国際機関の事故防止への取り組み

1 国際民間航空機関の取り組み

 国際民間航空機関(ICAO: International Civil Aviation Organization、本部:カナダ・モントリオール)は昭和22年に発足した国際連合の専門機関で、我が国は昭和28年に加盟しました。ICAOは、総会、理事会及び事務局で構成され、令和5年10月現在、193か国がICAOの締約国となっています。

 ICAOの目的は、国際民間航空条約第44条で「国際航空の原則及び技術を発達させ、並びに国際航空運送の計画及び発達を助長すること」であると定められており、国際航空運送業務やハイジャック対策等の航空保安に関する条約作成、締約国の安全監視体制に対する監査、環境問題への対応など多岐にわたる活動を行っています。

 ICAOは、世界的な統一ルールが必要と考えられる事項について、同条約の附属書(ANNEX)を制定しています。附属書は、航空従事者の技能証明、航空規則、航空機の登録、耐空性、航空通信、捜索救助、航空保安、危険物の安全輸送、安全管理など19種の幅広い分野にわたって規定しています。その中に、航空機事故及びインシデント調査に関す る国際標準及び勧告方式を定めた第13附属書(ANNEX13)があり、運輸安全委員会設置法においても、「国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して(中略)調査を行うものとする」旨定められています(第18条)。

 今後も、当委員会は事故原因の究明と再発防止の観点から、なお一層の航空安全の推進を図るため、ICAOの取り組みに積極的に協力していきます。

2 国際海事機関の取り組み

 国際海事機関(IMO: International Maritime Organization、本部:英国・ロンドン)は、昭和33年に国際連合の専門機関として発足しました(当時の名称は政府間海事協議機 関(IMCO))。IMOは総会、理事会及び5つの委員会(海上安全委員会(MSC)、法律委員会(LEG)、海洋環境保護委員会(MEPC)、技術協力委員会(TC)、簡易化委員会(FAL))、MSC(及びMEPC)の下部組織として7つの小委員会及び事務局より構成され、令和5年9月現在、 175の国・地域がメンバー、3地域が準メンバーとなっています。

 IMOでは、主に海上における人命の安全、船舶の航行の安全等に関する技術的・法律的な問題について、政府間の協力促進、有効な安全対策、条約の作成等、多岐にわたる活動 を行っています。MSC 及びMEPCの下部組織として設置されているIMO規則実施小委員会( III: Subcommittee on Implementation of IMO Instruments)は、船舶事故等に関する調査を含む旗国等の責務を確保するための方法について議論される場となっています。IIIでは、 SOLAS条約や海洋汚染防止条約(MARPOL条約)等に基づき各国から提出される事故等調査報告書を分析して教訓を導き出し、IMOホームページを通じて周知するなど船舶事故等の再発防止のための活動を行っています。

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 また、海運の複雑化・多様化が進む中、複数の国が関連する船舶事故を迅速に調査するためには、関係各国の事故調査機関との協力が必要ですが、各国の事故調査機関は異なる調査体制を持っています。このため、調査の連携が円滑に進むように、MSCで採択された、「海上事故又は海上インシデントの安全調査のための国際基準及び勧告される方式に関するコード(事故調査コード)」及び同コードの一部を義務化するためのSOLAS条約が、平成22年1月に発効しました。同コードは、事故調査手続の標準化や国際調査協力の枠組みの構築等を目的としたもので、その発効により、同条約の適用を受ける船舶の事故が発生した場合には、同コードに則った対応が確実に求められることとなり、各国間の国際調査協力が今まで以上に広がることが期待されています。