平成26年4月23日(水)14:00~14:35
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長
運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。
それでは、本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、勧告及び意見に基づき講じられた措置としてそれぞれ1件ずつ、運輸安全委員会ダイジェストの発行、船舶事故ハザードマップのグローバル版の運用開始についてご報告させていただきます。
問: ケミカルタンカーの死亡事故ですが、こういう事故は時々発生している気がしますけれど、今回初めてこういう報告がきたということですか。それとも何かほかに理由があるのですか。
答: いくつかこのような事故が最近起きております。今回この件については死傷者を生じたということと過去にも同一事業者による事案が発生しているということで、改善すべき事項があると考えまして、運輸安全委員会として勧告を出したものです。それを国土交通大臣に受け止めていただき、早速、改善策を講じた旨の通報をしていただきまして、我々、その方策について評価しているところです。今後の同種事故の再発防止に役立っていくことを期待しているところであります。
問: 過去の事案の統計を、運輸安全委員会はまとめているのでしょうか。
答: ご承知のように船舶部門の事故調査を始めて6年目に入ったところであります。従来の海難審判庁との報告書と併せて考えなければいけないので、その辺の合成作業というのは、時間がかかるもので、そこまで手が回らなかったのでありますけれども、我々の船舶事故の調査部門が出来上がったということで、将来はおっしゃるようなこともできるように考えていきます。
勧告や意見につきましてはホームページで掲載させていただいていまして、その中でご対応いただいたものにつきましては、ホームページでまとめて公表させていただいています。
問: 韓国で先週、旅客船の転覆事故がありました。行方不明者がまだ多数いまして、事故原因も判然としないところもありますが、日本も海に囲まれている国で、危険な海域もありますし、過去には2009年に「ありあけ」の似たような事故がありました。そういう観点からも今回の事故について、委員長としてどのように受け止めておられるかという点と、これは外国の話ではありますが、原因等について何か所感があればお願いします。
答:今回の事故については、我々も報道で承知しているだけでありますが、修学旅行中の高校生のほか大変多くの旅客の方が死亡あるいは行方不明になっているという大惨事であります。亡くなられた方のご冥福と行方不明になっておられる方の一刻も早い発見を祈念しているところであります。今回の事案は、韓国の領海内で発生した韓国国籍の船舶による事故であり、国際条約に基づき、韓国の船舶事故調査当局、これは韓国海洋安全審判院の一部でありますが、事故の原因究明に当たることになるものと承知しております。このため、現段階で運輸安全委員会としてコメントする立場にはありません。ご了解いただきたいと思います。
問: とはいえ、あれだけの大惨事がおきまして、国内の海運事業者に対する影響といいますか、各社、安全徹底をもう一度と国交大臣も言われていますけれど、そういう観点からも、委員長、この事故をどういうふうに見ておられますか。
答: 今後、事故調査が進められていろいろな勧告、あるいは改善策が出されると思いますが、それと我々が持っている先ほどの「ありあけ」の事故を含めまして、我々に何ができるかは今後の検討課題として、注目してまいりたいと思っております。
問: 完全に韓国マターではあるものの、船が元々日本で運用されていたということもありまして、JTSBから調査官を派遣するとか、要請があるとか、そういう話になっているとか、可能性というのはいかがでしょうか。
答: 韓国の方から、日本の我々調査当局に対して要請があれば、協力することもあり得ると思いますが、今のところ、それはありません。もしも、韓国から協力依頼があったとしたら、何ができるのかについて、いろいろと検討することになると思いますが、今の段階で要請はきておりません。「ありあけ」と作ったところは同じですので、それがどのように改造されて、どうして事故を起こしたのか、我々も関心をもって注目していきたいと思っています。
問: 「ありあけ」の事故調査報告書は世界中に公表しているのでしょうか。
答: 「ありあけ」の報告書は日本語版のみで、英語版では公表していないと思います。
問: 日本語版のみですか。事故調査報告書は世界中に公表しているのではなかったですか。
答: 国際航海に従事する一定の船舶に係る事故等については、英語版を作成してIMOに提供しています。
問: 航空はどうでしたでしょうか。
答: 航空の場合は、条約に従って、小型の航空機に係る場合を除き、英語版を作ってしかるべきところに提供して、見ることができるようにしています。実態としてはほとんど英訳されています。
問: 航空の場合では、メーカーとか運航管理者とか関係者に全部いきますよね。
答: そうですね。
