平成17年に言い渡された全裁決732件のうち,衝突が259件535隻(全ての船種)となっています。
 この中で,486隻に対して647の衝突原因が示され,そのうち354隻(486隻の73%)が「見張り不十分」(647原因の55%)であったとされています。
それでは,「見張り不十分」であった354隻について,その理由を詳しく見てみることにします。
「見張りを行っていなかった」もの95隻では,「不在橋(操舵室から離れていた)」が69隻で7割を占めており,そのときの形態は,漁船の「操業中」が37隻,遊漁船及びプレジャーボートの「釣り中」が24隻と多く,他船が避けてくれることを期待して,漁ろう作業に専念していたり,釣りに熱中するあまり,釣り糸の方ばかりを見ていて,周囲の見張りがおろそかになっています。
「見張りは行っていたが,衝突直前まで相手船を認めなかった」もの156隻では,「漫然と航行」が52隻,「死角を補う見張りを行わなかった」が44隻,「他の船舶に気をとられていた」が34隻などとなっています。見張りは行っていたものの,「接近する他船はいないだろう」との思い込みから見張りが不十分になったり,航走中に船首が浮上して前方に見張りの障害となる死角が生じていたにもかかわらず,死角に隠れた部分の見張りを行っていなかったケースが多く見られます。
「一度は相手船を認めたものの,その後は目を離して相手船を見ていなかった」もの103隻では,「接近することはないものと思って,その後は見ていなかった。」が44隻,「相手船が避けてくれると思って目を離した」が34隻など,初認時の安易な判断や期待から目を離してしまい,その後の相手船の位置や進路や方位の変化などの動静監視を怠り,衝突に至っています。
 
前のページへ 次のページへ
海難審判庁ホームページのトップへ戻る