委員長記者会見要旨(令和7年4月22日)
令和7年4月22日(火)14:00~14:15
国土交通省会見室
李家委員長
発言要旨
このたび、運輸安全委員会委員長を拝命いたしました李家でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。
1.事故等調査の進捗状況
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故又は重大インシデントは、航空及び鉄道モード合わせて9件です。
航空モードは、3月15日に東北エアサービス所属のヘリコプターが、宮城県柴田郡川崎町の建設現場において、荷下ろしのため降下中、地上の作業員がダウンウォッシュを受け、崖から転落して負傷した事故、3月30日に個人所属の小型飛行機が、長崎県上五島空港において連続離着陸の訓練中、付近の茂みに突っ込み、機体を大破した事故、4月6日にエス・ジー・シー佐賀航空が運航するヘリコプターが、対馬空港から福岡市内の病院に向けて飛行中、海上に不時着水した事故がありました。この事故は、医療搬送中の患者様を含む3名がお亡くなりになるという痛ましい事故でございました。この事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。
続いて、4月12日に個人所属の動力滑空機が、北海道北見地区農道離着陸場に着陸した際、機体を損傷した事故、4月4日に大分県防災航空隊所属のヘリコプターが、大分県稲葉ダム湖で訓練飛行中、つり下げていた水の入ったバケットが落下した重大インシデント、4月11日に個人所属の小型飛行機が、岡山県の岡南(こうなん)飛行場に着陸した際、プロペラが滑走路に接触した重大インシデント、4月13日に個人所属の小型飛行機が、中部国際空港に着陸した際、滑走路を逸脱した重大インシデント、これら7件であり、いわゆる小型航空機に関する事故・重大インシデントが、目立って発生している状況です。
鉄道モードは、3月25日に熊本市交通局の熊本城・市役所前停留場において、停車中の車両に後続の車両が追突した事故、4月8日にJR北海道の宗谷線、天塩中川(てしおなかがわ)駅と問寒別(といかんべつ)駅の間において、走行中の列車が脱線した事故の2件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
2.安全啓発資料の公表
次に、横浜事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧ください。
横浜事務所の管轄区域である駿河湾及び相模湾は、マリンレジャーを楽しめるスポットが点在していることもあって、プレジャーボートの事故等が多くなっています。
横浜事務所がこれまでの約16年間に調査を行ったプレジャーボートの事故等を見ると、駿河湾では「船舶同士の衝突」と「機関故障などによる運航不能」が、相模湾では「転覆・浸水・沈没」と「落水等による死傷事故」がそれぞれ目立っています。このような傾向と具体的な事故事例を紹介するとともに、同種事故を防止するための教訓、ポイントを取りまとめて公表いたします。
駿河湾・相模湾でプレジャーボートを運航される方々には、周囲の漁船などの動向に注意し、また、出航前に操船予定海域の状況をしっかりと把握するなどして事故の防止に努めていただきたいと思います。他の海域を航行される方も、当委員会の「船舶事故ハザードマップ」を活用して事故防止に役立てていただきたいと思っています。
本資料は、マリーナ、関係団体、行政機関などに配布するとともに、出前講座などにも活用して周知してまいります。また、当委員会のホームページに掲載するほか、当委員会の公式X(エックス)でも動画付きで紹介する予定です。
本日私からは以上です。何かご質問があればお受けします。
3.質疑応答
(委員長就任関連)
問: 今回は委員長に就任されてから初めての定例会見ということでもありますので、まずは航空、鉄道、船舶事故の調査、原因究明及び再発防止を提言する3条委員会のトップとして、どのような分野やテーマに力点を置こうとお考えなのか、委員長のお考えや抱負などをお聞かせください。
答: 運輸安全委員会は、航空、鉄道及び船舶の事故等の調査を適確に行い、その結果に基づいて事故等の防止、被害の軽減に必要な提言を行うことを任務としております。公正中立の立場から、日本の運輸の安全を守る重要な組織であり、その委員長としての責任の重さをひしひしと感じております。
