平成26年6月25日(水)14:00~14:44
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。
本日は、お手元の資料にありますように、進捗状況等報告として、航空事故調査に関する情報提供を1件、また、勧告に基づき講じられた措置として2件、次に運輸安全委員会ダイジェスト第14号の発行、さらに、運輸安全委員会年報の発行についてご報告いたします。
問: 石勝線の完了報告をもらったということですけれども、これについて、運輸安全委員会としては、特にこの内容について問題なり、瑕疵なりなどはないという判断でよろしいですか。
答: 講じた措置についてですが、図面の管理体制について指導を徹底するとともに、継続的な教育訓練の内容を新たに盛り込んだこと、また、施工の点検方法について、関係規程類を改正し標準化を図ったことなどが報告されております。今後とも、不断の見直しを実施していくことにより、本件のような事案を再び繰り返すことのないよう、私どもとしては、厳にお願いしたいと考えているところであります。
問: JR北海道のそれらの措置について、了であるということですか。
答: そういうことです。
問: 江差線の脱線事故について、何点かお聞きしたいのですが、これから原因究明に当たるということですけれども、昨日現地調査を終えられて、考えられる原因として、可能性の一つとしてあげられるものが、もしあればお願いします。
答: 江差線については、昨日、現地調査を終えて帰ってきたばかりという状態でありまして、現在、収集した資料、データの整理を行っているところであります。早期の取りまとめに向けて全力で取り組みたいと考えておりますが、現時点で発表する内容はありません。ご理解下さい。
問: 一部、積み荷の新聞用のロール紙に偏りがあったのではとか、いろんな可能性が指摘されていますけれど、積み荷の部分も考えられているのでしょうか。
答: その点も含めて調査をしているところであります。
問: 積み荷に絞ってとか。
答: 積み荷に絞ってということではもちろんありません。一般的にはレールの構造、あるいは車輪とレールの干渉、それからおっしゃるような積み荷の状態とか、いろんな点を考えなければいけませんので、それらを総合的に考えてということであります。
問: そういう点でいきますと、江差線で過去に2件、脱線事故が起きていまして、2件目が起きたときに、委員長会見の中で、「車両に何らかの関係があるかもしれない」というようなご発言を当時されていらっしゃるのですけれど、それについて、現状で、過去の例も踏まえていかがですか。
答: 過去の2件については、現在とりまとめているところですが、最初に起きた平成24年4月の事故につきましては、すでに調査報告書の審議中であります。早期の調査報告書の公表に向けて、全力で取り組んでいるところであります。もうしばらくお待ちください。内容については、今申し上げるわけにはいきません。
それから9月の事故につきましては、事案自体が非常に複雑で、様々な要因が関与しているものと考えられることから、より多角的かつ慎重な調査・分析が求められております。そのため、現在、鋭意、調査・分析を行っているところでありますが、いずれにしましても、早期のとりまとめに向けて全力で取り組んでまいりたいと思っています。また、前の2件と今回の事故との関連等についても必要に応じ解析を進めていく予定であります。
問: つまり、過去の2例と今回の脱線の関連についても調べるということですか。
答: 関連があれば、そういうことです。
問: そもそも過去の2件の脱線ですけれども、1件目から2年を過ぎたのですが、調査報告書に時間がかかっているのは、難しさみたいなものがあるのですか。
答: そうですね、先ほど申しましたように、9月の事故については、事案自体が大変複雑なものとなっていますので、時間がかかっています。4月の事故についてはできるだけ早くということで、現在とりまとめておりますので、ご了解いただきたいと思います。
一般的に言って、似たようなところで脱線事故が起きているので、これは関連があるのではないかということですけれど、我々からすると、個別に調査を進め、結果的に似たような点が出てくるということは理解できることもあるのですけれど、最初から関連があると決めつけてやるのはなかなかできないものです。そういう面でそれぞれ個別ということで扱っていって、結果として何か似たようなものが出てくるということはあるかもしれないということを、考えながらやっているわけです。基本的には個別に調べていくことになります。先ほど申し上げました通り、最初の件は近々公表できると思います。9月の件はもう少し待っていただきたい。
今回、起こったものとの関連についても、ちょっと時間がかかるということになります。
