令和6年5月28日(火)14:00~14:22
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、5月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、船舶モード合わせて5件です。
航空モードは、5月5日に福島県のふくしまスカイパークにおいて、動力滑空機が着陸する際、プロペラが滑走路に接触した重大インシデント、5月13日に匠航空が運航するヘリコプターが熊本県阿蘇市内の空き地に着陸した際、強めの接地となり、搭乗者3名が重傷を負った事故、5月15日に福井空港において、小型飛行機が連続離着陸訓練中、胴体下面が滑走路に接触した重大インシデント、5月25日に滑空機が熊本県阿蘇郡産山村の公園に墜落した事故の4件です。
船舶モードは、5月20日に宮城県石巻港において、係留中のパナマ籍貨物船の貨物倉で作業員2名が倒れ、そのうち1名が死亡した事故の1件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
これまでの事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、意見に基づき講じられた措置についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。当委員会は、本年3月、地方事務所の一つであります横浜事務所が調査を担当した漁船海幸丸の浸水事故の調査結果等を踏まえ、水産庁長官に対して意見を述べました。
当該の事故は、船底に設けられたプロペラ点検口窓を囲む壁である囲壁の内側に排水口があったことによる水密不良が要因となり機関室内に浸水し、当該船が運航不能となったものですが、こうした、小型の漁船及び遊漁船におけるプロペラ点検口に関連する沈没、転覆等の事故はこれまでにも発生している状況にありましたことから、水産庁長官が各都道府県等に対し、再発防止に向けた安全対策の周知を行うべきとの意見を述べたものでございます。
今般、我々が3月にお出ししましたがすぐに対応いただきまして、水産庁からは、各都道府県や漁業関係団体等に対し、当委員会からの意見に基づいた周知を実施し、あわせて、具体的な再発防止策の理解に資するよう、当委員会が作成した安全啓発リーフレット「あなたの点検口窓は大丈夫!?」についても、配布・周知を行った旨、報告を受けたところでございます。
今回の水産庁による対応は、当委員会の意見に沿ったものであると考えておりまして、小型の漁船及び遊漁船における同種の事故の再発防止に繋がることを期待するものでございます。
私が着任以後も漁船の事故は多いのですが、そのうちの一つがこういった点検口の水密性の問題がありましたので、我々の方で意見を出して水産庁は即座に対応していただいたということでございます。漁船に関しては安全性を保つことがなかなか難しい面もあるのですが、そういうことに関して我々も積極的にやっていくし、水産庁も努力いただいたということだと思います。
次に、門司事務所が公表しました安全啓発資料についてご報告いたします。これは、お手元の資料3をご覧ください。
これは、門司事務所の管轄区域で発生した乗揚事故の傾向を分析しましたところ、GPSプロッター、これはGPSプロッターというのは、人工衛星からの信号を受信しまして現在位置を自動的に測定するものでありまして、専門知識がなくても簡単に現在位置を知ることができるものでございまして、多くの漁船などにもついているものですが、このGPSプロッターが有効に活用されなかったことを要因とした事故が多く発生している状況が判明いたしました。門司事務所ではこのような状況を踏まえ、過去の同種事故の事例を基にして、GPSプロッターに表示される情報の読み取り方や機能設定などの具体的な活用方法に関する分かりやすい解説を安全啓発資料にまとめ、本日公表いたしました。
関係船舶を運航する方々におかれましては、是非当資料をご覧いただき、GPSプロッターを適切に活用することにより、乗揚事故などの未然防止に役立てていただきたいと考えております。
次に、会見事項にはお示ししていませんけれども、もう一点、お話をさせていただきます。ご存じのことと思いますけれども、今月21日、シンガポール航空の旅客機が激しい乱気流に遭遇いたしまして、乗客1名が死亡したほか、多数の乗客が負傷した事故がございました。
本件は、当委員会の調査対象ではございませんので、詳細は把握しておりませんけれども、当委員会は、本年3月に運輸安全委員会ダイジェストの形で「機体動揺における事故防止」を発行しておりまして、今回の事故はそれに関連するものですので、改めて同種事故防止のポイントを紹介しておきたいと思います。
このダイジェストでは、2004年以降の大型機における航空事故で発生した重傷者は、その大部分が機体動揺事故によるものでございまして、この負傷者44名のうち、シートベルトを適切に着用していながら負傷をしたのは3名だけでございまして、残りの41名の方々はシートベルトを適切に着用できていなかったり、座席以外の場所にいたときに負傷をしていたことが明らかになっております。
このような負傷の状況を考えますと、シートベルトの有効性は明らかでございまして、航空機は揺れるということを前提に、着席して常にシートベルトを腰の低い位置で締めることは、被害の防止と軽減に大変効果的でございます。
また、このシートベルトの有効性に関しましては、乗客でも客室乗務員でも同様でございまして、このため、客室にいるすべての人にシートベルト着用を徹底するためには、揺れが予測される場合の早めのベルト着用サインの点灯が必要でございます。さらに、そのためには、乗組員を始めとする関係者の間での揺れの情報共有、機上の気象レーダーを活用して揺れを予測するといった、揺れの予測とその情報の共有が大切になります。
予測等の情報に基づきまして、揺れの予想される範囲を避けるのはもとより、適切なシートベルト着用の徹底、機内サービスの中断、客室乗務員の着席など機内での揺れへの対応を適時・適切に行うことが、同種事故の防止や被害軽減のためには重要でございます。
現状で予測不可能な揺れ、例えば突然揺れる場合があるわけですけれども、そういう場合に対しましては新しい技術の普及が待たれるところでございまして、関係者の皆さまには、改めてダイジェスト第44号の事故防止の取組をご活用いただき、客室の安全性が一層高まることを期待したいと思っております。
ご覧いただいた「運輸安全委員会ダイジェスト44号」は、日本のANA、JALの取組も書いてございます。シンガポールエアの件は、特に1名亡くなられて6名が未だにICUに入っておられると聞いております。そういった重要な案件ですので、注視していきたいと思っています。
本日、私からは以上です。