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S丸 : まぐろ延縄漁船 373トン 乗組員6人 水揚げを終え回航中 清水港→気仙沼港
  船長:45歳 三級海技士(航海)免許 海上経験27年  甲板長:57歳 海上経験42年
発生日時場所 : 平成17年4月14日16時55分 清水港港外
気象海象 : 晴 無風 上げ潮初期 船体動揺ほとんどなし
死傷者 : 甲板長両かかと骨折により9箇月の入院を要する全治1年

海難の概要(本海難の裁決書
 S丸は,まぐろの釣り上げなどに使用する作業用ワイヤーステイを船首マストから船首楼甲板のブルワークに展張していたが,水揚げの際は陸上クレーンの邪魔になるためブルワーク側の根付け部でターンバックルを取り外し,水揚げを行った。
S丸は,水揚げを終え,回航の目的で出航し,ステイを復旧することにして甲板長,漁ろう長,通信長がその作業にあたり,漁ろう長,通信長が補助索をステイとブルワークの両シャックルに通してステイを引き付け,甲板長がハンドレール頂部に立って頭上のターンバックルにアイボルトをねじ込んだ。
甲板長は,ブルワーク側,ステイ側の両アイボルトが接続されたので,補助索をほどき,さらに増し締めを行おうと左手でブルワーク側のシャックル,右手でターンバックルの胴を握って胴を回したところ,ステイ側のアイボルトがはずれ,バランスを失って約5m下の上甲板に落下した。
船長の安全管理
甲板長がいつも安全ベルトをしていないことを知っていた。
甲板長,漁ろう長の方が年上で,船内の人間関係を壊したくなかったため強く言えなかった。
船長は,安全ベルトの使用を指示せず,甲板長は安全ベルトを使用せず高所作業を開始
甲板長の意識
慣れた作業であった。
転落するとまったく思っていなかった。
この作業には,いつも安全ベルトをしていなかった。
船長は,安全ベルトの使用を指示せず,甲板長は安全ベルトを使用せず高所作業を開始ステイ側のアイボルトが斜めに入ってねじ山がかみ合っていなかった。
甲板長の作業模様
ステイ側のアイボルトをねじ込むとき,いつもより胴を回さないうちに固くなったが,特に気にしなかった。
ステイ側のアイボルトがはずれてバランスを失って約5m下の上甲板にかかとから転落
甲板長の“うっかり”
漁ろう長と通信長が引いていた補助索を,いつもは最後まで解かないが,このときはどういうわけか先に解いてから増し締めを行おうとした。
両かかと骨折
入院9箇月,全治1年の重傷
事故後の措置
ハンドレールに取り外し式の転落防止柵を設置した。

作業手順を明確にして作業者間の意思疎通を!
慣れた作業,いつもの作業。「落ちるわけがない!」と思っていた作業。ところがいつもははずさない補助索を“うっかり”先にはずしてしまうことも。“うっかり”ミスは誰にでもおこります。ところが作業をしている本人は,危険であることに中々気付くことができないもので,周りから知らせてあげることが必要です。経験や勘に頼らず作業の手順を定めて,作業者全員がその手順を把握することで,誰もが危険を察知できるようにしましょう。
高所作業では,“安全ベルト”や“命綱”,“手すり・柵”など,落ちない対策も必要です!

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