(プレジャーボートH丸転覆事件から)
発生日時、場所: 11年5月16日15時20分 唐津湾
気象、潮汐: 晴、北北西風、下げ潮の末期
海難の概要

 H丸は、最大搭載人員3人の船外機を備えた無甲板のFRP製プレジャーボートで、16日13時30分船長ほか同人の妻と知人1人を乗せ、魚釣りの目的で福岡県糸島郡志摩町の海岸を発し唐津湾筑前ノ一瀬灯標北方に向かった。
 13時35分釣り場に到着して機関を停止し、水深10メートルのところに重さ約3キログラムの錨を錨索 30メートル延出して右舷側中央部前寄りの舷縁上のリングに係止して錨泊した。
 その後15時15分魚が釣れなくなったので帰航することとし、その際、錨が根がかりして揚がらなかったことから、機関の前進力を利用することにし、そのままの状態でスロットルレバーを急速に一杯に回し、全 速力前進にかけて急発進したところ、根がかりした錨が海底から外れず、緊張した錨索によって横引きされる状態となり右舷側に大傾斜し、15時20分復原力を喪失して転覆した。
転覆の結果、船外機に濡損を生じ、船長と同乗者2人は、海中に投げ出され船底につかまっていたところ、 付近を航行中の船舶に救助された。

海難原因

 本件転覆は、揚錨中、機関の前進力を利用して根がかりした錨を揚げるにあたり、揚錨方法が不適切で錨が外れないまま、錨索により横引き状態となって船体が大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。

根がかりした錨の揚錨方法

 機関の前進力を利用して錨を揚げようとする場合、錨が外れないと緊張した錨索により横引きされて、転覆する危険がある。
 適切な揚錨方法としては、船上の錨索の係止位置を船尾に付け替えるなどしたうえ、船首方向を変えながら機関回転数を除々に上げて錨索を引くなど、船体が横引き状態とならないようにすることが必要である。

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