『重なったヒューマンエラー』 | (旅客船R丸岸壁衝突事件から) | ||
R丸は、旅客船兼自動車渡船で、2人ないし3人でチームを編成して、1日7便の定期航路に就航していた。運航管理者は、運航管理規定で入港前に機関の後進テストを行うことを定めていたが、その励行を徹底していなかった。また、前チーム船長は、右舷機関のクラッチが作動不良となったがすぐ復旧したことを次チームに引き継がなかった。 30日20時00分R丸は、次チーム船長ほか2人が乗り組み、最終の第7便として旅客11人と車両5台を載せ、広島港に向かった。次チーム船長は、着桟予定時刻約4分前に両舷機の主機遠隔操縦ハンドルでクラッチを中立位置にしたが、右舷機のクラッチの操作系統に異常が発生し、前進位置のままとなっていた。その後、次チーム船長は、着桟予定地点前50メートルほどになったとき、微速力後進にかけたが、そのまま桟橋に接近し続け、20時42分、同桟橋付け根の岸壁に4ノットばかりのスピードで衝突した。 海難原因 本件岸壁衝突は、着桟時のクラッチの作動確認が不十分で、右舷主機のクラッチが前進位置となったまま進行したことによって発生したものである。 前チーム船長が次チーム船長に引き継いで注意を喚起しなかったこと、次チーム船長がクラッチの位置を確認しなかったこと、運航管理者が通達事項の励行を徹底していなかったことは、本件発生の原因となる。 事故要因の分析 この事故は、発生に至るまでに未然に防止できる三つの壁があったが、いずれもヒューマンエラーによりその壁が崩され、事故に至ってしまった。 |
|||
![]() |
第一の防壁 (規則遵守の指導を徹底) 運航管理者が、運航管理規定で定められていた入港前に機関の後進テストを行うことが遵守されていないことを把握していなかった。 |
||
![]() |
|||
第二の防壁(ヒヤリ・ハット発生の情報交換の欠如) 前チーム船長が、右舷機関クラッチが作動不良を起こしたこと、及び一時的な処理で復旧したことを、次船長に知らせないまま引き継いだ。 |
|||
![]() |
|||
第三の防壁(規則の遵守) 次チーム船長は、入港前の機関の後進テスト行わなかったこと、及び着岸のため両舷機関を後進にかけた際、クラッチの状態を確認しないまま操船を続けた。 |
|||
![]() |
|||
![]() |
|
||