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委員長記者会見要旨(令和6年12月17日

令和6年12月17日(火)14:00~14:27
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況 

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空及び鉄道モード合わせて3件ございます。

 航空モードは、11月28日に新千歳空港において、スプリングジャパンの貨物機が着陸許可を受けて進入中の滑走路に、工事車両が進入した重大インシデントの1件です。

 鉄道モードは、12月10日に静岡県浜松市のJR東海道線 高塚駅構内において、走行中の貨物列車が作業中の保守係員に接触し、同係員が死亡した事故、12月12日に鹿児島県薩摩川内市のJR鹿児島線 川内駅構内において、貨物列車が脱線した事故の2件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧いただければと思います。

2.安全啓発資料の公表 

 次に、安全啓発資料としまして、運輸安全委員会ダイジェスト第47号「滑走路等への接触事故の防止に向けて~規則を遵守し、基本に忠実に~」を本日公表しましたので、報告いたします。お手元の資料2をご覧ください。

 2ページの図3をご覧ください。令和5年までに発生した航空事故等の事故等種別の内訳を見ると、過去10年、過去20年のいずれにおいても 「離着陸時における滑走路又は着陸帯への接触」に分類されるものが最も多くなっています。このことから、滑走路等への接触事故に着目し、これらの再発防止に向けてのポイントなどをまとめております。

 6ページ以降では、事故等の関与要因を「操縦操作」、「安全管理」、「気象」、「規程」、「機体整備」の5つに分類したうえで、それぞれの報告書で述べられている再発防止策の中から、特に運航者の皆様にお伝えしたい内容を抽出し、提示しています。

 例えば「操縦操作」については、横風に対応した操作が不十分であった事例や、着陸をやり直す判断が遅れたなどの事例があります。これらは、日頃から意識的に訓練し準備することで、防止できた可能性があります。

 また、「安全管理」については、訓練飛行における判断基準が不明確であった、規則を守っていなかった、訓練飛行以外でも、搭乗者の役割分担が不明確であったなど、組織的な安全管理体制が不足していたことに起因する事例が見られます。

 特に事故が多く発生している小型機や滑空機の運航に携わる皆様におかれましては、初心を忘れず規則や基準を遵守し、基本に忠実な対応に努めるとともに、本資料を活用していただくことにより、安全運航への取組みを更に進めていただくことを期待しております。

 本資料は、個人が所属する航空関係団体、操縦訓練の課程を有する大学等の組織団体、航空運送事業者、航空機使用事業者等に配布し、安全指導などの際に周知・活用していただく予定です。

 また、当委員会の出前講座などにも活用するほか、当委員会のホームページに掲載し、公式X(エックス)でも動画付きで紹介する予定です。

3.令和6年に公表した事案の総括 

 さて、12月でありますので、この令和6年に事故調査結果を公表した事案について、まとめて説明申し上げたいと思います。

 本年1月から11月までの最終事故調査報告書の公表件数は、航空が21件、鉄道が10件、船舶の重大案件が12件で、計43件となります。

 各モードの主な事案について紹介いたします。

 航空モードでは、ドローンの事故が令和4年12月に当委員会の調査対象となりまして、初めての事故調査となった負傷事故が、令和5年7月に大分県で発生しました。この調査報告書を本年8月に公表いたしました。

 また、パイロットが乗らない無操縦者航空機、こちらについても初めての事故が、令和5年6月に発生しました。

 これは、沖縄県下地島空港付近で無操縦者航空機の通信が途絶えて海上に着水して大破したもので、調査報告書を本年9月に公表いたしました。

 鉄道モードでは、令和4年3月の福島県沖地震に伴って発生した東北新幹線の列車脱線事故がございました。

 これは、全17両中16両が脱線し、地震による新幹線の脱線で初めて乗客が負傷した事故です。

 この事故について本年3月に公表した報告書では、脱線のメカニズムを解明するために台車の実物に地震を模擬する震動を与える実験などを行って原因を明らかにするとともに、同種事故防止のために脱線・逸脱防止策の更なる高機能化が必要である旨を提言しました。

