背 景 1980年代半ば以降、我が国の外航海運は、プラザ合意から始まる円高の動き、国際分業の進展によるアジア諸国の経済成長等に伴い、コスト削減を主とした輸送構造を変化せざるを得ない状況となり、日本籍船が減少しました。我が国外航商船隊の船腹量は約2,000隻で推移し、大きな変化はありませんが、日本籍船の減少に相まって仕組船、単純外国用船の増加が顕著となっています。 一方、経済活動の発展に伴い我が国の貿易量は増加しており、その多くを海上輸送が担い、新規に参入する外国船、特に発展のめざましいアジア諸国の海運企業による外国船が増加しています。 これらの外国船による、世界各国と我が国の主要貿易港との間の航行が盛んになっており、様々な国籍の船舶及び船員によって運航されています。 |
外国船の海難の動向 我が国の沿岸海域は、世界でも屈指の海上交通の難所が数多く存在し、地理や気象・海象、船舶交通の状況や漁船操業状況等の海上交通環境に不案内な外国船が衝突、乗揚等を起こしています。 海難全体では毎年減少傾向にある中、外国船の海難だけは、年間200件弱で増加の傾向となっています。 海難の直接的な原因は、「見張り不十分」や「航法不遵守」等が多くあげられますが、海難を誘発した要因の一つとして、文化、言語、習慣等の異なる乗組員によるコミュニケーションが問題(意思疎通の欠如)となった例もあります。 |
周辺海域に与える影響 我が国に来航する外国船は、比較的大型の船舶であることも多く、海難に伴う船体や積荷の損害が大きく、事件によっては流出油により沿岸漁場の汚染や自然環境の被害につながる恐れもあります。 また、我が国の海岸には、乗揚、沈没等で航行不能となり、そのまま放置されている外国船が平成15年3月末現在12隻(海上保安庁調)あり、漁場の占拠等が生じています。 更に衝突の場合、相手船のほとんどを占める日本籍船では小型船舶が多いため、生命の危険や甚大な損傷を招くことも少なくありません。 |
今後の取り組み 海難の減少は世界的な悲願です。 そのため、国際海事機関(IMO)では、「海難及び海上インシデントの調査のためのコード(1997 IMO決議A.849)」を採択し、我が国を含め国際的な海難調査の実施・協力体制の構築に取り組んでいます。 海難審判庁においても、外国船海難の調査を積極的、かつ迅速に行い、海難原因を探究し、我が国沿岸海域における海難の再発防止に努めます。 |
平成14年に発生した主な外国船の海難 平成14年に発生した海難で、理事官が認知した6,137件のうち、外国船が関連したものが179件発生しています。特に、平成14年に発生した重大海難事件及び主要な海難事件(資料編第27表参照)をみると、17件の海難のうち、10件が外国船が関連した海難となっています。 |
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