−港内で発生した海難のいろいろ−

（押船U丸被引押起重機船H号送電線損傷事件から）
発生日時、場所　：　11年９月７日08時10分　高知港高知水路
気象、潮汐　　　　：　曇、西風、風力１、下げ潮の末期
海難の概要
	Ｕ丸（19総トン）は、専ら台船型起重機船Ｈ号(登録長61.00メートル)の押航に従事する押船で、Ａ船長ほか３人が乗り組み、港湾工事用資材積込の目的で、９月７日08時00分当日積み込み作業を効率的に行えるようＨ号のクレーン・ジブ頂部を海面上50メートルの高さに引き上げたまま、高知港第５ふ頭第３岸壁を発し、高知水路を経由して港奥の桟橋に向かった。 　高知水路北口付近の上空には、四国電力株式会社の送電線３箇所が横切っていて、これらは海図第110号（高知港）と書誌第101号（本州南・東岸水路誌）に各送電線、関係各鉄塔の位置及び高さ、並びに各送電線の懸垂部の高さ(47、45、50メートル)が明記されていた。 　ところで、Ａ船長は、航行計画を立てるに当たり、高知港第５ふ頭までは２、３回着岸したことがあるので、高知水路南口付近の浦戸大橋の存在を知っていたが、その先には他に航行の支障となるものはないと思い、作業打ち合わせ書類中の海図を精査するなど、港奥に向かう際の水路調査を十分に行わなかった。 　Ａ船長は、離岸後、乗組員及び作業員をＨ号の船首部に３人、船尾部に２人を配置し、5.0ノットの速力で、手動操舵により進行したが、前方頭上の送電線には誰も気付かず、08時10分Ｈ号のジブ頂部が送電線２箇所に当たった。 　その結果、電線及び各鉄塔の上部を折損し、切断された各電線が海面付近に垂れ下がり、関係各地区への出入りが約３時間禁止された。
海難原因
	本件送電線損傷は、目的地までの航行計画を立てる際、水路調査不十分で、Ｈ号のジブ頂部を上げたまま離岸し、送電線に向首進行したことによって発生したものである。
本件から得た教訓
	船舶の通行する狭い水道の上空には架空線が張られていることがあり、目に付きやすい橋に比べて気付かないこともありがちです｡ 事前に海図等によってその有無を調べ、海面からの高さが自船の通航に安全であるかについても確認すること。 これらの損傷事故は、復旧に時間がかかることもあり､その影響が大きく､一般の人々の生活に多大な危険や不便を与えます｡

戻る

次へ