油の本格的な需要期となる冬本番を迎え,油送船の運航が活発になるこの時季に,油送船の事故が多くなる傾向があります。油送船は,私たちの生活に欠かせない重要な役割を担っていますが,ひとたび事故が発生すると,爆発や火災の危険性があるだけでなく,海洋環境に深刻な影響を与える二次災害に繋がるおそれがあります。
 本年7月15日,霧中の熊野灘で発生した『油送船旭洋丸とケミカルタンカー日光丸の衝突事故』では,ベンゼンを積載した旭洋丸が衝突直後に爆発炎上し,乗組員6人が死亡するという重大な結果を招いてしまいました。
 今回は,こうした油送船の悲惨な事故を繰り返さないよう,油送船の衝突海難を取り上げました。
 これから年末に向け,北西風が強吹するなど気象条件が厳しくなる季節になります。油送船に限らず,一般貨物船,旅客船,フェリー,漁船などにおいても,航行や操業の安全確保に細心の注意を払って海難を防止し,この1年を無事故で締めくくりましょう。

理事官2人を香港に派遣

−イスラエル船ジム アジア号乗組員から事情聴取−
 平成17年9月28日02時30分ごろ,北海道納沙布岬沖合の公海上において,サンマ漁船第三新生丸(19トン,8人乗組み)が衝突・転覆し,乗組員7人が死亡するという痛ましい事故が発生しました。
 この事故では,海上保安庁による塗膜片の鑑定結果から,衝突の相手船がイスラエル船籍のコンテナ船ジム アジア号(41,507トン,21人乗組み)であると特定されたことから,海難審判理事所は,10月6日,ジ号の乗組員から事情聴取等を行うため,理事官2人を寄港地の香港に派遣しました。
 理事官は,翌7日,香港で停泊中のジ号船内において,海上保安官とともに,ジ号船長,二等航海士及び操舵手から事情聴取を行いました。また, ジ号の船体検査を行い,左舷船首部の擦過傷などを入念に調査しました。
 
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