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我が国には,「海峡」,「瀬戸」,「水道」と呼ばれる大小様々な狭水道が存在しています。特に,瀬戸内海には,大小724もの島々(周囲100m以上)が点在し,名もない岩までも含めると3,000余にも達すると言われ,この間を縫うようにして走る狭水道は,可航幅が狭い上に屈曲して見通しが悪く,しかも潮流が速いなど,通航船舶にとって厳しい条件が重なっています。そのため,海上交通の要衝として船舶が輻輳する来島海峡や関門海峡などは,昔から航海の難所として知られ,海難の多発地帯となってきました。
そこで,今回は,狭水道の海難にスポットを当て,そのシリーズの第一弾として「来島海峡」を取り上げました。
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◆来島海峡
来島海峡では,海上交通安全法により来島海峡航路が設定され,航法が定められています。特に,中水道と西水道では,潮流の流向によって1日にほぼ4回,通航方向が変わるという世界的にも類を見ない「順中逆西」の航法が採られています。
そのような複雑な航法が採られている中水道と西水道では,一体どのようなパターンの海難が発生しているのでしょうか。両水道付近で発生した衝突と乗揚について見てみることにしましょう。
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平成8年〜18年8月までの10年8か月間に海難審判で裁決のあった中水道及び西水道付近(P2地点図参照)での衝突・乗揚は,23件(41隻)となっており,平成8〜12年までの5年間が17件(31隻)であったのに対し,最近の5年8か月間では6件(10隻)と約1/3に減少し,特に,衝突が14件から4件に大幅に減少したのが目立っています。
これは,来島海峡大橋(H11.5完成)が確実な船首目標となって針路や船位の確認が容易になったこと,来島海峡海上交通センター(H10.1運用開始)からの情報提供や航路しょう戒船による現場指導が行われ,航法違反や転流直後の水道内での行き会いが減少したことなどが挙げられます。 |
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