国際会議への参加

 運輸事故調査に関する国際会議は、ICAO、IMOによる会議のほか、各国事故調査機関同士が事故調査に関する共通の認識を持ち、かつ、調査機関の協力体制を一層向上させることで、事故の防止、運輸の安全を図ることを目的とした様々な国際会議が開催されています。当委員会はこれらの趣旨に賛同し、会議に参加するとともに、我が国が行った事故調査の結果等を積極的に発信しています。

国際運輸安全連合

 国際運輸安全連合(ITSA: International Transportation Safety Association)は、平成5年にオランダ、米国、カナダ及びスウェーデンの事故調査委員会により設立され、令和5年6月現在、世界の18の国・地域の運輸事故調査機関がメンバーとなっている国際組織で、規制当局から独立した事故等調査の常設機関であることなどがメンバーとなる条件とされています。ある分野の事故等調査で判明した事実が、他の分野でも学ぶべきことがあるという観点から、各メンバーの事故調査機関が行った航空、鉄道、船舶等の事故等調査経験を発表する委員長会議を毎年開催し、事故等原因及び事故等調査手法等を学び、運輸全般の安全性向上を目指しています。

 我が国は、平成18年6月に航空・鉄道事故調査委員会がメンバーとして承認され、平成19年以降、当会議に参加しています。新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴い、令和2年以降はウェブ会議形式で開催されていましたが、令和5年6月5日~7 日に台北で開催された会議は、当委員会の委員長及び関係職員が4 年ぶりに対面形式で参加しました。 今回の会議では、各機関からの調査事業の紹介や共通して関心の高いテーマに関するパネルディスカッションが行われました。当委員会委員長からは、新技術に関するパネルディスカッションにおいて、当委員会で活用しているX 線CT スキャナ、3D レーザースキャナ及びドローンといった新技術に関する発表を行いました。

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国際航空事故調査員協会

 国際航空事故調査員協会(ISASI: International Society of Air Safety Investigators)は、各国の航空事故調査機関等により組織され、加盟各国の意思疎通を図り、かつ、航空事故等調査の技術面における経験・知識・情報等を交換することにより、調査機関の協力体制を一層向上させることで、航空事故等の再発防止を目的とする事故等調査に対応しようとするものです。

 ISASIでは、年次セミナーが毎年開かれ、我が国は、昭和49年に航空事故調査委員会が発足して以来参加しています。このセミナーでは、本会議に併せてフライトレコーダー分科会、事故調査官訓練分科会、客室安全分科会及び各国政府調査官会議等が行われますが、我が国はこれらの分科会等にも参加し、航空事故等調査技術の向上に努めています。平成22年には、日本において初めて年次セミナーが開催されました。

 令和5年8月の年次セミナーは米国のナッシュビルで開催され、3件の基調講演及び25件の発表があり、併せて2つのグループミーティングに参加しました。

 また、ISASIの地域協会は、豪州(ASASI)、カナダ(CSASI)、欧州(ESASI)、フランス(ESASI French)、韓国(KSARAI)、中東・北アフリカ(MENASASI)、中南米(LARSASI)、ニュージーランド(NZSASI)、パキスタン(PakistanSASI)、ロシア(RSASI)、米国(USSASI)、アジア(AsiaSASI)にそれぞれ設立されており、各地域協会でもセミナーが開催されています。

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アジア航空事故調査員協会

 アジア航空事故調査員協会(AsiaSASI: Asia Society of Air Safety Investigators) は、国際航空事故調査員協会(ISASI: International Society of Air Safety Investigators)の地域支部として、アジア地域における航空安全を促進し、地域内の航空安全調査機関同士の協力を強化するため、平成21年に設立され、令和4年7月現在、27法人、96名のメンバーが所属しています。

 わが国は設立当初から副会長を、平成29年9月からの4年間は会長を務めました。令和3年9月からは執行委員として、アジア地域における事故調査能力の向上や協力関係の強化などの議論において、主導的な役割を果たしています。

 令和4年は、ウェブ会議方式による年次役員会が7月27日に開催され、航空事故調査官が参加しました。

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鉄道技術国際会議

 鉄道技術国際会議(International Conference on Railway Technology: Research, Development and Maintenance)は、事故調査を含む全ての鉄道技術に関する知見の国際的共有を目的とし、平成24年の第1回会議以降、概ね2年毎に開催されています。

 令和4年8月にフランスのモンペリエで開催された第5回会議には、委員及び鉄道事故調査官が参加しました。

 会議では、委員が複数のセッションで座長を務めたほか、事故分析と安全技術のセッションでは、日本国内で発生した鉄道人身障害事故の概要、事故調査のプロセス、原因と再発防止策について報告しました。

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国際鉄道事故調査会議

 国際鉄道事故調査会議(IRAIC: International Rail Accident Investigation Conference)は、鉄道事故調査に関する知見の国際的共有を目的に、英国機械学会(IMechE)の鉄道部門が開催する会議であり、2007年に設立されて以来、3年毎にロンドンにおいて開催されています。

 平成28年11月に開催された第4回会議には、委員及び鉄道事故調査官が参加しました。

平成28年の会議の様子 新しいウィンドウが開きます
平成25年の会議の様子 新しいウィンドウが開きます

国際船舶事故調査官会議

 国際船舶事故調査官会議(MAIIF: Marine Accident Investigators' International Forum)は、海上の安全と海洋汚染の防止に資するため、各国の船舶事故調査官相互の協力・連携を維持発展させ、船舶事故等調査における国際協力の促進・向上を目的として、カナダ運輸安全委員会の提唱により平成4年から毎年開催されている国際会議で、平成20年にはIMOにおける政府間組織(IGO: Inter Governmental Organization)としての地位が認められました。

 この会議は、各国の船舶事故調査官が率直な意見交換を行い、船舶事故等調査に関する情報を共有する場として活用されており、船舶事故等調査から得られた知見をIMOの審議に反映させるよう、議論が活発化しています。平成21年にはIMOに対し、MAIIFとして初めて各国事故調査機関の調査結果に基づく提案を行いました。我が国も第3回会議から毎年参加しているほか、平成11年には東京で第8回会議を開催するなど、積極的に貢献しています。

 令和5年10月に第30回会議が英国のロンドンで開催され、当委員会から船舶事故調査官らが参加しました。

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アジア船舶事故調査官会議

 アジア船舶事故調査官会議(MAIFA: Marine Accident Investigators Forum in Asia)は、アジア地域における船舶事故等調査の相互協力体制の確立に寄与すること及び開発途上国への調査体制強化の支援を行うこと等を目的として、 日本の提唱により設立され、平成10年から毎年会議が開催されており、平成22年には東京で第13回会議を開催するなど、主導的な役割を果たしています。当会議により確立された調査官のネットワークは、 その後の事故等調査における迅速かつ円滑な国際協力を推進する上で有効に機能しており、MAIFAの成功に倣い、平成17年には欧州においてE-MAIIFが、平成21年には北中南米においてA-MAIF が設立され、各地域の船舶事故調査官の交流や協力がこれまで以上に高まっています。

 アジア地域には、海上交通が輻輳する海峡が多数存在するほか、激しい気象・海象に見舞われることもあり、悲惨な船舶事故が発生し続 けている一方、事故等調査能力や制度が必ずしも十分とはいえない国もあることから、このような地域フォーラムでの取組が重要となっています。

 令和5年9月に第23回会議が中国の上海で開催され、船舶事故調査官が参加しました。

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