委員長記者会見要旨(令和6年9月24日)
令和6年9月24日(火)14:00~14:22
国土交通省会見室
武田委員長
発言要旨
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、9月の月例記者会見を始めさせていただきます。
1.事故等調査の進捗状況
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空・鉄道モード合わせて2件ございます。
航空モードは、9月4日に北京発羽田行きのJAL機がソウル東側の上空で飛行中、機体が動揺して客室乗務員1名が負傷した事故です。本事案は、韓国領空内で発生しましたが、国際条約に基づき韓国当局から委任を受け、当委員会が調査することになりました。
鉄道モードは、9月2日に熊本市交通局の新水前寺駅前停留場において、路面電車が出発した直後にドアが開いたという、重大インシデントの1件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧いただければと思います。
2.安全啓発資料の公表
次に、長崎事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧ください。
長崎事務所の管轄区域である九州西岸域では、入り組んだ海岸線を有する地域や大小の島々が多く、橋や送電線といった架空施設が海上に多数設けられており、これに船舶のマストなどが接触する事故が過去何回か発生しています。
これを受け、長崎事務所では、架空施設の下を航行する際の注意点などを紹介する安全啓発資料をまとめ、本日公表いたしました。
架空施設への衝突事故が発生した場合、停電や断水など地域社会に大きな被害が及ぶおそれがありますので、架空施設が多い海域を航行される方々におかれましては、是非当資料をご覧いただき、これらの施設の海面上の高さと、自船のマストなど最も高い部分の高さとを、しっかりと確認したうえで航行し、同種事故の未然防止に役立てていただきたいと思います。
3.国際鉄道事故調査フォーラムの設立
次に、国際鉄道事故調査フォーラム「RAIIF」の開催につきまして、ご説明いたします。お手元の資料3をご覧ください。
これまで、航空及び船舶においては国際的な公的枠組みがある一方、鉄道事故調査分野においては国際的に情報交換を行う場がありませんでした。
そのため、今まで構築してきた国際的な実績とつながりを基に、ここにおります奥村鉄道部会長を中心として国際鉄道事故調査フォーラムを日本が提唱し、設立することとなりました。
第1回は、奥村部会長が議長となって、10月に東京で開催することになりました。オーストラリア、アルゼンチン等の事故調査機関のトップ6名が参加するなど、100名ほどの規模で、それぞれから発表や意見交換を行うこととしております。
1日目の開会と基調講演、2日目の議長総括は報道関係者の方々にご覧いただけるよう調整しております。ご取材に関する詳細はフォーラムの1~2週間前にまたお知らせいたします。
本フォーラムを通じ、日本の鉄道関係者から先進の技術情報を提供するとともに、事故調査機関のトップ同士のネットワークを構築し、また、各事故調査機関同士、事故調査官同士が交流することにより、世界の鉄道の安全性向上への貢献をしてまいります。
鉄道の安全について日本がしっかりやっているということをアピールし、我々の調査技術を高める意味でも活発にネットワークを作っていきたいと思っております。
本日、私からは以上でございます。
何かご質問があればお受けいたします。
4.質疑応答
(知床半島沖旅客船沈没事故関連)
問: 北海道知床半島沖の旅客船沈没事故についてです。今月18日に運航会社の社長が、運航管理者として安全を確保する義務を怠ったとして業務上過失致死等の罪名で逮捕されましたけれども、運輸安全委員会として再発防止のお立場から委員長の所感をお聞かせいただけますでしょうか。
答: まずは、KAZUⅠの事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、6名の方々が見つかっていない状況でございますが、ご家族の皆さまにお悔やみを申し上げます。
この事故に関しては、海上保安本部が知床遊覧船の社長を逮捕し、検察庁に送致したことは承知しておりますが、刑事事件の捜査に関することですので、当委員会としてコメントすることはございません。
ただ、我々が出した再発防止策等は、注視しながら、それらを広めていく活動はしていきたいと思っております。
(JR貨物脱線事故関連)
問: 7月24日のJR新山口駅構内での貨物列車の脱線事故ですが、事故発生後JR貨物はじめ各鉄道会社で輪軸の不正が明らかになっています。この事故について不正が相次いだことによって、再調査をされる可能性やお考えはありますでしょうか。
答: JR貨物以外でということでしょうか。
問: JR貨物も含めてということです。