 船舶モードでは、令和5年3月に京都府の保津川において発生した旅客船9号転覆事故がございました。

 これは、川下り中の船が岩場に乗り揚げて転覆し、船頭2名が亡くなられた事故です。

 この事故について本年9月に公表した報告書では、事故の原因を明らかにするとともに、再発防止策として、川下り船における船頭等の落水防止、救命胴衣着用の徹底、通信・連絡手段の確保、操船技量の維持向上などを提言しました。

 当委員会の各地方事務所における調査案件につきましては、合計733件の船舶事故等の調査報告書を公表いたしました。

 一例を申し上げますと、横浜事務所が調査を行った、令和5年4月1日に三重県の鳥羽港で発生した漁船海幸丸浸水事故がございます。

 本事故につきましては、水産庁長官に対し、プロペラ点検口窓を開放して作業を行う際の注意点や適切な整備などについて周知するよう、意見を述べました。

 いずれの事案につきましても、報告書としてまとめた調査結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じて同種の事故等を防止していただきたいと考えています。

 本日私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(JAL機/海保機衝突事故関連)

問: 羽田の航空機衝突事故の経過報告ですが、先月までのやりとりでは今年中に経過報告が出ると理解していますが、現時点では公表されていません。先月から今月までの間に認識なり状況が変わったということはありますでしょうか。
答: 先月の会見でも、「なんとか12月中に経過報告を行いたい」と申し上げたと思いますけれども、それは現在も変わりません。まとまり次第、12月中に公表したいと思っております。
問: 特段外形的な状況が変化して難しくなったとか、そういう段階ではないということしょうか。
答: そういうことではございません。
問: 過去の経過報告は薄いものもあればそれなりの分量があるものもあると思うのですが、今回はどのぐらいのものとして把握すればいいのか教えてください。
答: 前回も申し上げましたが、事実情報はできる限り入れると。その後、分析、再発防止策とつながるわけですが、それにつながるものはできる限りで入れるということですので、それなりのボリュームにはなると思います。
問: 事故後の最初の会見でおっしゃっていたように、炭素繊維の素材という部分も結構注目されているかと思うのですが、このあたりを分析されるとして、その意義と言いますか、そこから見えてくるものを、我々はどう捉えればよいか改めてお願いします。
答: 最初の頃、私の専門に近いこともあって、炭素繊維複合材ということを言いましたが、それに限らず緊急脱出をしたわけですから、被害軽減という部分も当然あるわけで、衝突に関する事実情報、それから被害軽減のための事実情報というものがあります。
問: 事実情報はできるだけ入れるということですが、現時点の事実情報についての一定の原因分析や、現時点で分かったことから言える暫定的な改善提言などは含まれないのでしょうか。
答: そこまでは分析しきっておりませんので、今言えることは、先ほど申しましたように、事実情報をできるだけお示しするということです。
問: 確認ですが、その事実情報の中に衝突した2機の航空機のボイスレコーダー、フライトレコーダーの中身の何らかの公表というものも含まれるということでしょうか。
答: 繰り返しになりますが、公表できる事実情報について公表するということでございます。その事実情報の一部として、ボイスレコーダーやフライトレコーダーの記録についても経過報告の中に含まれることはあり得ますが、具体的な内容については、今日はお答えできません。
問: 事故が起きた時に、国土交通省は飛行場管制の管制記録は公表しました。グラウンド管制と呼ばれるその前段の管制記録は公表されていないのですが、それは今回の経過報告に含まれるのかということと、そもそもその管制記録というのは、以前の委員長の会見でおっしゃっていたかと思うのですが、事故調査以外で公表できるものではないのでしょうか。管制記録の性質を教えていただけたらと思います。
答: 先ほども申し上げたように、公表できる事実情報につきまして、ご質問のような情報も、事故に関係する事実情報として我々が判断した場合には経過報告の中に含まれていくことになります。ただ、具体的内容については、今日はお話しできないということでございます。管制記録の性質につきましては、一般的には事故が発生した場合などに必要に応じて出されるものと思っておりますが、どちらかというと、航空局の方で担当されている情報の取扱いになると思いますので、それ以上のことは申し上げられません。
問: 経過報告は12月中ということですが、なかなかそこだけでは拾い切れない情報が多々あると思います。その後の報告書について、現時点でのスケジュールをどのような感じでお考えなのか教えていただけますでしょうか。
答: それをはっきり申し上げることは今のところできません。分析も行いつつありますが、公表できるレベルではありませんので、いつということは申し上げられません。ただ、社会的関心も強い事故でございますので、なるべく早い機会に分析をして、すぐに社会に伝えるべきものがあれば、途中の段階でも情報提供などを行うことはあり得ますので、なるべく早く行うよう努力しています。
問: 知床の事故では経過報告の後に意見聴取会を行って報告書が公表されるという流れでしたが、羽田の事故に関しても、まだ経過報告が出ていない状況でお聞きするのも時期尚早とは思いますが、意見聴取会の開催について委員長ご自身の見解はいかがでしょうか。
答: それに関しては、この場で述べる段階ではないので、差し控えたいと思います。
問: そういう観点の検討を内部的には行っているのでしょうか。それとも、まだそういうことについては一切考えるべき状況ではないという意味なのかお答えいただけますか。
答: そういう意味では、事実情報の確認がまず必要で、それをできる限り行っている段階ですので、その分析していく過程でどうなっていくかというのを今予測するのは難しいと思いますので、意見聴取会を行うかどうかについてコメントできないということでございます。

