ヨットレース中、スピンネーカーの収納作業を行う際に乗組員が海中転落
(ヨットD号乗組員死亡事件から)
発生日時、場所 平成9年11月9日10時40分 東京湾海獺島沖合
気象等 晴、北北東風、風力5、時折突風
死傷等 乗組員1人死亡
 
海難の概要
 ヨットD号(13.08メートル)は、10人が乗り組んでヨットレースに参加し、レースの折り返し地点でスピンネーカー(レース用ヨットの大三角帆)の収納作業を始めたが、時折吹く突風のために収納作業に手間取り、直接手でつかんで引き降ろすことにし、甲板上に降ろされた収納中のスピンネーカーの上で作業にあたっていた乗組員2人が突風の吹き込みによりスピンネーカーに乗せられて海中に転落した。
 転落の結果、救命浮環に掴まっていた1人は救助され、1人は海上に浮いていたところを救助され病院に搬入されたが、3日後に溺水により死亡した。
 
海難原因
 スピンネーカーの収納作業を行う際の海中転落防止に関する安全措置が十分でなかった。
 艇長が、乗組員に対して救命胴衣及びハーネスの着用について指示しなかった。
 乗組員が、スピンネーカーの上に乗って収納作業を行った。
 
影響した要因
 ・死亡した乗組員は航海経験が豊富であったが、レース経験はあまりなかった。
 ・ハーネスは全員着用していなかった。
 ・艇長は、レース開始当初、海上が時化模様ではなかったのでハーネスの着用を指示しなかった。
 ・救命胴衣は備えてあったが、各自の意思で着用することにしていた。
 
○ 甲板上の「セールに乗るな!」「ロープの輪に足を入れるな!」は、基本中の基本、鉄則です。
○ レース中でも救命胴衣等を着用しましょう。
 裁決に示されているように、強風、荒天などの状況下では、「着用させる。」のは、同乗者に対する安全措置から艇長の責任です。
 本年6月1日に施行された「船舶職員及び小型船舶操縦者法」は、船長に対し、デッキ上にいる乗艇者には救命胴衣等を着用させるよう努めなければならないと定めています。
  

 

戻る 次へ