貨物倉に入ったのは、装着した防毒マスクで酸素欠乏状態に対応できると思ったこと、引き続き責任感と焦燥感に駆られて冷静さを欠いていたこと、及び一次事故発生後に救助に赴いた際に酸素欠乏症を発症して適切な判断ができなかったことによる可能性があると考えられる。 本件荷役会社が、作業員に対して銅精鉱が積載されている貨物倉内で人身事故が発生した場合の対処法を適切に指導及び訓練していなかったことは、二次事故及び三次事故の発生に関与した可能性があると考えられる。 |
死傷者数 | 死亡:3人(運転手、フォアマン及び操作員) |
勧告・意見 | 勧告・意見・安全勧告 |
情報提供 | |
動画(MP4) | |
備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。