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委員長記者会見要旨(令和7年12月16日

令和7年12月16日(火)14:00~14:15
国土交通省会見室
李家委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の李家でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況 

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故又は重大インシデントは、航空及び鉄道モード合わせて8件です。

 航空モードは、11月1日にスカイマーク機が、東京国際空港を離陸し、新千歳空港に向けて飛行中、北海道苫小牧市沖付近で被雷し機体を損傷した事故、11月18日に個人所属の小型飛行機が、佐賀空港を離陸後、捜索救難信号の発信があり、その後、福岡県八女市の山中において発見され、搭乗者3名が亡くなられた事故、11月24日に東北エアサービス所属のヘリコプターが、山形県山形市内の場外離着陸場において、吊り下げて運搬していた荷物を降ろす際、地上作業員が荷物と接触して負傷した事故、11月23日に海上保安庁所属の無操縦者航空機が、北九州空港に着陸した際、機体後方のプロペラ及び垂直尾翼が滑走路に接触した重大インシデント、12月11日に北海道エアシステム機が札幌飛行場を離陸して上昇中、右側エンジンが意図せず停止するとともに、左側エンジンの推力も一時的に低下した重大インシデント、12月12日に個人所属の航空機が、新千歳空港に着陸した際、滑走路をオーバーランし、草地で停止した重大インシデントの6件です。

 鉄道モードは、12月11日にJR九州の日豊線、旭ヶ丘駅と南延岡駅の間の第4種踏切道において、走行中の列車と歩行者が衝突し、歩行者が亡くなられた事故、12月12日に秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線、荒瀬駅と萱草駅の間において、走行中の列車が倒木と衝突し、脱線した事故の2件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.委員の異動

 次に、委員の異動についてご報告いたします。

 12月5日をもちまして、鉄道分野の常勤委員を務めた奥村文直委員、航空分野の常勤委員を務めた丸井祐一委員が退任いたしました。

 あわせて、12月6日付で新任の常勤委員として、こちらにおります古川敦氏と堂園正人氏が任命されました。

 古川委員には、鉄道事故等調査に不可欠な分野である鉄道工学に関する豊富な経験と高度な識見を生かし、堂園委員には、航空事故等調査に不可欠な分野である航空機の操縦に関する豊富な経験と高度な識見を生かし、いずれもご活躍いただけるものと期待しています。

 また、現職の非常勤委員であります鈴木美緒委員及び新妻実保子委員は、12月6日付で再任されております。

 さらに、鉄道分野の常勤委員を務めております石田弘明委員は、来週の12月25日をもちまして退任いたします。

 これを受け、12月26日付で、新任の常勤委員として大野寛之氏が任命されることについて、国会の同意が得られております。

3.令和7年に公表した事案の総括

 さて、12月でありますので、この令和7年に調査報告書を公表した事案について、まとめてご説明したいと思います。

 本年1月から11月までの調査報告書の公表件数は、航空が36件、鉄道が10件、船舶の重大案件が9件で、計55件となります。 各モードの主な事案について紹介いたします。

 航空モードでは、令和3年10月に神奈川県秦野市で発生した、個人所属ヘリコプターの墜落事故がございました。

 この事故について本年1月に公表した調査報告書では、飛行記録装置が搭載されておらず、客観的なデータの入手が困難な中、機内に設置されていたGoProと呼ばれるビデオカメラのデータ、映像及び音声を詳細に解析することで、事故当時の状況を明らかにし、原因を究明いたしました。

 このような解析手法は、当委員会として初めてのことでありました。

 鉄道モードでは、令和6年10月に発生した、いすみ鉄道いすみ線での列車脱線事故がございました。

 この事故について本年10月に公表した調査報告書では、軌間の拡大が脱線の原因であったことを明らかにし、適切な軌道変位の管理・補修を行うことのできる体制の構築、PCまくらぎ化等を早期に実施できる計画の策定について、いすみ鉄道に勧告を行いました。