運輸安全委員会では、これまで、科学的・客観的な調査・解析の実施、わかりやすく、かつ、迅速な調査報告書の作成、適時適切な情報発信、事故調査における国際連携の強化といった取組を進めてきていると承知しております。
私といたしましても、このような取組を引き続き進めて、皆様に信頼していただける組織であり続けられるよう、努力してまいりたいと考えております。
(知床半島沖旅客船沈没事故・JR福知山線脱線事故関係)
問: 明日4月23日は、北海道知床沖で発生した観光船沈没事故から3年になります。また、4月25日は、尼崎市のJR福知山線脱線事故から20年という節目になります。船舶モード、鉄道モードそれぞれ分野は異なりますが、これら2つの重大事故の教訓として、船の安全や鉄道輸送の安全というのは何が変わり、どう変わっていないのか、この辺りについて委員長のお考えをお聞かせください。
答: まず、KAZUⅠの事故、JR福知山線の事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様にお悔やみを申し上げます。
旅客船KAZUⅠの事故では、令和4年12月15日に国土交通大臣に対して、2つの点、小型旅客船の船首開口部の点検及び避難港の活用等について、事業者に周知し、指導すること、小型旅客船の隔壁の水密化について検討することを意見として述べました。
これを受けて、国土交通省において、小型旅客船の事業者に対し周知及び指導が行われ、あわせて、隔壁の水密化等に関する省令改正が行われました。
このほか、国土交通省では、知床遊覧船事故対策検討委員会が取りまとめた安全対策について、引き続き対策が実施されているものと承知しております。
JR福知山線の事故については、当時の航空・鉄道事故調査委員会が平成17年9月6日と調査報告書公表時の平成19年6月28日に、国土交通大臣に対して建議を行いました。
これを受けて、国土交通省は、平成18年7月に自動列車停止装置等の設置を義務づけたほか、平成18年10月に関係法律を改正し、安全の確保に取り組まれていると承知しております。
いずれの事故におきましても、当委員会の建議、意見に沿った措置がとられていると認識しております。
当委員会としましては、このような事故が二度と繰り返されることのないよう、事故調査をしっかりと行ってまいります。
(JR貨物脱線事故・東北新幹線列車分離関連)
問: 繰り返しこの記者会見の中でも伺っていますが、輪軸の問題の発端になった新山口駅の事故、それから、東北新幹線の連結分離のことで、何か調査で新しく分かったことはありますでしょうか。
答: 山陽線新山口駅でのJR貨物脱線事故につきましては、車軸折損のメカニズムに関する分析を行うため、専門委員2名を加えて調査を行っております。
調査の内容についてはお答えできませんが、できるだけ早期に調査報告書を公表できるよう調査・分析を進めてまいります。
東北新幹線の列車分離に関しましては、現在、車両の詳細な調査などの情報収集を進めているところです。
こちらに関しましても、調査の内容についてはお答えできませんが、できるだけ早期に調査報告書を公表できるよう調査・分析を進めてまいります。
問: 昨年9月の前委員長の記者会見の中で、報告書がまとまる前であっても、他の事業者に波及することについては、情報発信を行っていくという発言がありましたが、そういう認識でよろしいでしょうか。
答: 今のお話は、調査報告書が出るまで何も出さないのかということかと思いますが、一般論としましては、調査の過程において、事故等の防止及び被害の軽減のために有益な情報が認められた場合には、関係行政機関へ情報提供を行うことはありえます。
前委員長の会見でもそういうことはおっしゃっていたと認識しております。
問: 会見でのやりとりで、前委員長ご自身がおっしゃったことですが、会見の中でもそういった情報発信は行っていくという理解でいいわけですよね。
答: 内容に応じてということになります。
(医療搬送ヘリ事故関連)
問: 佐賀航空の不時着水の死亡事故について、言える範囲で現在分かっていることと、今後の調査予定などを伺えればと思います。
答: 本事故につきましては、2名の航空事故調査官を現地に派遣し、関係者の口述聴取や機体の確認などの情報収集を進めております。
これまでに、搭乗者及び運航管理者からの口述聴取と陸揚げされた機体の調査を行い、機体は、メインローターブレード全4本の損壊や操縦席前方及び客室右側の窓の破損などが確認されました。
今後ともしっかり調査・分析を進め、事故原因の究明と再発防止に向け、できるだけ早期に調査報告書を公表できるよう努めてまいります。詳細については事務局にお尋ねいただければと思います。
資料