平成14年〜16年に裁決した居眠り海難252件のうち,内航船(総トン数20トン未満の船舶,押船,引船,はしけ等を除く)は,89件で全体の35%を占め,その内訳は,「乗揚」が66件(74%)で最も多く,次いで「船舶同士の衝突(=衝突)」が12件(14%),「防波堤・護岸・灯浮標等への衝突(=単独衝突)」が11件(12%)となっています。
 発生海域についてみると,瀬戸内海が68件(76%)で最も多く,次いで九州北西岸が9件(10%)となっていて,その他に伊豆半島爪木埼でも2件発生しています。
 瀬戸内海についてみると,特に多いのが,大畠瀬戸・平郡水道周辺の13件,備讃瀬戸の12件,釣島・クダコ水道周辺の11件で,いすに腰を掛けたまま,比較的広い海域で直線コースを自動操舵によって航行しているうちに,居眠りに陥っているケースが多くなっています。狭い水道を抜けてホッとした心の隙間に睡魔が忍び込んでいるようです。
 東行船・西行船ともに,備讃瀬戸各航路入口付近で乗り揚げているほか,航路内には,反航船がなく,航路横断船も少ないためか,気が緩んで長い直線コースで居眠りしてしまい,航路を外れて乗り揚げたケースが目立っています。
 また,北備讃瀬戸大橋の橋脚基礎に衝突したケースもありました。
 博多港に向かう2隻が,同じようなコースで福岡県志賀島に乗り揚げています。また,佐賀県呼子付近では,これまでも西行船の居眠り海難が多く発生しています。  釣島水道東口では,来島海峡などを抜けて安心した西行船が,同水道西口では,西口まではまだ時間があると思っていた東行船が乗り揚げています。
 また,この海域では,なぜか499トン型船の居眠りが多くなっています。
 大畠瀬戸東口では,岩国港・広島港からの出港船が,時間的に余裕があることなどから居眠りして屋代島に乗り揚げています。
 平郡水道では,反航船がいないときなどに気が緩んで,居眠りしたケースが多く見られます。
 
居眠りに陥ってから海難が発生するまでの平均時間は, 22.5分で,最も短かったものは1.5分でした。
 また,各船の平均速力は,
10.4ノットで,22.5分間に約4海里(約7km)進んでいる計算になります。
(居眠り地点が明確でないものは,転針予定地点に到達した時刻等から推算しました。)
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