 船舶モードでは、令和3年5月に瀬戸内海の来島海峡西口付近で発生した、ロールオン・ロールオフ貨物船 白虎とマーシャル諸島共和国籍のケミカルタンカーULSAN PIONEERの衝突事故がございました。本事故では、白虎が沈没し、乗組員3名が亡くなられました。

 この事故について本年10月に公表した調査報告書では、事故の原因を明らかにするとともに、再発防止策として、船舶間での効果的なコミュニケーション、狭い水道等を航行する際の準備を適切に行うことなどを提言しました。

 当委員会の各地方事務所における調査案件につきましては、合計558件の船舶事故等の調査報告書を公表いたしました。

 一例を申し上げますと、那覇事務所が調査を行った、令和6年3月に沖縄県の石垣島沖で発生したダイビング船の転覆事故がございます。

 この事故については本年4月に調査報告書を公表し、船内に海水が流入した際、船体側面のスカッパーという排水口を閉鎖せずに航行していたことが原因であったことから、この点を注意喚起するリーフレットを作成し、ダイビング船事業者に再発防止の呼び掛けを行いました。

 いずれの事案につきましても、調査報告書としてまとめた結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じて同種の事故等を防止していただきたいと考えています。

 本日私からは以上です。何かご質問があればお受けします。

4.質疑応答

(海上保安庁無操縦者航空機重大インシデント関連)

問: 海上保安庁の無操縦者航空機が11月23日に機体を損傷した重大インシデントについて調査をしているところだと思います。海上保安庁は、所有する3機の無人機の運用を停止している状況ですが、運輸安全委員会の調査の進捗はいかがでしょうか。
答: 本件については、北九州空港に調査官2名を派遣して、発生現場の確認、機体の確認、口述聴取等の情報収集を進めております。それらを基にしっかりと調査・分析を進め、原因の究明と同様な事案の再発防止に向けて調査報告書を公表できるよう努めているところです。
問: 運輸安全委員会として、無人機の運用について、停止や運航してよいなどということを海上保安庁側には言っていないということでしょうか。
答: 運輸安全委員会から海上保安庁に対し、無操縦者航空機の運用を停止するべきといったことは申し上げておりません。

(JAL機/海保機衝突事故関連)

問: 前回の繰り返しとなり恐縮ですが、昨年1月に羽田空港で発生した衝突事故については調査中となっていますが、来月には事故から2年となります。改めて現在の調査の進捗と、2年を迎えるに当たって委員長からコメントがあればお聞かせください。
答: 本事故に関しては、昨年の12月に出された経過報告でお示しした方向性に沿って、調査・分析を進めているところです。先月も申し上げましたが、海保機と日本航空機、それから管制や事故後の非常脱出、消火活動など多岐に亘る事項が関与していますので、それに関する調査・分析を進めているところで、調査報告書の公表時期等についてはお答えすることはできません。
問: 一部で再現実験を行ったとの報道がありましたが、これについての事実関係はいかがでしょうか。また、最終報告書の公表前に意見聴取会を実施する予定はありますでしょうか。
答: 再現実験について報道があったことは承知しておりますが、先程申し上げたとおり、経過報告でお示しした方向性に沿って調査・分析を進めているところですので、具体的な調査の内容についてはお答えを差し控えさせていただきます。
   また、意見聴取会ですが、本事故については、運輸安全委員会設置法第24条第3項に基づき、意見聴取会を開き、関係者又は学識経験のある方々から意見を聴くことを想定しております。ただ、具体的な開催時期等については、現時点では決まっておりません。
問: 意見聴取会は開くが時期は決まっていないということかと思いますが、実施を決めているのはどのような理由からでしょうか。
答: 今申し上げました運輸安全委員会設置法第24条第3項は、旅客を運送する航空運送事業の用に供する航空機の事故であって一般的関心を有するものについては、意見聴取会を開くという規定です。これに基づいて、本事故については意見聴取会を開くことを想定しているところです。

資料

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