委員長記者会見要旨(令和7年1月28日)
令和7年1月28日(火)14:00~14:18
国土交通省会見室
武田委員長
発言要旨
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。
1.事故等調査の進捗状況
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故は、船舶モードの1件で、1月6日に茨城県鹿島港東方沖で漁船第八大濵丸(おおはままる)が転覆し、乗組員2名が亡くなられ、3名が行方不明となっている事故です。
運輸安全委員会は、本事案について事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
2.意見に基づく対応
次に、意見に基づく対応についてご報告します。お手元の資料2をご覧ください。
当委員会は、旅客船KAZUⅠの事故に関し、国土交通大臣に対して、小型旅客船の船首甲板開口部の点検及び避難港の活用等について事業者に周知し指導すること、安全性を更に高める観点から、小型旅客船の隔壁の水密化に関し検討すること、この2点を意見として述べたところです。
これを受け、国土交通省において、小型旅客船の事業者に対し周知及び指導を実施し、あわせて、隔壁の水密化等に関する省令改正が行われました。
今回の国土交通省による対応は、当委員会の意見に沿ったものであると考えており、今後の事故防止と安全性向上に繋がるものと期待しております。
3.年頭所感
本日は、令和7年最初の記者会見ですので、昨年1年間の調査の状況と、年頭の所感を述べさせていただきます。
昨年、当委員会の調査対象となった事故等の件数は、航空モードが35件、鉄道モードが15件、船舶モードの重大案件が9件で、各モード合わせて59件でした。また、地方事務所が取り扱った船舶事故等は695件でした。
このうち、昨年の1月2日に羽田空港で発生した日本航空機と海上保安庁機の衝突事故につきましては、先月12月25日に経過報告を公表いたしました。
当委員会は、この事案を含め、いずれの事故等についても調査・分析等を進めており、できるだけ早期に報告書を公表し、再発防止につなげていく所存です。
また、当委員会は調査能力の向上に常に努めておりますが、本年は、特に、定量的な分析・解析能力の更なる向上を図っていく所存です。具体的には、現場の状況や関係物件の形状を精密なデータで取得できる3Dレーザースキャナー、現場の地形や残骸状況を広範囲で撮影できるドローン、これらをはじめとした最新技術を、モード横断的に駆使して、より精密な分析・解析を進めてまいります。
一昨年ほど前からこういった取組は進めてまいりましたが、一層進めて行くということです。最初にKAZUⅠの事故で船体を精密に測りましたが、最近では踏切や船舶の形状などを精密に測ることを進めており、その結果は調査報告書にも記載しております。精密なデータを得ることによって定量化につながっていると思っています。
また、事故調査における国際的な連携、世界の中での日本の貢献に関しましては、毎年開催される国際運輸安全連合(ITSA)の委員長級会合のほか、モードごとにも調査官の会議がございます。特に、各国の鉄道事故調査官等が集う「国際鉄道事故調査フォーラム(RAIIF、ライーフ)」を日本が主導して立ち上げ、その第1回を昨年秋に東京で開催したことは、大きな成果であったと考えております。今年は台湾で第2回が開催されることになっておりますので、このフォーラムの更なる発展に引き続き貢献していきたいと考えております。
本年も、事故等の調査を通じた運輸の安全性の向上に向けて、力強く取り組んでまいりたいと思います。
本日私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
4.質疑応答
(JAL機/海保機衝突事故関連)
問: 羽田の衝突事故について昨年12月に経過報告を公表されましたが、改めて委員長の所感、最終報告の目処、また、最終報告ではどのような点を重視して分析されるのかの3点についてお伺いします。
答: 昨年の1月2日に羽田空港で発生しました日本航空機と海上保安庁機の衝突事故に関して、昨年末に経過報告を行い、事故に関与した可能性のある多くの事実情報に加えて、今後の調査・分析の方向性を公表いたしましたので、それを丹念に行っていく、ということになります。
経過報告の事実情報は、安全に関わる情報として、現段階で公表することとしたものです。多くの航空関係者がこれらの情報に触れ、航空安全の向上に向けた取組に役立てていただくことを期待しております。
調査報告書につきましては、今お話した方向性に沿って分析を進め、できるだけ早期に公表したいと考えております。
(意見に基づく対応関連)
問: KAZUⅠの意見に基づく対応について、資料1ページ目の①(2)の避難港の活用については、国土交通省が事業者に通知を出したという理解でよろしいでしょうか。
答: 国土交通省から避難港の存在や活用を確認するなどの指導をしていただいております。
(年頭所感関連)
問: 年頭所感でお話のあった3Dレーザースキャナーについて、最初にKAZUⅠに使ったことで定量的な報告書につながったということですが、改めてどのように役立ったのかお聞かせください。
答: KAZUⅠ号は、最初は瀬戸内海で使われていて、知床に導入するときに改造され、正確な図面がない状況でした。そのような状況で、3Dレーザースキャナーを用いることで、船体の外側、内側の形状をモデル化できるようになりました。そうすると、水が入る体積がどのぐらいあって、傾きがどうなったらどのぐらい水が入るといったモデルができます。そうすると様々な計算が格段に進み、どの角度で水が入ればどのぐらいの量の水が入って傾くであろうといった定量的な計算ができるようになります。これはとても重要で、一般的にはデジタルツインとも言いますが、実際の物に対して計算のモデルをデジタルで正確に作ることによって定量的な解析ができるということです。特に大型の船舶では重要ですし、鉄道でも特に第4種踏切には様々な形状があり、最近の報告書を見ていただくと分かると思いますが、地方の踏切は道路面より少し高い位置にあることが多く、それによって見通しの範囲が記載の数値と変わる場合もあり、そのようなこともモデル化することで分かります。我々がそういうデジタルなものを持っていることによって、初動の調査での関係者への聞き方も随分変わってくるということもありまして、定量的な手法を我々が持っているというのはとても重要なことでございます。
問: KAZUⅠの調査で3D映像を使っていなかったら、結構時間がかかってしまったり、経過報告で詳しい内容を出せなかったりといったことも考えられたのでしょうか。
答: むしろ定量的に把握できているので、ある程度自信を持ってこうではなかったかと言えるようになったということの方が重要だと思っています。
問: 3Dの解析モデルは航空に関してももちろん使われていると思いますが、海外でもこういうことは一般的なのか、それともJTSBがリードしていくような形になるのか、国際連携という部分も含めて教えていただきたいと思います。
答: 全ての国について知っているわけではありませんが、解析に関しまして、台湾は我々より少し前から頑張っておられて、列車とトラックが衝突した事故ではかなり精密に解析をしております。我々はそれも参考にしますし、使い方で学ぶ部分もありますので、各国と情報を共有し、お互いに能力を高めようとしております。
問: 確認ですが、羽田の事故ではまだ使っていなかったという認識でよろしいでしょうか。
答: はい。羽田の事故では使っておりません。
問: 今後の事故ではそういうこともありますか。
答: あり得ます。羽田の事故では機体が壊れてしまったので使いませんでしたが、小型機の事故では使ってきております。
資料