1 海難の実態と原因分析(概要)
分析対象裁決事件数
(1)事件種類は「衝突」が全体の約7割
・遊漁船・瀬渡船は、371件中、衝突事件が258件(69.5%)と最も多く、次いで乗揚事件50件(13.5%)、衝突(単)事件18件(4.9%)、死傷等事件(衝突・乗揚等を伴わずに発生した乗船者の人身事故)15件(4.0%)等となっている。
 なお、死傷・行方不明を伴う事件の総数は141件であり、このうち89件は衝突によるものである。
・遊漁船では、306件中、衝突事件が227件(74.2%)と最も多く、次いで乗揚事件が30件(9.8%)、衝突(単)事件が14件(4.6%)等となっている。
・瀬渡船では、65件中、衝突事件が31件(47.7%)と最も多く、次いで乗揚事件20件(30.8%)、死傷等事件5件(7.7%)等となっている。
事件種類別の状況
(2)発生海域は、遊漁船が「関東及び中部地方の太平洋沿岸」、瀬渡船が「九州北岸から西岸で多発」
・遊漁船では、306件の発生海域は、「関東及び中部地方の太平洋沿岸」が73件23.9%、「九州北岸から西岸」が68件22.2%、瀬戸内海46件15.0%等となっている。また、北海道及び東北地方の沿岸海域では少ない。
・ 瀬渡船では、65件の発生海域は、「九州北岸から西岸」が28件43.1%、瀬戸内海14件21.5%、南西諸島6件9.2%等となっている。
(3)発生月は、7月(13.5%)、曜日は、土、日、祝日(62.8%)、時刻は、6時台(9.4%)に多発
・遊漁船では、初夏から秋(5月〜10月)にかけて200件65.4%。土曜日、日曜日、祝日に194件63.4%。11時台〜15時台に119件約40%、5時台〜7時台に62件21.0%の発生。 遊漁船における月別・曜日別件数
・瀬渡船では、発生月について特に顕著な差はない。土曜日、日曜日、祝日に39件60.0%3時台〜7時台に25件38.5%の発生
(4)船舶のトン数別は、5トン未満が、乗組員数別は、単独乗り組みが圧倒的
遊漁船では、5トン未満の船舶が222隻67.5%、5トン以上10トン未満が46隻14.0%等で、乗組員は、船長1人乗り組みが287隻87.2%等となっている。
・瀬渡船では、5トン未満の船舶が39隻60.0%、5トン以上10トン未満が16隻24.6%等で、乗組員は、船長1人乗り組みが62隻95.4%等となっている。
(5)乗船した釣り客は、1隻当たり5人未満が5割強
・遊漁船では、乗船した釣り客5人未満が173隻52.6%、5人以上10人未満が103隻31.3%等で、1隻当たりの平均釣り客は5.4人となっている。
・瀬渡船では、乗船した釣り客5人未満が35隻53.8%、10人以上15人未満が14隻21.5%等で、1隻当たりの平均釣り客は8.1人となっている。
@遊漁船海難の衝突事件(250隻・227件)
・運航の形態は、遊漁中に最も多く発生
 釣り場に向かって航走中74隻29.6%>
 遊漁中(漂泊・錨泊中)87隻34.8%
 釣り場を移動中31隻12.4%釣り場から帰航中58隻23.2%
衝突事件の運航状況
・衝突の相手船は、漁船が約4割に達しており、釣り場(漁場)の利用が遊漁船と漁船とが競合!!
 漁船97隻38.8%、プレジャーボート53隻21.2%、遊漁船50隻20.0%貨物船26隻10.4%等となっている。
衝突した相手船の種類
・衝突の原因のほとんどが人的要因によって発生
 裁決で占めされた海難原因242のうち、見張り不十分193(79.8%)、航法不遵守21(8.7%)、信号不履行13(5.4%)等となっている。
・見張り不十分のワースト5
A瀬渡船海難の衝突事件(31隻・31件)
・運航の形態は、往き(瀬渡し地点に向かって航走中)に最も多く発生
 瀬渡し地点に向かって航走中12隻38.7%
 瀬渡しを終えて帰航中6隻19.4%
 釣り客を迎える目的で航走中5隻16.1%
 釣り客を収容して帰航中5隻16.1%
 瀬渡しした釣り客を見回り中3隻9.7%
運航の形態
・衝突の相手船は、漁船とプレジャーボートが各4割を超えている!!
 漁船13隻41.9%、プレジャーボート13隻41.9%、遊漁船3隻9.7%、貨物船1隻3.2%となっている。
・衝突の原因の96.3%が見張り不十分である。
・見張り不十分のワースト3
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