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委員長記者会見要旨(令和6年10月29日

令和6年10月29日(火)14:00~14:22
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況 

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空・鉄道モード合わせて7件ございます。

 航空モードは、 10月2日に海上保安庁の回転翼機が、波照間空港に向けて進入中、機体の一部が樹木に接触し、メインローターブレード等が損傷した事故、10月10日に新潟県上越市内の山中において、新日本ヘリコプターが運航する回転翼機が物資をつり下げて飛行中、物資の一部である生コンクリートが落下した重大インシデント、10月22日に岡山県の岡南飛行場において、岡山航空が運航する小型飛行機が離陸した直後、エンジンから異音などが発生したため引き返し、着陸後の点検でエンジンの破損が確認された重大インシデント、10月26日に長野県の長野市滑空場において、滑空機が着陸する際、滑走路からオーバーランした重大インシデント(注:本事案は、11月7日に航空事故となった。)、10月27日に宮城県栗原市の場外離着陸場において、個人所属の小型飛行機が着陸する際、滑走路からオーバーランし、崖から落下して横転した重大インシデント(注:本事案は、この会見の後に航空事故となった。)の5件です。

 鉄道モードは、9月24日に鹿児島県の肥薩おれんじ鉄道の野田郷駅構内において、列車が脱線した事故、10月4日に千葉県のいすみ鉄道の国吉駅と上総中川駅の間で、列車が脱線した事故の2件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧いただければと思います。

2.国際鉄道事故調査フォーラムの実施 

 次に、国際鉄道事故調査フォーラム「RAIIF」(ライーフ)が先週の10月23日から25日にかけて開催されましたので、概要をご報告します。お手元の資料2をご覧ください。

 第1回フォーラムには、日本を含む11か国・地域から125名が参加し活発な意見交換が行われました。

 1日目は、参加メンバーのトップなどによる鉄道の現状や鉄道事故調査機関の体制や取組、主な事故調査などの発表がそれぞれ行われ、その後のパネルディスカッションでは能力の向上や体制の強化に向けた取組の重要性が示されました。

 2日目は、参加メンバーにとって有益な鉄道事故調査の能力向上に向けた発表や議論、自然災害に関する事故調査の共有、事業者の安全性向上に向けた取組など、より掘り下げた議論が行われました。3日目は鉄道事業者の研修訓練センターにおいて従業員に対する能力向上に関する取組をみていただいたところです。

 以上を振り返りつつ、国際協調の重要性と未来における発展性が必要不可欠である、と総括を行いました。

 また、今後の取組として、「情報共有プラットフォームの構築」や「技術協力の拡大」を行っていくとともに、次回のフォーラムを来年令和7年に台湾で開催することを決定しました。

 私ども運輸安全委員会は、フォーラム設立を主導した日本として次回開催に協力し、世界的な鉄道の安全性向上に貢献してまいります。

 本日私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

3.質疑応答

(JAL機/海保機衝突事故関連)

問: 羽田の事故が発生してから、もうすぐ10か月になりますが、調査の進捗状況などについてお伺いできたらと思います。
答: あと2か月余りで事故発生から1年になりますが、情報収集やその整理・分析を鋭意進めているところでございまして、詳しい内容につきましては、調査の内容に関する話になりますので、お答えは差し控えさせていただきます。
   調査中ということではございますけれども、法令上、事故発生から1年以内に最終報告の公表ができない場合には、経過について公表するということになっておりますので、そのための努力を今行っているところでございます。
   一つだけ申し上げておきたいのは、航空の場合、今回は機体が外国のものでございますので、事実情報の確認に多少時間を要するところでございますけれども、1年以内にできるよう鋭意努力中でございます。
問: 外国だと、今回の機体の基本的な情報や先方に依頼した様々な分析であったり、翻訳であったり、そういった部分で時間がかかるということでしょうか。
答: それもそうですね。分析というよりは事実情報の確認の方が多いですけれども、日本の方で機体はオペレートしておりますが、これでいいのかというようなところは確認する必要がございます。
問: 今回で言うと、そもそも炭素繊維の機体の性質上の特異性の部分もあって、今回の経過報告において、ある程度そこについても一定程度出るというイメージでしょうか。それとも、それはまた別で最終的なもので出されるという感じでしょうか。
答: そこについて最終的にどうなるかは申し上げにくいのですが、いわゆるアルミ合金系の材料でない機体ですので、それに関して事実情報が分かる部分は、お出しできるところはお出しするということです。ただ、新しい機体ですので、そこのところが一番難しいかもしれません。
問: 羽田の衝突事故についてですが、1年を超えないうちに報告書ないしは経過報告というのは、今回1月2日の発生なので、そうすると12月中なのか1月中なのか、どちらを念頭におっしゃっているのかというのはいかがでしょうか。
答: 今までは少なくとも、1月の終わりというよりは12月の範囲でできればやりたいと。先ほどのような国際的なものがございますので、それに間に合わないという可能性はないわけではないのですが、なんとか頑張りたいという気持ちです。
問: 海外の問い合わせなどの次第に関わらず、最低限、経過報告は12月までに出すという理解でよろしいですか。
答: 海外とのやりとりで、どうしても先方からの回答が経過報告を発表するうえでなくてはならないというときには困りますが、そうならないようにディスカッションをして、12月中になんとかしたいというところでございます。
問: 繰り返しになって申し訳ないのですが、羽田の件は、要するに12月中に経過報告を出すということで、今、鋭意頑張っているという理解ですね。
答: そうです。
問: 全体的な調査報告書は、今の段階で調査中ということなので、12月中に最終的な報告書が出るというのは難しいということでしょうか。
答: なかなか難しいのではないかなと思います。
問: KAZUⅠの沈没事故では経過報告書の段階でかなり詳しく内容を書かれていたかと思いますが、今回もKAZUⅠのように経過報告の段階で結構詳しく書き込むということを念頭に置かれているのか、そこはいかがでしょうか。
答: ある程度、事実情報に関しては、後から足し算するようなことがないような形にしたいと思います。ただ、分析の部分は、なかなか完全に分析しきれない可能性が高いと思われますので、今後の方向性は示していきたいと思います。お答えできるのはその程度でございます。
問: 同じく羽田の件ですけれども、ボイスレコーダーやフライトレコーダーの一部あるいは全部の公表というのも、その経過報告では間に合うのでしょうか。それは難しいのでしょうか。
答: 事実情報に関することで、出すべきであると思われるものについては、お出しするということになります。