問: 船の場合、「ありあけ」の時に英語版が公表されていれば、韓国の海運会社・運航会社の管理者が知っている可能性があることになりますね。
答: 情報としては、その可能性はありますね。
問: 英語版を作ることは、人員というか体制的に難しいという感じですか。
答: 外国船籍の船が関与する時は英語版を作っております。船の場合につきましては、一定のトン数以上の大きさとか、国際航海に従事する船である場合には、IMOに報告するという形をとっているのですが、「ありあけ」の場合はそれに該当しないということで、国際機関に報告していないということです。
航空につきましても、国際条約上決められているから英訳を出している訳で、海は海のルールに従って出しているということだと思います。
鉄道では報告書自体は英訳していませんが、今の年報は全部英訳して出しています。このように、どういう事故があって、どういう調査をしたかという概要は、公表してきているところです。
問: 資料6の船舶事故ハザードマップ・グローバル版の件ですが、韓国の事故と絡むのですけれど、去年の10月に韓国で調査官会議が開かれて、そこで賛同を得られた国から協力を得て、世界の事故が一覧できるということですが、韓国で開かれたのですが、韓国の協力は得られなかったということなんですか。
答: 韓国については、独自にこういった事故情報のデータベースを別途検討されているということもあって、今回の私どもの提案にはご参加いただいておりません。今後とも、いろんな機会を通じて調査機関の新たな参加を募ってまいりたいと思っています。
問:今後も韓国は、ここに入ってくる可能性もあるということですか。
答:引き続き参加を募ってまいりたいと思っています。今月、オランダのロッテルダムで行われた第10回欧州船舶事故調査官会議(EMAIIF10)においても、このグローバル版の紹介を行うとともに、広く参加国を募ってきたところです。今後とも、あらゆる機会を通じて参加国の拡大、調査報告書データの追加を行いつつ、情報の充実に努めてまいりたいと思います。
なお、どういう使い方ができるかというと、発生海域、発生年月、発生時間帯、事故種類、船舶の種類などの条件を絞って検索できますので、利用者の用途に応じた情報を入手することが可能となっております。例えば、運航管理者や外国船の代理店などでも、航行予定海域において、どこでどのような事故が発生しているか、事故が多い場所ではどのようなことに気を付ければいいのか、などの情報を事前に入手することにより、実際の航海における安全運航や船員に対する安全教育としても活用いただけるものと期待しております。
実際に発表された方から外国からの反応を聞きますと、大変好評であったと聞いています。
問: 沖ノ鳥島の港湾施設の事故で、今後の調査の関係もあるので資料は出せないということだったと思いますが、事実について、できる範囲で開示できるものはないでしょうか。
答: 4月1日調査官2名を沖の鳥島に派遣しまして初動調査を行いました。作業員から話を伺い、資料の収集、桟橋及び台船の状況の確認などの調査を行いました。当時は人命救助が第一優先であり、なかなか作業員から詳しい状況を聞けるような状態でありませんでしたので、今後は内地に戻った作業員から、より詳しく事故当時の作業の状況、操船の状況、気象海象などを予断なく情報を入手していく予定です。現段階で詳しい状況をお話しすることは差し控えさせていただきます。
問: 今回調査官が調査しているのは、船舶の運用に関係している可能性があるからという設置法の趣旨からだと思いますが、桟橋の構造上の問題であった場合、運輸安全委員会は調査対象外となるのでしょうか。あくまで、台船や引船が関わるなら調査を行うということでしょうか。
答: 現在、詳しい状況を十分には掴めていないので、調査を継続しているところですが、様々な観点からいろいろな情報を入手したのちに、船舶の運用や桟橋そのものなどに関して検討していきたいと思いますので、現段階で運用に関わるものかどうかについてはお答えできません。
問: 運用上の問題でなくなった場合はどうなるのですか。
答: 設置法上、船舶の運用に関わる事故について我々は最後まで調査しますが、その範囲については調査の段階で申し上げられません。現在、様々な情報を集めている段階です。
問: 北海道内のJR貨物の2012年脱線事故2件でJR貨物の社内調査で積荷の偏りがあったとしていますが、運輸安全委員会ではどのように把握していますか。
答: その件については調査中なので内容を申し上げることはできないことをご理解いただきたいと思います。北海道内の何件かの事故については平行して調査・審議を行っているところでして、JR貨物についても問題点のまとめということも可能だと思いますが、調査・審議が進むのを待っていただければと思います。
問: JR貨物から社内調査の報告は上がってきていますか。
答: それも含めて調査中なのでお答えできないことをご理解下さい。
問: 荷物が偏っていたという件についてもですか。
答: 調査内容についてはコメントを差し控えさせていただきます。調査中のものは途中で情報が出ると、結論の見通しを出してしまい、調査中のものと結論で発表したものが違った場合は悪影響を与えてしまうので、調査中の内容に関してはお答えできないことをご理解いただければと思います。