(水上オートバイA丸ボードセーラー負傷事件から)
発生日時、場所: 11年7月25日14時00分 神奈川県鎌倉市由比ヶ浜沖合
気象、潮汐: 晴、南南西風、風力6、上げ潮の末期
海難の概要

 A丸は、2人乗りの水上オートバイで25日13時59分00秒少し過ぎA丸船長のほか友人1人を乗せ、 遊走の目的で由比ヶ浜に設置された水上オートバイ発着水路を発し、沖合海域に向かった。13時59分50秒A丸船長は、同水路中央部付近で速力を時速20キロメートルに上げたとき、同水路出口付近に数人のボードセーラーがセーリングしているのを認めたが、右舷方から接近するボードセーラー及び船首方向からの 波浪に気をとられ、左舷方から接近するYボードセーラーに気付かず進行中、10メートルに迫ったところでようやくこれを認めてハンドルを右一杯にとったが、効なく、14時00分原速力のままYボードセーラー に衝突した。
 また、Yボードセーラーのボードは、全長2.89メートル、幅0.56メートルのFRP製に面積6.5平方メートルのセールを張ったフリーライド型と称するもので、同人が1人で乗り、セーリングの目的で13時30分頃セールボード発着区域から由比ヶ浜沖合に向かった。
 由比ヶ浜で反復セーリングをした後、休息をとるため速力を時速30キロメートルで、セールボード発着 区域に向かったが、同人のセールはマストに沿って幅約30センチメートルにわたって不透明の部分があっ たため、右前方に死角が生じていたが、Yボードセーラーは、進行方向ばかり注視して死角を補う見張りを十分に行っていなかったため、A号に気付かず、原針路、原速力のまま衝突した。
 衝突の結果、A号には損傷がなかったが、Yボードセーラーは、左大腿骨骨折などの重傷を負った。

海難原因

 本件ボードセーラー負傷は、A号が見張り不十分でセーリング中のボードセーラーを避けなかったことに よって発生したが、ボードセーラーが見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

見張りの重要性

 水上オートバイA号船長に対して、水上オートバイ発着用水路を発進して沖合に向かうとき、同水路出口 の沖合には多数のボードセーラーがセーリングしていることを認めているのであるから、右舷方から接近す るボードセーラーの方向や船首方向からの波浪に気をとられるのみではなく、常に周囲の状況について適切な見張りを行う必要があった。
 また、Yボードセーラーに対しても、時速30キロメートルの速力が出るボードを操縦しており、かつ、 マストとラフの影響で死角が生じる状況であったので、死角を補う見張りを行う必要があったとして、本件 発生の一因としている。

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