(プレジャーボートK丸乗揚事件から)
発生日時、場所: 11年7月5日23時10分 周防灘北部 室積半島東岸
気象、潮汐: 晴、風はなし、上げ潮の中央期
海難の概要

 K丸は、GPSを備えたFRP製プレジャーボートで、5日18時00分船長ほか知人2人を乗せ、魚釣り の目的で、山口県光市光井の船だまりを発し、室積半島南東方に向かった。
 ところで、船長は、新しく購入したK丸で過去2度ばかりGPSプロッタを操作してみたものの、目的地 までの針路を知る方法や表示範囲などについて十分に理解していなかった。
 23時頃釣りを終えて帰港することとなり、GPSプロッタに地図が表示されるようにして26.0ノットの スピードで進行したが、その後GPSプロッタの画面表示範囲を縮小してしまい、縦方向の表示範囲が80メートルとなっていたが、その性能や使用方法などを十分に理解しなかったため、そのままプロッタ画面のみを注視して進行した。
 23時09分同乗者が船長に対して正面に灯台が見えることを告げたが、いずれプロッタに灯台が映ると思い、これに耳を傾けず進行中、再び同乗者が「岩が!!」と叫び、その声でようやく顔を上げ、目前に迫った陸岸を認めて右舵一杯をとったが、原針路のまま赤埼東端に乗り揚げた。
 乗揚の結果、船体は大破して廃棄され、知人2人は、約2箇月間の重傷、船長は大腿骨打撲傷を負った。
海難原因
 本件乗揚は、夜間、釣り場から帰航中、室積半島東岸に接近した際、付近の灯台などを利用しての船位の確認が不十分で、赤埼に向首したまま進行したことによって発生したものである。
船長のGPSプロッタ操作についての理解模様
 船長の証言は次のとおりである。
 「航行中GPSプロッタを使用したのは本件時が3回目で、取扱説明書は必要な部分だけを2ないし3ページ読んだが、当時の表示範囲のことはよく知らなかった。乗揚時の表示範囲を限度一杯に縮小していたが、当時は、何海里の画面になっているのか知らなかった。地図を縮小したら陸地が画面から見えなくなったが、半島が近づけば映るだろうと思った。」
本件から得た教訓

・GPSプロッタに表示させる地図は、概略であり船位の参考とすることができるに過ぎないもので、自船の船位を求めるには必ず海図を使用することとされている。
 このため、船長は、付近の灯台や陸岸の明かりなど適切な方法で船位を十分に確認する必要があった。
・GPSプロッタに限らず、新しい航海計器や機器を購入したときには、その性能や取り扱い方法を十分 に習得してから使用すること。

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