報告書番号 | MA2014-6 |
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発生年月日 | 2012年07月02日 |
事故等種類 | 死傷等 |
事故等名 | ケミカルタンカーCHEM HANA乗組員死亡 |
発生場所 | 山口県平郡水道 山口県周防大島町所在の下荷内島灯台から真方位119°2.3海里付近 |
管轄部署 | 事務局 |
人の死傷 | 死亡 |
船舶種類 | タンカー |
総トン数 | 500~1600t未満 |
報告書(PDF) | 公表 |
公表年月日 | 2014年06月27日 |
概要 | CHEM HANA(以下「本船」という。)は、船長、一等航海士及び甲板手Aほか7人(大韓民国籍4人、インドネシア共和国籍1人、ミャンマー連邦共和国籍2人)が乗り組み、関門港でアセトン約960tの荷揚げを終え、平成24年7月2日05時45分ごろ出港し、メチルエチルケトンを積載するため、千葉県千葉港へ向かった。 二等航海士は、12時00分ごろ昇橋し、当直の甲板手Aから一等航海士の下で作業を行うことを聞いていたので、単独で船橋当直に就いた。 船長は、13時40分ごろ、A社の担当者の電話により、千葉港での荷役にトラブルが生じたので、松山港でパラザイレン1,000tを積載するようにとの指示を受けた。 船長は、荷役事務室に一等航海士を呼び、目的地及び積荷に変更があったことを知らせ、荷役計画書を作成し直すように指示した。 その後、船長は、松山港に直航すれば、タンククリーニングを行う時間がないので、松山入港前に豊後水道まで南下してタンククリーニングを行うこととし、昇橋して海図に豊後水道へのコースラインの記入を行い、当直中の二等航海士に目的地及び積荷に変更が生じたことを告げて豊後水道へ向かうように指示した後、自室に戻り、松山入港時に必要な書類の作成を始めた。 一等航海士は、14時00分ごろ、甲板長、甲板手A及び甲板手Bを伴い、カーゴタンクのサクションウェル及びポンプ室のストレーナに残っているアセトンを取り除く作業(以下「本件タンク清掃作業」という。)に取り掛かった。 一等航海士は、甲板手A及び甲板手Bに対し、1番カーゴタンクから順にサクションウェルに溜(た)まっているアセトンを浚(さら)うように指示した際、甲板長は、ガスフリーファンが回っていないので、危ないと進言したが、一等航海士から大丈夫と言われた。 また、甲板長及び甲板手Bは、一等航海士が、目的地が松山港に変更になったので、時間がないと言っていることを聞いた。 甲板手A及び甲板手Bは、いずれも作業服及びゴム手袋を着用し、安全靴を履き、吸着缶式呼吸具の装着を行い、ポリバケツ及びひしゃくを持ち、甲板手Aが1番カーゴタンク(左)に、甲板手Bが1番カーゴタンク(右)にほぼ同時に入っていった。 甲板手Bは、すぐにカーゴタンクから上甲板に上がり、一等航海士に匂いが強いことを訴えた。 一等航海士は、14時20分ごろ、1番カーゴタンク(左)のマンホールからタンク内をのぞき、倒れている甲板手Aを認め、吸着缶式呼吸具を装着して1番カーゴタンク(左)に入ったものの、1分~2分して倒れた。 その様子を見ていた甲板長及び甲板手Bは、船尾甲板の倉庫から自給式呼吸具を持ち出して装着し、1番カーゴタンク(左)に入り、一等航海士及び甲板手Aを上甲板上に運び上げた。 その頃、船長は、作成した書類をファクシミリで送るために昇橋したところ、上甲板の様子が騒がしいので、二等航海士に確かめさせ、カーゴタンク内で本件タンク清掃作業が行われ、本事故が発生したことを知った。 第六管区海上保安本部は、15時06分に本船からの事故発生の通報及び救助要請を受けて巡視艇を出動させ、16時10分一等航海士及び甲板員Aを巡視艇に収容し、周防大島町安(あ)下庄(げのしょう)港に搬送した。 その後、一等航海士は救急車で、甲板手Aはドクターヘリ(医師が搭乗している救急医療用のヘリコプター)でそれぞれ病院に搬送されたが、いずれも死亡が確認された。 一等航海士及び甲板手Aの死因は、司法解剖の結果、直接死因は酸素欠乏による窒息の疑いであり、アセトン中毒の疑いがこれに関与したと検案された。 |
原因 | 本事故は、本船が、平郡水道を航行中、アセトンの荷揚げ後に別の貨物を積む目的で本件タンク清掃作業を行う際、カーゴタンクに立ち入る前に酸素濃度の測定が行われず、また、一等航海士及び甲板手Aが、使用が認められていない吸着缶式呼吸具を装着してカーゴタンクに入ったため、酸素欠乏状態になっていた空気を吸入したことにより発生した可能性があると考えられる。 |
死傷者数 | 死亡:2人(一等航海士及び甲板手) |
勧告・意見 | |
情報提供 | |
動画(MP4) | |
備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。