(貨物列車脱線事故関連)

問: 鉄道のことでお伺いしたいのですが、昨今脱線事故が相次いでおり、国民も特に線路補修について不安が高まっているのではないかと思います。運輸安全委員会の調査も進んでいて、原因も究明されるとは思いますが、交通の安全を守る要である委員会の委員長として、どのようにお考えでしょうか。
答: 脱線事故が続いているということで、例を挙げますと、最近では山陽線の新山口での事故、函館線の事故、今日お話しした鹿児島線の川内駅での事故がございます。いずれの事故につきましても、運行するJR貨物や線路を管理する鉄道事業者それぞれについて調査を行っている段階で内容を精査しなければなりません。収集した情報の精査、分析を進めてなるべく早く調査報告書を公表できるように努めてまいりたいと思います。その中で共通したことが分かるのであれば、早めにその情報を出したいと思っています。
問: 先月の記者会見で、新山口駅の事故について専門委員が任命され、金属疲労の専門家であるという話があったと思いますが、新山口駅で事故を起こした機関車EF210-341号機というのは製造されてから丸2年で事故を起こしている。2年で金属疲労がもし起きるならば、非常に深刻ではないかと素人ながらに感じるのですが、その辺は特にこういう問題があるということが分かり次第、情報提供していただけるわけですね。
答: その辺はポイントであると思っておりまして、専門委員の方に検討を行っていただいています。我々は、どうしてそれが起きたのかというメカニズムを、必ずしも金属疲労でないかもしれませんし、それは今の段階では分かっておりませんが、メカニズムを丁寧に事実情報から解析していく必要があります。そのために1人は金属疲労をずっとやってこられた専門家、もう1人はそのメカニズムの解析の専門家、2人の方にお願いしているわけで、そこは我々も重要視しているところでございます。
問: 新山口の脱線では、1つの注目点は金属疲労があったのかどうかということと、あったとしたら起点、疲労亀裂の出発点がどこだったのかということかと想像しています。まだ1年は経っていませんが、輪軸の不正など社会的な背景を考えると、なるべく早く公表すべきと思っていますがその点いかがでしょうか。普遍性のあることなのか別の話なのかということも含めて、もう少し早くできないかと個人的に思うのですが、どのように進めていくのか委員長のお考えをお願いします。
答: 我々としましては、あくまでメカニズムをきちんと把握して、どういうプロセスで発生したのかを重要視しております。金属疲労ということはよく言われますが、元々どこかに起点となる何かがあり、それが亀裂となって金属疲労になるわけです。最初のきっかけの所でなぜそれが起きたのか、というのが重要であると思っています。あまり細かいことまで言葉では話せませんが、輪軸を押し込んでいるわけですから、そこに歪みなどが起きるわけです。そこがポイントでもありますので、まさに専門委員がしっかりと解析をなるべく早く行うことは重要だと思っています。JR貨物の事故ではありますが、他に波及することもあり得ますので、ご指摘のようになるべく早く進めていくつもりでございます。

資料

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