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船長が硫化水素ガスを吸い込み意識不明,救出に向かった3人も昏倒
K丸: ケミカルタンカー 342トン 乗組員4人 
水硫化ソーダ:2番タンクに170.916キロリットル
  船長:57歳 水硫化ソーダ荷役経験あり
  一等航海士:30歳 水硫化ソーダ荷役経験なし
  甲板長:39歳 水硫化ソーダ荷役経験なし
発生日時場所 : 平成17年4月8日15時07分 岡山港
死傷者    : 2人死亡(船長及び機関長),2人負傷

海難の概要 (本海難の裁決書)
 K丸は,岡山港で2番タンクの水硫化ソーダの揚荷を行ったが,同ソーダから発生した高濃度の硫化水素ガスが同タンク内に拡散していった。船長は,同タンクの内壁洗浄をするため防毒マスクを装着し,清水ホースを引いて,同タンクのハッチから梯子を途中まで降りたが,同マスクの気密が悪く,同ガスを吸い込んで異常を来し,いったんハッチから頭を出したがそのまま動けなくなった。
 一等航海士,機関長,甲板長が異常に気付き,防毒マスクをしないまま船長を引き揚げようとし,3人ともハッチ上面まで溢れていた硫化水素ガスを吸い込み意識を喪失し,昏倒した。その後,梯子に立っていた船長は,2番タンク底部に落下した。

清水で予備洗浄をし,港外に出てタンク等を海水で溢れさせ,ガスの排出と洗浄を行い,ガス検知と酸素濃度測定によってガスフリーを確認するまでハッチ開放とタンク内立入りが禁止

【500〜700ppmの濃度】
15分以内にめまい,頭痛,吐き気など
【700〜900ppmの濃度】
急激な意識不明と数分後に死亡
【1,000〜2,000ppmの濃度】
即座に倒れ,呼吸停止に至る

非常時措置として,防毒マスク,ガス検知器等を準備


1.危険物取扱作業規則,洗浄手順書等に関する乗組員への安全教育の実施
2.運航管理者訪船による同規則等の実施状況の定期的な確認(形骸化防止)
3.防毒マスクなどの性能確認,危険物に応じた適正な保護具の船内装備
4.ガス検知及び酸素濃度測定の実施,ガスフリーを確認するまでは,タンクハッチの開放及びタンク内立入り禁止の確実な実施(乗組員への周知徹底)
5.見張要員を配置し,作業者以外の乗組員の点検の実施
慣れも禁物,再点検を実施しましょう!
事故発生に至る要因(危険因子)
K社運航管理者は,安全管理担当者を訪船させ,船長,乗組員に硫化水素ガスの性状,洗浄手順書を提示したが,同ガスの毒性や防毒マスクの使用可能な濃度範囲について十分説明しなかった。
マンニング会社は乗組員に対し,洗浄手順書等に関する乗組員の安全教育を十分に行っていなかったため,乗組員が,「ガス検知及び酸素濃度測定,ガスフリー確認後のハッチ開放及びタンク内立入り」を知らなかった。
事故発生時(海難発生原因)
船長は,ガスフリーを確認せず,タンク内に入り内壁洗浄を開始した。(2番タンク内の硫化水素ガス濃度は3,000ppm以上であった。)
K丸に装備された防毒マスク(船長装着)の吸収缶の1日の使用可能な濃度範囲は,150ppmで30分未満とされ,1,000ppm以上では使用してはならないものであった。
二次災害発生の要因
乗組員は,硫化水素ガスに対する危険認識が薄く,ひと呼吸で意識をなくすほどとは知らず,防毒マスクを装着しないですぐ救出にあたった。
防毒マスクが身近に用意されていなかった。

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