委員長記者会見要旨(令和5年5月23日)
令和5年5月23日(火)14:00~14:16
国土交通省会見室
武田委員長
発言要旨
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、5月の月例記者会見を始めさせていただきます。
1.事故等調査の進捗状況
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、船舶モード合わせて3件です。
航空モードは、5月3日に富山県富山市内の場外離着陸場付近で、ヘリコプターが着陸した際に横転し機体が損傷した航空事故、及び5月22日に中部国際空港で、朝日航洋所属のヘリコプターが、管制官から指示された滑走路とは異なる場所に着陸した航空重大インシデントの2件です。
船舶モードでは、4月12日に長崎県佐世保市のテーマパーク内の運河で、遊覧船から旅客1名が落水し死亡した事故の1件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
2.安全啓発資料の公表
次に、那覇事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。
昨年、沖縄県で、漁を終えて帰港し、港内係留中であった漁船で火災事故が発生しました。
本事故は、帰港後、船長が電気設備のブレーカーを落とさずに離船したところ、当該漁船に搭載されていたソデイカ漁用の電動式釣り機の配線に通電された状態が続くこととなり、その結果、当該配線の劣化部分がショートして、発火したことが原因と考えられています。
今回の安全啓発資料においては、このような火災事故の事例を教訓に、離船時にブレーカーを落とすことや、普段から電気設備や配線の目視点検と保守整備を行うことについて注意喚起するとともに、電気火災事故のメカニズムや目視点検のポイントなどについて図解をしています。
沖縄県においては、ソデイカ漁が盛んであり、全国で見ても随一の水揚げ量を長らく維持しているところです。このソデイカ漁には漁期があり、今期は、この5月末日をもって終了し、6月からは禁漁の期間を迎えます。禁漁期間に入り、関連する電気設備を長期間使用しなくなる前に、ブレーカーの切断状況の確認などを、特に念入りに行っていただくことが重要ですので、この機会に改めて呼び掛けることとしたものです。
当委員会が調査対象とした船舶の火災事故においては、漁船の占める割合が高く、中でも電気系統に起因する火災事故が多く発生していることから、ソデイカ漁のみならず、漁業に従事される方々においては、当資料をご覧いただき、電気火災事故の防止に役立てていただきたいと思っております。
本日、私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
3.質疑応答
(知床半島沖旅客船浸水事故関係)
問: 北海道知床のKAZUⅠ(カズワン)浸水事故に関して現在の事故の調査の状況、進捗を教えて下さい。
答: 本事故につきましては、現在、引き続き必要な調査、情報収集を並行して行いながら、調査報告書の案について検討、審議を鋭意行っているところでございます。今後、更に必要な調査、分析を行い、最終ステージにきていると思いますが、所要の手続きを経て報告書として取りまとめる必要があるため、具体的時期を申し上げることはできませんが、早期に公表できるよう努めてまいります。当委員会の調査官、委員で頑張っているところでございます。
問: 今の、KAZUⅠ(カズワン)の事故に関連してですけれども、最終ステージというお話がありましたが、目処はどのくらいでと考えているでしょうか。
答: 早期に公表できるよう努めているところでございます。
問: 外部の方に見てもらってというような手続きもあるのでしょうか。
答: 意見聴取会を考えております。運輸安全委員会設置法第24条第3項に基づき意見聴取会を開き、関係者又は学識経験のある者から意見を聴くということを想定しております。本件は重要でありますし、広い目で色々な角度から見ていただくことも考え意見聴取会を行い、意見をお聴きする機会が必要であると考えておりますが、具体的な開催時期等については、現時点では決まっておりません。事実情報の最終確認、分析、その他の取りまとめを鋭意で行っており、航空、鉄道の委員からも意見を聞き、より広い見地から進めているところです。
問: 運輸安全委員会設置法第24条第3項に基づく意見聴取会は他の一般的な事案においても開催されているものでしょうか。
答: 特に重要な事案について開くことができるとしており、比較的航空関係が多いですが、よく話題になるのが御巣鷹の事故、鉄道では福知山線の事故、他にもありますが、KAZUⅠ(カズワン)の事故については開催させていただくことを考えています。
問: 今、仰られた御巣鷹の事故、福知山線の事故は何百人もの犠牲者が出るような事案だったと思いますが、例えば、他にも船舶の事案でも行ったことはあるのですか。また一般的に開かれるものなのですか。
答: 平成20年の運輸安全委員会発足以来、今回の件が初めてになります。前身の事故調査委員会時代には、航空、鉄道で開いたことはあります。船舶については、一度も実施したことはありません。
問: 航空、鉄道は御巣鷹の事故、福知山線の事故1件ずつでしょうか。
答: 8件実施し、主に航空でございます。鉄道が事故調査委員会の対象になったのは平成13年からであり、鉄道については福知山線の事故1件となっています。
問: KAZUⅠ(カズワン)絡みの意見聴取会を予定しているという件ですが、例えば学術者の方の人選などは終わっているのか。また、過去の実績では一回で終わるものなのか複数回開くものなのか如何でしょうか。
答: 意見聴取会を開くということを考えているだけで、具体的なことはこれから整理していきたいと思っています。過去では一回開催です。
(東海道線の貨物線へ誤進入した事案)
問: 今朝、東海道線の大船駅手前で貨物線の路線に入ってしまうという事案がありましたが、調査の対象にならないのですか。
答: インシデントが発生すると鉄道局から通報がありますが、今回の場合は通報がなく、現在のところ対象ではありません。
資料