JSTB 運輸安全委員会

概要

報告書番号 MA2015-9
発生年月日 2014年11月13日
事故等種類 死傷等
事故等名 漁船第3協栄丸潜水士死亡
発生場所 北海道釧路町尻羽岬北方沖  厚岸灯台から真方位265°3.48海里(M)付近
管轄部署 函館事務所
人の死傷 死亡
船舶種類 漁船
総トン数 5t未満
報告書(PDF) 公表
公表年月日 2015年08月27日
概要  本船は、船長、潜水士及び甲板員1人が乗り組み、僚船と共に北海道釧路町仙鳳趾漁港を出港し、尻羽岬北方沖の厚岸灯台から真方位265°3.48M付近において、ヘルメット式潜水器具によるうに漁を開始した。
 本船は、船長が操舵室内に立ち、海面に上がってくる泡で潜水士の位置を把握しながら、適宜機関を使用して潜水士から離れないよう操船に当たり、甲板員が、前部甲板の左舷側で潜水士と連結した直径約15~20mmの「いき綱」と呼ばれる命綱兼連絡用ロープを持ち、その張り具合に注意するとともに、泡の位置を確認しながら漁獲物の選別作業を行っていた。
 船長は、海面上の泡を左舷前方に見ていたところ、急に便意を催したので、クラッチレバーを中立として操舵室を離れ、左舷後方の出入口の階段を下り、後部甲板にある推進器点検孔のハッチを開放し、左舷側に顔を向けてしゃがんだ姿勢で用便を始めた。
 甲板員は、海面上の泡が徐々に左舷方に離れ、いき綱が張り気味になっていくので、その旨を船長に伝えようとしたところ、船長が後部甲板上でしゃがんでいるのを認め、潜水士に近づくよう進言したところ、船長が立ち上がり、階段を上って操舵室に戻ったので、意思が伝わったものと思い、船首方に向き直っていき綱の様子を見ていた。
 甲板員は、本船が緩やかに前進しながら右回頭を始めたので、不審に思って操舵室の方を振り向いたところ、窓越しに船長の顔色が悪く、目の焦点が定まっていないように見えた直後、船長の上体が前のめりに倒れるとともに、本船が、煙突から黒煙を排出し、急加速しながら右回頭を始めたことを認め、船長の名前を連呼した。
 甲板員は、送気ホースをたぐり寄せると、同ホースの切断部が上がってきたので、驚いて操舵室に移動し、船長に向かって「巻いた、巻いた」と叫んだ。
 船長は、我に返って後部甲板に移動し、推進器点検孔を覗いたところ、推進器に送気ホースが何重にも巻き付いた状態であるのを認め、近くで操業中の僚船に救助を求めた。
 潜水士は、08時40分ごろ、僚船の潜水士により本船付近の海底において発見、救助された後、仙鳳趾漁港で待機していた救急車で病院に搬送されたが、死亡が確認され、後日解剖の結果、溺死と検案された。
原因  本事故は、本船が、尻羽岬北方沖において、潜水器具によるうに漁の操業中、急加速しながら右回頭し、送気ホースを推進器に巻き込んで同ホースを切断したことにより発生したものと考えられる。
死傷者数 死亡:1人(潜水士)
勧告・意見
情報提供
動画(MP4)

備考
  • ※船舶事故報告書及び船舶インシデント報告書の様式にはそれぞれ下記のまえがきと参考が記載されていますが、平成25年7月公表分より利用者の便宜を考慮して省略しております。

《船舶事故報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

《船舶インシデント報告書のまえがき》

本報告書の調査は、本件船舶インシデントに関し、運輸安全委員会設置法に基づき、運輸安全委員会により、船舶事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。

《参考》

報告書の本文中「3 分析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりとする。

  1. 断定できる場合は「認められる」
  2. 断定できないが、ほぼ間違いない場合は「推定される」
  3. 可能性が高い場合は「考えられる」
  4. 可能性がある場合は「可能性が考えられる」又は「可能性があると考えられる」
  • ※報告書に勧告等が含まれる場合は、勧告・意見欄に文言が表示されます。クリックすると「勧告・意見・安全勧告」ページが表示されます。
  • ※関係行政機関への情報提供がある場合は、情報提供欄に文言が表示されます。クリックすると「関係行政機関への情報提供」ページが表示されます。
  • ※動画がある場合は、動画欄にタイトルが表示されます。