第2章 海難審判庁のしごと 4/7
第4節 審判開始の申立
【理事官の海難調査業務】
 理事官は、海難の発生を認知したときは、直ちに事実を調査し、証拠の集取を行います。
 海難は人の行為、船舶の構造・設備・性能・運航形態、海上交通環境、自然現象等の諸要素が複合して発生する場合が多いことから、理事官は様々な観点から広範囲にわたり、その事実関係を調査しなければなりません。
 このため、理事官は、次の方法により事実の調査、証拠の集取を行っています。
○ 海難関係人に出頭させ、又は質問すること。
○ 船舶その他の場所を検査すること。
○ 海難関係人に報告をさせ、又は帳簿書類その他の物件の提出を命ずること。
○ 官庁等に対して報告又は資料の提出を求めること。
○ 鑑定人、通訳人若しくは翻訳人に出頭をさせ、又は鑑定、通訳若しくは翻訳をさせること。

【審判開始の申立】
 理事官は、調査の結果、海難の再発防止のために審判による原因究明が必要と認めたときは、地方海難審判庁にその海難の審判開始の申立を行います。
 このとき、海難の原因に関係ある者が海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人である場合にはそれらの者を受審人に、またそれら以外の者(海運・造船会社など)は指定海難関係人に指定します。
 他方で、海難の利害関係者が理事官に対して審判開始の申立を請求することも認められています。
 また、海難事実の発生から5年を経過したときは、審判開始の申立を行うことができません。
 平成14年に理事官が審判開始の申立をした海難の件数は747件(1,140隻)でした。事件の種類では、衝突事件が332件(44%)と最も多く、次いで、乗揚事件160件(21%)、機関損傷事件85件(11%)などとなっています。
 また、船種別では、漁船が437隻38%を占め、次いで、プレジャーボート210隻18%、貨物船209隻18%となっています。(資料編第21表参照)

航海データ記録装置(Voyage Data Recorder)
 航海データ記録装置(VDR)は、一般に船のブラックボックスとも呼ばれる機器で、航海中の日付、時刻、船位、針路、速力、船橋内やVHF通信の音声、レーダー画像などの情報を記録し、衝突・沈没などの海難発生時に本船からデータを回収します。
 海難原因の究明に活用する目的で、SOLAS(海上人命安全条約)により、2002年7月1日以降建造されるすべての国際航海に従事する総トン数150トン以上の客船及び3,000トン以上の貨物船に搭載が義務付けられています。

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       表紙     海難レポート2003概要版
メッセージ-CONTENTS-外国船の海難-最近の海難審判庁の動き-海難審判庁のしごと-裁決における海難原因-海難分析-資料編
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