(国際鉄道事故調査フォーラム等)

問: 2点お聞きしたいのですが、1点目は国際鉄道事故調査フォーラムについてです。実際にフォーラムを開催されまして、国際連携の重要性が大事だと確認されたわけですが、委員長として、国際連携から日本の運輸安全委員会がどんなメリットを受けられるのか、具体的にどんなメリットがあると考えていらっしゃるのかお聞かせください。
   2点目は新幹線のことなのですが、先週、東北新幹線の郡山でのオーバーランについてJR東日本から原因の発表がありました。今年になって非常に新幹線はトラブルが多く、利用者からも心配の声が上がっていまして、私たちの新聞にも読者からの投稿が多くあります。実際、特にこの間のオーバーラン、それから連結器の分離などについても、運輸安全委員会の調査をしてほしいという声が寄せられています。
   これまでの委員長の会見でも、それらが調査できない理由は伺っていますし、その仕組みは理解しているのですが、そういった声が結構強まっていること、それから専門家からも調査したほうがいいんじゃないかという声が聞かれます。
   当事者である鉄道事業者というのは、事業の継続というのを前提にして調べられているわけですから、やはり独立した機関が別個に調べられたほうがいいのではないかというのは私もそう思うのですが、その辺は例えばインシデントの定義などの見直しも含めて、委員長はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
答: まずフォーラムに関しましては、日本主導で設立したということが非常に重要でございます。
   地上を走っている現実の鉄道に関して、日本が世界の中でも重要な役割を果たして、これだけ安全なシステムはなかなかないと誇っております。日本の事業者も我々も、安全性を担保するための予防を含めてそれぞれの技術を持っておりますし、我々は事故調査に関する技術を持っているわけですが、ただそれが全てではなくて、外国も立派にやっておられます。
   船舶はIMO、航空はICAOという大きな国際組織があって、取組もそれに基づいたものがありますが、鉄道にはそういうものがありませんので、今まで鉄道の事故調査に関しては学会のようなもの以外に国際的な仕組みがなかったわけです。
   事故調査に関しては、日本はそれなりの実力があるところでございます。特に、世界をリードするという役割、世界の鉄道が安全に走っていただけるというのは重要なことで、それを我々がある意味でサポートできる機会であり、それは自分たちのためでもあり、国際的にも重要ですので、我々の役割を果たしていきたいと思っています。
   それから、新幹線のオーバーランはなかなか調査がやりにくい面もありますし、連結器の方も、我々の範疇である事故・インシデントには当たらないということで判断しておりますけれども、そういった議論は他国でもあるようで、いくつかの事案をなぜ調査しないのかという質問にどう対応するかという議論がある国からございました。そういった議論はあると思いますので、今すぐできるというわけではないですけれども、そういう議論はあり得るかなと。ただそれは今お答えできないということでございます。
問: そうしますと、今後、そういったインシデントの基準というか、その辺の見直しということも検討課題として考えていらっしゃるということは間違いないわけですね。
答: 検討課題とは言いにくいですけれども、考えていかなければいけない部分はあるかと思います。

資料

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