報告書番号 | MA2019-4 |
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発生年月日 | 2018年09月04日 |
事故等種類 | 衝突(単) |
事故等名 | 油タンカー宝運丸衝突(橋梁) |
発生場所 | 大阪府泉州港内関西国際空港連絡橋 大阪府関西国際空港沖E灯標から真方位241°550m付近 |
管轄部署 | 事務局 |
人の死傷 | |
船舶種類 | タンカー |
総トン数 | 1600~3000t未満 |
報告書(PDF) | 公表/説明資料 |
公表年月日 | 2019年04月25日 |
概要 | 油タンカー宝運丸は、台風第21号が接近し、大阪湾を含む瀬戸内海に海上台風警報が発表されている状況下、船長ほか10人が乗り組み、泉州港の南東方沖に錨泊中、台風の接近に伴い増勢した風を受けて走錨し、北方に圧流され、平成30年9月4日13時40分ごろ関西国際空港連絡橋に衝突した。 宝運丸は、右舷船首部の甲板の圧壊等を生じ、また、関西国際空港連絡橋は、道路桁の橋梁部に曲損、破口、擦過傷等を、鉄道桁に架線柱の倒壊、レールのゆがみ等を、ガス管の破口等をそれぞれ生じたものの、乗組員に死傷者はいなかった。 |
原因 | 本事故は、宝運丸が、台風第21号が接近し、大阪湾を含む瀬戸内海に海上台風警報が発表されていた状況下、台風避難の目的で‘関西国際空港1期空港島’(関空島)南東方沖の北方約1海里に関西国際空港連絡橋がある‘大阪府泉州港南西側にあるオイルタンカーバースの東方’(本件錨地)に単錨泊を続け、また、台風接近に伴う強い風及び波浪により走錨し、一旦、主機を使用して圧流が止まったとしてジョイスティックをホバーの位置にし続けたため、宝運丸を制御する距離的な余裕がない状況で再び圧流され、関西国際空港連絡橋に衝突したものと考えられる。 宝運丸が関空島南東方沖の北方約1海里に関西国際空港連絡橋がある本件錨地に錨泊したのは、船長が、台風第21号が本件錨地の東側を通過し、進行軸の左半円に入ると思っていたこと、台風の進行速度が速く、長時間にわたって強い風が吹くことはないと思っていたこと、周囲を陸岸に囲まれており、底質が泥で錨かき良く、台風避難時に他の船舶も錨泊していたこと、次の積み荷役が阪神港堺泉北区で行われる予定であったこと、及び平成23年版リーフレット「走錨海難を防止しよう」を知らず、関空島から3海里以内の海域を避けて錨泊することを認識していなかったことによるものと考えられる。 宝運丸が本件錨地に単錨泊を続けたのは、船長が双錨泊をすると風向が変わった際に錨及び錨鎖が絡み係駐力が減少すると考えていたこと、及びこれまで主機を使用して台風の風に対応できていたという経験があったことによるものと考えられる。 船長がジョイスティックをホバーの位置としたのは、レーダーに表示されたGPSの対地速力が0となった際、走錨が止まったと思ったこと、及びジョイスティックを前進の位置にすると宝運丸が前進すると思ったことによるものと考えられる。 宝運丸が再び圧流されたのは、ジョイスティックをホバーの位置にし続けてプロペラ推力が分散されて前進推力がなくなっていた状況下、高潮による水深の増加に伴い、錨鎖が海底を離れて係駐力が減少し、船体への風圧力及び波漂流力が増大したことによるものと考えられる。 日之出海運株式会社及び鶴見サンマリン株式会社は、船長に荒天錨泊についての確認、台風に関する情報及び錨地に関する情報を提供することなく、安全運航について協議を行っていなかったことは、本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。 |
死傷者数 | なし |
勧告・意見 | 勧告 |
情報提供 | |
動画(MP4) | AISデータによる大阪湾内の船舶の状況(港内を除く。平成30年9月4日11時30分~14時30分)(44秒) コンピュータグラフィックスによる事故状況の再現 |
備考 |
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。
本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。
報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。