問: 積み荷のロール紙が偏ったのではないかというところなんですけれど、原因に関連しているかどうかはこれからの調査になるかと思いますが、端的な事実関係として、右と左で荷物の重さに偏りがあったかどうかということは、あまり関係者に係らない事実だと思いますので、教えていただけますか。
答: 積載物の状況についても、もちろん調べてきておりますので、その点も含めて、現在、精査中であると理解していただきたいと思います。
問: 進捗状況一覧にある調査中の23件のうち、江差線の過去の2件は古い方から2番目と3番目で、4月の方は報告書案審議中ということですが、発生から2年以上経っていて、初動報告は出ているようですが、1年を経過した段階での中間報告も出ていないと思います。関連性はわかりませんが、もっと早く報告書が出ていて何らかの再発防止策がとれていれば、今回の事故は防げたのではないかという見方もできると思うのですが、報告書の遅れについてはどのようにお考えでしょうか。
答: 続けて起こったこともありますし、9月の事故の方が複雑な事案であったということもあり、また、2件の関連性についても意識しながら調査を進めてきたことから少し時間がかかっているということはあります。内容については今申し上げることはできませんが、中間報告を出すかどうかという点については議論の必要はありますが、中間報告を出すこととしないという判断をしているわけであります。できるだけ急ぎたいとは考えております。
問: 今回発生直後で、昨日戻ったばかりということはあると思いますが、前回の時は何らかの進捗の報告がありましたが、今回について出されるお考えはあるでしょうか。
答: 今回現場調査をして調べた結果によって、状況について何か言えるようなら進捗の報告を出すということも考えられると思います。これから検討課題です。
問: JR貨物の会見で、今回の件と計3回脱線事故が起きていて、再発防止策については事故原因がわからないので回答は控えると発言したのですが、言い換えると運輸安全委員会の調査報告書ができていないから再発防止策が立てられないともとれるのですが、このことについてどのようにお考えですか。
答: 委員会の調査は独立した立場で行うものであり、JR貨物等の原因関係者が当該事故の当事者として行う調査やその結果を踏まえて実施する再発防止について、当委員会として直接言及する立場にはないと考えます。それぞれが独立して調査することは重要で、調査母体がそれぞれの調査をした結果、一致しない見解が出たとしたら、何故一致しなかったのかなどについて新たに調査の手法や調査すべきものが発見できるかもしれません。他の調査母体の意見は参考にはしますが、委員会の調査はあくまで独立して行う基本的立場にご理解願いたい。
問: 原因がわからないから再発防止策について取り組めないというものではないのですね
答: そのようなことはありません。JRが独自に調査し、再発防止策を行ったとしても、我々の調査がその内容に追加するような内容や、補充するような内容となるかもしれないし、まったく一致することもあるかもしれません。それぞれが調査を行い、調査結果が絡むようなこともあるかもしれませんが、それぞれが独立した調査母体であることと理解していただきたい。
問: 委員長は2年間のうちに江差線で3回脱線事故が発生していることについてどう思いますか。
答: 事故にはそれぞれ固有の状況や背景があり、それぞれの事故について個別調査を行い、その結果3件に共通する要因が出てくるかもしれません。
問: 今までの調査で提出された検査データの改ざんが函館線ではありましたけど、今回の事故で収集したデータで改ざんした痕跡などが伺えるようなことはないですか。
答: データを収集し、解析を行っているところですが、慎重に解析に取り組みたいと考えています。
問: 改ざんがあるかもしれないということを念頭においていますか。
答: 事故発生から3名の調査官を派遣し、現場調査、車両調査、関係者からの口述等を行い得た情報をまとめている最中で、今のところ改ざんされているということは見受けられないということです。
問: 函館線の事故のあと鉄道局の処分の中で運輸安全委員会に提出したデータが一部改ざんされていたと発表した経緯から、データは慎重に取り扱うべきだと思いますが。
答: データの取り扱いは慎重に行います。事故はいつどこで起きるかわかりませんから、事故が起こる前のデータは関係者から提出してもらわなければならないので、そのデータについては調査を進めるうちに確認していくことになります。
問: 現場の近く約5メートルくらいのところで、以前にも土砂崩れがあったということなのですが、今回の豪雨で点検の対象に入ってなかったようですけれども、そういう点検の体制についての調査もかなり調べるのですか。
答: 体制についても調べるつもりです。現在、運輸安全委員会から2名派遣して調査解析しているところです。引き続き車両の損傷状況、斜面の状況や運転規制の状況等を含めまして調査していく予定としております。