答: 現在調査を行っているのは、JR貨物の脱線事故であり、車軸の破断に関するものでございます。輪軸組立時の圧力に不正があったということですが、実際に何が起こって車軸が破断したのかを含めて事故の原因をしっかりと調査し、その結果は他のものにも役に立つであろうと思いますので、まずは本事故の車両の詳細確認や情報収集・分析を進め、なるべく早い時期に報告書を公表できるようにしたいと思います。
その中で他のものに波及することがあった場合は、報告書を待たずにお伝えすることもあるかと思いますが、まずは車両の詳細な調査を進めているところです。
問: 最終報告書を出すときには再発防止策も含めてお書きになると思うのですが、不正が起きた背景等については盛り込まれるのでしょうか。
答: それが事故に直結するようなことであれば、書き込まれることになると思います。
問: それについても運輸安全委員会として調査をされる、調査対象になるという理解でよろしいでしょうか。
答: どのようにメンテナンスをしていたというところが関係するのであれば、そこは書き込まれることになると思います。
問: JR貨物の件でお伺いしたいのですが、現在調査中であるとは思いますが、報道されているように輪軸の組立作業で圧力をかけ過ぎたということと、脱線事故とは因果関係があると見ていらっしゃるのかどうかお願いいたします。
答: 確実にこうだと現段階では言えませんが、JR貨物については脱線が先か車軸が折れたのが先かは分かりませんけれども、車軸が折れたということは重要なことですので、それを科学的・客観的、リーズナブルに説明するということを、なるべく早く行いたいと思っております。
それが押し込みの荷重と関係するのであれば、それが他のものにも役に立ち、早くお知らせした方が良いと思われる場合には、最終報告の前に情報提供をする場合もあり得るということでございます。
(東北新幹線列車分離関連)
問: 先日、東北新幹線で連結が外れるというトラブルがありました。こちらは運輸安全委員会の調査対象外であると思いますが、所感があればお伺いできますでしょうか。
答: 本件は調査対象になっておりませんが、列車分離が発生した際に作動する安全装置が働いて列車が安全に停止したことから、調査は行わないこととしたところでございます。
(事業者等のコメント関連)
問: 鉄道、航空、船舶の事故やインシデントで、当事者の会社などが会見などを開いた際、事故やインシデントの原因に関わる質問をすると、「運輸安全委員会が調査中なので答えられない」といった趣旨の回答が返ってくることがございます。
そこで確認したいのですが、事故やインシデントの原因調査や再発防止の検討は、その事業者が行う、場合によっては国土交通省も行う、併せて、調査対象になった事案については、運輸安全委員会が、独立した立場でそうしたものを行うと理解していますが、それでよろしいでしょうか。
答: 運輸安全委員会は独立した立場で調査をしております。事業者や国土交通省が再発防止策等の原因調査をする場合もありますけれども、我々は独立した立場で原因を究明し、再発防止策を検討していくということで、ご理解のとおりです。
最終報告書では、原因を述べた後に、事業者や国土交通省が講じた対策を書き加えますけれども、我々は独自で再発防止策を書き加えるということで、完全に独立した立場というのが大原則でございます。
問: 運輸安全委員会は、事業者あるいは国土交通省が会見などを行う際に、原因や再発防止策に関わる事実関係や分析について、発言しないよう求めているのかどうか、あるいは、求めていないまでも、事業者などが会見で発言しない方が適当であると、運輸安全委員会としてお考えかどうかこの点を詳しくお願いします。
答: 当委員会が事業者などに対して、ご質問のように発言をしないように求めることは一切ございません。ご発言に関しましては、当事者ご自身のご判断によると考えております。
問: そういうことを前提としますと、冒頭に申し上げたように、運輸安全委員会が調査していることを理由に、会見などで原因などに関係することについて、「運輸安全委員会が調査中のためコメントできない」といった趣旨の発言をされる事業者がいます。最近もありましたし、過去にもあり、繰り返されているという印象ですが、運輸安全委員会の存在や調査の意味、まずは自社で原因究明をやらなければならないというような、様々なことを十分理解していないと思っているのですが、運輸安全委員会として、こうした対応が繰り返しなされていることを、どのようにお考えかお聞かせください。
答: 我々としては事業者とは独立した立場で調査をしておりまして、単に運輸安全委員会が調査中であることだけを理由に、コメントできないとおっしゃる事業者がいらっしゃるのだとすれば、我々の調査への理解が深まっていないということだと思いますので、我々の調査の目的についての理解を深めていただくようにしていかなければならないと思います。
資料