−特集「冬の終わり・春の訪れ」発達中の低気圧に注意−
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発生日時、場所 : 11年3月7日07時15分 沖縄県那覇港 | |||
気象、潮汐 : 曇、南南西風、風力6、波高約2.5メートル 強風波浪注意報 | |||
海難の概要 | |||
T号(9.5メートル)は、専ら港内において釣り客を送迎する瀬渡船で、7日06時55分、船長ほか釣り客2人を乗せ、那覇港内の沖合防波堤に渡す目的で、那覇港内のマリーナ船溜まりを発した。 発航時、風は強く、急速に強まった南寄りの風波を受け、船体の動揺が激しくなったものの、このくらいなら大丈夫と思い目的の防波堤に向かったが、同防波堤に接近したとき波浪が打ち上がっているのを認め、07時04分防波堤渡しを断念して引き返すこととなった。 T号は、機関を3.5ノットの微速力前進とし、左回頭を始めたところ左舷船尾から高起した波浪が打ち込み甲板上に滞留するようになった。船長は、陸上と電話で連絡し救助を待ったが、07時15分ひときわ高起した波浪が打ち込み水船状態となり、危険を感じた船長と釣り客2人が海中に飛び込んだ直後、T号は復原力を喪失して転覆した。 海中に飛び込んだ3人は、僚船によって救助された。 なお、強風波浪注意報が発表されたのは発航5分後であった。 |
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海難原因 | |||
本件転覆は、釣り客の防波堤渡しの業務に従事中、強まった風波により船体動揺が激しくなった際、高起した波浪の危険性に対する認識不足で、直ちに発航地に引き返さず防波堤付近に接近したことによって発生したものである。 | |||
本件から得た教訓 | |||
船長は、発航直後に強風波浪注意報が発表されたことを知らなかったものの、過去の長い経験から、当時、那覇の西方100qのところに位置していた「東シナ海低気圧」は、沖縄県地方で「ニガチカジマーイ」(2月風廻り)として知られている強風を吹かせることを知っており、かつ発達しながら急接近する可能性が高いことも予想でき、また、目的の防波堤付近には高い波が出現することも知っていたのであるから、静穏な内防波堤内の水域を出たところで、沖側においては波浪が高いことを認めた際、沖合防波堤に釣り客を置き去りにすることを念頭に置き、既に危険な状況にあると判断し、速やかに引き返す決断をすることが必要であった。 |
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