問: 運転規制のあり方ということについては、昨今豪雨が増えていますけれども、過去に遡ってどういう規制をどういう場合にひいてきたということを調べるのでしょうか。
答: 一般的に最近の状況につきまして調査するということです。
問: 最近というのはどれくらいの期間でしょうか。
答: 期間も含めまして、精査したいと思います。
問: 1月に起きた自衛艦おおすみの事故ですが、今月海保の方からは双方の見張り不十分ということで処分が出たのですが、運輸安全委員会の調査の進捗状況はいかがでしょうか。
答: 現在調査中で、関係者から話を聞いているところです。お二人が亡くなられた事故ですので、早期の原因究明も必要ですが、慎重に調査をしている段階です。海上保安庁が見張り不十分と判断したことは承知していますが、当委員会としては予断を持たずに慎重に調査を進めているところです。
問: 沖ノ鳥島の桟橋建設転覆事故ですが、問題の桟橋が鹿児島に曳航されたのですが、その調査は、運輸安全委員会として行うのでしょうか。
答: 桟橋の調査を行いました。現段階で、調査の内容についてお話しできる状況にはありません。
問: 現地調査といいますか、桟橋の調査は終わっているのでしょうか。
答: 調査は継続中です。
問: だいぶかかるのでしょうか。
答: 調査がまとまるのは、まだ少し時間がかかる見込みです。
問: 関東地方整備局は7月上旬にも中間とりまとめを出すらしいですが、まだ調査が終わらないということであれば、桟橋をそのまま残しておくとか、今後の工事の再開に影響が出ると思うのですが、いかがでしょうか。
答: 現場の行政的な立場で調査をされるのとは別に、我々は原因究明、再発防止のための調査を行っておりますので、その点で立場が違うということは ご承知のとおりです。我々の調査は時間がかかるということをご承知いただきたい。どういう日程になるかということは申し上げられません。鹿児島においては調査を行い、損傷箇所は凹損等が数カ所ありましたが、そこから水が入ってはいないとの報告を受けております。桟橋はひっくり返ったままですので、それを元に戻すのかという予定は聞いておりませんが、今後どういう調査できるのか、調査に何が必要かということも含めて検討しているところです。
問: 先日、小田急線で回送列車が脱線する事故がありましたが、営業線ではないということで委員会の調査対象外となりましたが、それなりに影響も大きかった事故だったかと思いますので、対象にしなかった判断についてはどのようにお考えでしょうか。
答: 小田急線の件については、車庫から出て行くところでした。そばにいくつか線路があるのですが、本線に影響を与えなかったこと、客が乗っていなかったこと、そういう事例についてはインシデントとしての扱いとなり対象とはならず、今回調査をしておりません。先程勧告に対する完了報告で申し上げた 三岐鉄道の事故についても、2件続けて起こっていました。4月に続けて9月に起こっています。4月に起こった時は、調査の対象ではないということで外したのです。しかし2件続けて起こったので、それぞれはインシデントの扱いではありましたが、これは調査の対象にして、特殊な点があるだろうということで調査の対象として調べたのです。小田急線に関しても、今後続けてそういうことがあれば調査の対象となり得ることもあると思いますが、本件については現在調査の対象とはしておりません。
本日公表の年報の42ページと44ページに調査対象の表がありますが、この表に記載していますような法令に基づいて調査を行います。車庫内の脱線は列車脱線事故ではないので事故調査の対象とはなりませんが、車庫内での脱線でも重大インシデントの調査対象となる場合もあり、脱線により本線の列車と衝突する恐れがある場合などの特に異例の場合に調査対象となります。委員会の調査対象とするのはこのような法令に基づいて判断していますが、この特に異例となる場合の判断が変わる余地はあり、見直すことも必要かもしれない。今回の小田急線の脱線は今までの事例から調査対象となりませんでした。
問: ボーイング787の件では前回の会見で意見照会を行うとのことでしたが進捗状況はどうでしょうか。
答: 現在フランス、アメリカへ意見照会を行い、原因関係者へ意見聴取を行っています。意見照会の回答期限は60日間となっていますので、もう発送していますが8月あたりには戻ってくるのではないでしょうか。回答が戻ってくればその意見を踏まえ審議します。
問: 回答期限は8月の上旬、中旬、下旬いつですか。
答: いつ発送したのかなど具体的日にちは差し控えさせていただきます。できるだけ早く報告書の公表をすべく取り組みたいと思っています。
問: フランスはタレスで、アメリカはFAAやボーイング社に意見照会を行っているのですか。
答: その関連機関ということです。
問: NTSBには意見照会を行いましたか。
答: NTSBを通して関連機関へ照会を行い、フランスも事故調査機関をとおして関連機関へ意見照会を行っています。