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我が国初の海上衝突予防法は,明治25年に制定されましたが,当時はまだ来島海峡における特別な交通ルールはありませんでした。しかし,次第に中水道と西水道における「順中逆西」の航法が普及し始め,明治30年代後半から同航法の検討が行われていましたが,明文化には至りませんでした。
その後,大正時代に入って同航法は航海者の間に普及し,大正12年に西水道で発生した衝突事件について,同年,高等海員審判所(第二審)は,初めて「順中逆西」の航法を採り入れた裁決を言い渡しました。
こうして,同航法は,広く定着し,昭和4年に「内海水道航行規則」が制定され,この中で同航法が法制化されました。 |
汽船第二富美丸 同南都丸接触の件
(高等海員審判所 大正12年6月19日裁決) |
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大正12年1月,南流末期の来島海峡西水道において,南下中の第二富美丸(959トン)と北上中の南都丸(687トン)が衝突した件について,裁決では,第二富美丸が航海者一般の常用航法に反し順潮に乗じて来島海峡西水道を通航したとして,第二富美丸船長に運航上の過失があったとされました。 |
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昭和28年,海上衝突予防法の制定に伴い,新たに「特定水域航行令」が制定され,この中に「順中逆西」の航法が受け継がれ,さらに,昭和48年には「海上交通安全法」が施行され,来島海峡航路が設定されて現在に至っています。 |
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内海水道航行規則 (逓信省令第三号 昭和四年二月公布)
第六条 汽船は来島海峡に於ては左の航行に依るべし
一 中水道は順潮の場合に限り又西水道は逆潮の場合に限り通航すること但し小島波止浜間の水道を通航する汽船は順潮の場合といえど西水道を通航することを妨げず
二 前号の規定に依り中水道を通航する汽船は龍神島、津島及アゴノ鼻に近寄り又西水道を通航する汽船は之に遠ざかりて航行すること即ち行逢汽船に在りては南流に於て互に右舷を北流に於て互に左舷を相対して航過するものとす
三 第一号但書の規定に該当する汽船は海峡の西側に近寄りて航行すること |
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特定水域航行令 (政令第三九二号 昭和二十八年十二月公布)
第七条 動力船は、来島海峡を東行し、又は西行する・・・・・・(以下省略)
一 順潮の場合にあつては中水道を航行し、逆潮の場合にあつては西水道を航行すること。但し、これらの水道を航行している間に転流があつた場合において、これらの航法によることができないときは、そのまま当該水道を航行することができるものとし、また、小島と波止浜との間の水道を航行する船舶は、順潮の場合であつても、西水道を航行することができるものとする。
二 中水道を航行する場合にあつては、龍神島、津島及びアゴノ鼻にできる限り近寄つて航行すること。
三 西水道を航行する場合にあつては、龍神島、津島及びアゴノ鼻からできる限り遠ざかつて航行すること。この場合において、小島と波止浜との間の水道を航行する船舶は、その他の船舶の西側を航行しなければならない。 |
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海上交通安全法 (法律第百十五号 昭和四十八年七月施行)
第二十条 船舶は、来島海峡航路をこれに沿つて航行・・・・・・(以下省略)
一 順潮の場合は来島海峡中水道(以下「中水道」という。)を、逆潮の場合は来島海峡西水道(以下「西水道」という。)を航行すること。ただし、これらの水道を航行している間に転流があつた場合は、引き続き当該水道を航行することができることとし、また、西水道を航行して小島と波止浜との間の水道へ出ようとする船舶又は同水道から来島海峡航路に入つて西水道を航行しようとする船舶は、順潮の場合であつても、西水道を航行することができることとする。
二 中水道を経由して航行する場合は、できる限り大島及び大下島側に近寄つて航行すること。
三 西水道を経由して航行する場合は、できる限り四国側に近寄つて航行すること。この場合において、・・・・・・(以下省略) |
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