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委員長記者会見要旨(令和7年8月26日

令和7年8月26日(火)14:00~14:14
国土交通省会見室
李家委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の李家でございます。
 ただいまより、8月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況 

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故又は重大インシデントは、航空、鉄道及び船舶モード合わせて5件です。

 航空モードは、3月12日に航空大学校所属の小型飛行機が、仙台空港において連続離着陸訓練中、鳥と衝突し、機体が損傷した事故。本事故は8月1日に通報を受けたものです。8月13日に海上保安庁所属の小型飛行機が、能登空港において連続離着陸訓練中、プロペラが滑走路に接触した重大インシデント、8月20日にANAウイングス機が、稚内空港において、作業車両が走行中の滑走路へ着陸のため進入した重大インシデントの3件です。

 鉄道モードは、8月13日にJR九州の佐世保線、上有田(かみありた)駅と有田(ありた)駅の間の第3種踏切道において、走行中の列車と歩行者が衝突し、歩行者が亡くなられた踏切障害事故の1件です。

 船舶モードは、8月4日に、山口県下松市(くだまつし)の岸壁に係留中の韓国籍の貨物船KEUM YANG 3(クム ヤン スリー)において、乗組員1名が貨物倉(かもつそう)のハッチカバーに挟まれ、亡くなられた事故の1件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

 本日私からは以上です。何かご質問があればお受けします。

2.質疑応答

(日航機墜落事故関連)

問: 今月の12日で日航機の墜落事故から40年となりました。改めて、国の運輸安全を守るトップとして所感・受け止めをお伺いします。
答: 日本航空123便の墜落事故は、乗員・乗客520名の尊い命が失われた大変痛ましい事故でありました。改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。
   先月も会見で申し上げましたが、4月に就任してから、御巣鷹の尾根に登らせていただきました。御巣鷹山の麓には、ご存じのように慰霊の園という追悼施設があるのですが、そこで拝見した当時の上野村村長の発言録が心に残っております。その内容は、ひとたび航空機事故が起きると、最も影響を受けるのは事故の被害者とそのご遺族であり、航空機の設計・製造から整備・点検、運航に関わる全ての人は、常にそのことを考えて業務を行っていく必要がある、といった趣旨のご発言で、ビデオも流れていましたし、掲示もされていました。
   私は、この3月まで大学で航空学について教鞭をとっていたこともあり、航空の各分野に携わろうとする若者にこのような心構えを認識していただきたいと思いましたし、私ども運輸安全委員会としましても、事故原因の調査に加えて、被害軽減と再発防止にしっかりと寄与できるよう、努力をしていかなければならないと改めて思いを強くいたしたところです。
問: 123便の事故に関連して、アメリカのFAAのホームページで、日本の当時の報告書にはないようなことについて言及していることが一部報道で発覚しましたが、これについて運輸安全委員会で報告書に書き足すとか、再調査するとか、何か対応される予定はありますでしょうか。
答: お尋ねのような報道があることは承知しております。また、アメリカの連邦航空局(FAA)のホームページにそのような記載があることも確認しておりますけれども、それに関しては、123便の機体の後部圧力隔壁の修理が誤った方法で行われた理由の一部が記載されているものであり、当委員会といたしましては、当時の調査報告書で明らかになった事故原因と異なるものではないと認識しております。そして、国際民間航空条約上、事故調査が再開されるのは、行方不明の航空機が見つかった場合などの新しく、かつ、重大な証拠を入手した場合とされておりますので、今回のホームページに記載されている内容はこの要件に当たらないと考えております。

(いすみ鉄道脱線事故関連)

問: いすみ鉄道の事故について、報告書案が審議中になっていますけれども、これはいつ頃に公表できる見通しでしょうか。
答: 今まさに審議を行っているところですので、いつ公表できるかということは、今の段階でお答えできる状況ではございません。

(東京メトロ副都心線事案関連)

問: 7月28日に東京メトロの副都心線の東新宿駅でポイント割り出しという事故が起きています。東京メトロの発表を聞いていましても、人為的なミスが複雑に絡み合って起きた事故で、しかも、列車指令と運転士が列車番号と列車種別を取り違えて互いに行っていたというのは、非常に大きな問題ではないかと思います。東京メトロでも重い事故だと発信されておりました。これは、おそらく他の鉄道事業者にとっても教訓となるようなことが色々とあるのではないかと思うのですが、この事故について調べられるお考えはございますか。
答: お尋ねの事案は、現在のところ調査対象となっておりませんので、調査の予定はございません。
問: 調査予定がないというのは、どういう判断からでしょうか。
答: 運輸安全委員会の調査対象につきましては、運輸安全委員会設置法施行規則において対象範囲が明記されておりますので、それに該当しないということになります。
問: その規則の中でも、特異な事案というのが確か含まれていたと思うのですが、それにも当たらないという判断でしょうか。
答: 今のところそのような判断にはないということでございます。
問: それは、色々と情報収集をしてそういう判断をされているという理解でしょうか。
答: 当委員会に事故という形で通報等はございませんので、今のところ調査対象ではないと考えております。
問: 結局、通報がないから調べないということですね。
答: そういった対象になっていないということです。

(ANAウイングス重大インシデント関連)

問: 冒頭でご紹介いただいたANAウイングスの重大インシデントがありましたが、振り返ると、ANAウイングスでは昨年も数件あり、若干同じ会社に偏っているかなという傾向を感じています。運輸安全委員会で事故原因ではないものを言うのは立場上難しいとは思うのですが、重大インシデントが続いているということは、先ほど委員長のお話にもあったように、安全をより堅持していくという意味では、このまま放置していいとも言い切れないところがあると思うのですが、委員長のご所見をいただければと思います。
答: ただいま例示いただいたような航空機関係でも、色々な事故等が発生しておりますけれども、我々といたしましては、現在調査中の事故等について、原因究明と同種事故の再発防止に向けてしっかりと調査を行って、できるだけ早期に調査報告書を公表できるように努めて参ります。
   さらに、その調査の結果、仮に安全に関わるようなことが明らかになり、周知した方が良いようなことが見受けられましたら、それに応じて必要な対応を取ることがあります。
   例えば、過去にもありましたが、報告書が仕上がる前の段階でも、情報提供ということで、安全に関わるようなことを周知するという方法が考えられます。

資料

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