2 再発防止に向けて(提言)

(1)遊漁船関係団体への提言
@漁業協同組合、事業協同組合などの遊漁船関係団体は、遊漁船業を営む者と協力し、安全への啓蒙や徹底した指導を図る必要がある。
A遊漁船関係団体は、釣り客の安全確保のうえで重要な、出航(中止)などの運航基準を船長に委ねることなく、各組合などで定めることが望ましい。
B遊漁船関係団体は、気象・海象に関する情報や関連する海域の海潮流などの情報を収集し、遊漁船業を営む者に提供することが望ましい。
(2)船長(遊漁船業者)への提言
(一般的な事故防止対策)
@船長は、自ら必要な海事知識と技術を習得し、釣り客の生命を預かるという意識をもち、安全運航に関する適切な判断を行うこと。
 常に気象情報を入手し、荒天が予想される場合には、出航を見合わせるなど、的確な判断をすること。
A釣り客に対して運航計画を十分に説明し、釣り場の様子、往復の航海の状況、当日の気象状況などについても周知しておくこと。
B船長は、釣り客には常時、救命胴衣を着用させること。また、救命胴衣の着用に当たっては、正確な着用方法について指導し、その着用状態を確認すること。
C定員を厳守すること。
(衝突事故の防止)
@釣り場までの航程、遊漁をする時間、帰航時刻などについて、無理のない運航計画をたてること
A他船を避けるなどの基本となる自船の運動性能(速力の変化、舵効きぐあい、旋回の様子等)を再度確認してから発航すること。
B航走中は、船首が浮上し船首方向に死角が生じることが多いので、船首を左右に振ったり、窓から顔を出したりして船首方の死角を補う見張りを行い、他船の動きに注意すること。
C僚船との接近時や無線電話による連絡など、仲間からの情報収集に気をとられ、見張りがおろそかにならないよう注意する。
D衝突事故を防止するためには、海上衝突予防法などに定められている航法、灯火形象物の表示及び各種信号の吹鳴を遵守すること。
E錨泊中は、錨泊中である形象物を表示すること。
F漂泊・錨泊中といえども、厳重な見張りを行うこと。
G他船が接近するのを認めた場合は、相手船が自船を認めていないことも念頭に置き、相手船のみに避航を期待せず、接近する船に対して警告信号を行うこと。
H他船が接近する場合は、余裕を持って機関を準備し、衝突のおそれがあるときは、必要に応じて機関を使用するなど衝突を避けるための措置をとること。
I釣り客の対応など遊漁船業にかかわる作業を行うことは当然ながら、その間にも十分な見張りを行うこと。
J自らの釣りなるべく避け、船長として、常に周囲の船舶の動静を監視すること。
K周囲には、多くの船舶が存在することから、衝突の見合い関係を回避してもすぐに第三船(衝突を回避した船舶以外の船舶)と見合い関係が成立する可能性があるので、常に周囲の船の動静を監視すること。
L良い釣り場を探すため、魚群探知機を監視するときは、周囲の船の動静を把握してから安全な速力に減じて行い、探索作業を短時間とするなど見張りがおろそかにならないようにすること。
M釣りを終えて帰航中の操船は、周囲を見張っているつもりが、疲労感、安堵感などから、ただ漫然と運航し、帰航中のわずかな時間に事故を起こしていることが多いため、貴重な人命、財産を預かっていることを深く肝に銘じて見張りを十分に励行し、安全運航に心がけること。
N船長は、着岸後に当日使用したえさや釣り具などの後かたづけを行うこととし、帰航中は操船に専念して、十分な見張りを行うこと。
O帰航中、前部甲板において、釣り客が帰り仕度のため、立ち上がり移動したりすると船首方向に死角が生じることがあるので、釣り客に対して操船の妨げとならないよう指示すること。
図解「これを守れば衝突事故を防げます。」
(乗揚事故の防止)

@航行海域における経験が豊富であることを理由に船位確認をおろそかにして、乗揚事故を起こしているケースがあるため、経験に頼ることなく、あらゆる手段を用いて、定期的に船位を確認すること。
A常に海潮流の影響を把握して、圧流に十分気を付けること。

(死傷事故の防止)
@甲板から海中へ転落のおそれがあるような箇所について、防護柵を設けるなど、安全措置を講じること。
A航行中の安全を確保するために釣り客が遵守すべ注意事項を十分に説明すること。
B小型船であるため、うねりや風浪によって船体が動揺することを十分に考慮し、釣り客を安全な乗船位置に誘導するとともに、その行動を十分に把握すること。
C 動揺中、甲板上の危険な場所に釣り客が立ち入るような場合には、ただちに規制すること。
(衝突(単)事故の防止)
@船位を十分に確認すること。
A夜間等においては、レーダーを活用して船位を確認すること。
B疲れなどで眠気を催したならば、外気に触れたり、航行を中断して一時的に仮泊する勇気をもつこと。
C夜間、釣りを終えて帰航中、帰航の港に近付いた際に事故の発生が多いことから、安心することなく、緊張をもって操船にあたること。
(転覆事故の防止)
@荒天の際に避難する港を選定しておき、速やかに避難できるよう港の状況について調べておくこと。
A波や風の状況に応じた針路をとること。
B船体に波浪が打ち込むことのないような針路をとり、適切な速力とすること。
Cうねりを受けて狭い水路などに進入する際、追い波には十分注意し、危険と思われる場合には進入しないこと。
D釣り中、気象・海象の変化に十分配慮し、悪化が予想される場合には、速やかに釣りを止めて帰航すること。
E気象・海象の状況により、帰航の港まで安全に航行することが不安な場合には、近くの安全な港に避難すること。



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