委員長記者会見要旨(令和6年3月26日)
令和6年3月26日(火)14:00~14:29
国土交通省会見室
武田委員長
発言要旨
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、3月の月例記者会見を始めさせていただきます。
1.事故等調査の進捗状況
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、鉄道、船舶モード合わせて2件です。
鉄道モードは、2月23日に熊本市交通局において、路面電車のドアが走行中に開いた重大インシデントの1件です。
船舶モードは、3月20日に山口県下関市六連島沖において、韓国籍のケミカルタンカーKEOYOUNG SUNが転覆し、乗組員9人が死亡し、1人が行方不明となっている事故の1件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
2.運輸安全委員会年報2024の発行
次に、本日、お手元に配布をしております「運輸安全委員会年報2024」を公表しましたので、概要をご報告します。
今回の年報では、冒頭「この一年の主な活動」として、「旅客船KAZUⅠ沈没事故調査報告書の公表」について紹介しています。旅客船KAZUⅠ関係では、コラムで「事故調査における3Dモデルの活用」などについても取り上げています。
また、「この一年の主な活動」では、社会的関心の高い事故等に関して、令和5年に公表した調査報告書や現在取り組んでいる調査の概要、運輸安全委員会ダイジェスト、シンガポールで行った鉄道事故調査官向け研修などについて紹介をしています。
このほか、年報では、それぞれのモードの調査活動や、事故防止に向けた情報発信、国際的な取組を紹介しております。巻末の資料編には事故等調査件数などの統計も掲載しております。
本年報は、当委員会のホームページから全文をダウンロードができますので、是非ご活用いただきたいと思います。
3.安全啓発資料の公表
本日は運輸安全委員会ダイジェスト第44号として、乱気流による機体動揺を原因とした、乗客や客室乗務員の負傷事故に関する分析集を公表しましたので、ご報告します。お手元の資料3をご覧ください。
この分析集は、2022年に機体動揺事故が6件発生し、2001年以降で最も多くなったことから、2023年までの過去20年間に発生した事故の調査報告書を分析し、同種事故の再発防止のために必要な対策を紹介しています。
本ダイジェストの内容を簡単にご紹介いたします。2ページをご覧ください。機体動揺事故は、大型機による航空事故の半数以上を占めており、重傷者を伴った航空事故の大部分を占めていることが分かりました。
次に4ページをご覧ください。乗客の負傷はこの20年間で減少傾向にあるのに対し、客室乗務員の負傷は逆に増加傾向となっています。今後更に事故を減少させるためには、客室乗務員に対する対策に重点を置いて考える必要があります。
6ページをご覧ください。負傷者の多くは座席以外の場所にいるときに負傷しており、特に客室乗務員は、座席以外の場所でシートベルトサインが消灯しているときに負傷しているという特徴がありました。
15ページに事故防止のポイントを記載しております。「乗組員間を始めとする関係者間での揺れの情報の共有」や「揺れが予測される場合の早めのベルト着用サインの点灯」、「シートベルトは腰の低い位置でしっかりと締めること」、「揺れに遭遇した場合の対応を乗客にも周知しておくこと」、「機上気象レーダーを活用して揺れを予測し避けること」など、「揺れの予測」及び「揺れへの対応」を適時・適切に行うことが重要です。
そのほか、統計分析結果や事故調査事例、航空会社における事故防止に向けた取組も紹介しています。
航空会社等の関係者の皆さまには、本資料を事故防止の取組にご活用いただき、客室の安全性が一層高まることを期待いたします。
次に、横浜事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料4をご覧ください。
横浜事務所の管轄区域である伊勢湾及び三河湾では、特定の海域で特有のプレジャーボート関連の事故等が多発しております。例えば、日間賀島及び佐久島周辺海域においては、暗礁、岩礁及び干出岩が点在する水域が広がっているので、乗揚事故が多くなっております。
運輸安全委員会発足から2023年までに横浜事務所が調査報告書を公表した事故等のうち、伊勢湾・三河湾においてプレジャーボートが関与したものは251件で、このうち「乗揚」と「衝突」で、全体の約半数を占めております。
横浜事務所では、この現状を踏まえ、伊勢湾・三河湾におけるプレジャーボート関連の事故事例から原因を分析し、これらの海域における同種事故の発生状況、原因及び再発防止策を取りまとめました。
今回、取りまとめた情報は、運輸安全委員会がインターネット上で提供しております「船舶事故ハザードマップ」においても、「注意喚起情報」として掲載しており、航海計画を立てる時や、航行中でも、容易に参照することが可能となっております。
伊勢湾・三河湾を航行される皆様に、この資料を活用していただくとともに、他の海域を含めて、当委員会の「船舶事故ハザードマップ」を活用して、事故防止に役立てていただきたいと思っています。
本日、私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
4.質疑応答
(JAL機/海保機衝突事故関係)
問: 1月の羽田での航空機衝突事故で、先月までに海上保安庁機の機長へ聴き取りを行っているという話でしたが、その後、聴き取りとしては終わったのか、あとボイスレコーダーは、何とか聴き取れる状態ではないかとお話がありましたが、そのあたりの分析、調査などでお話できることがあればお願いします。
答: 機長からの口述聴取を含め、情報収集や整理・分析は進めておりますが、調査の内容に関わる話になりますので、お答えできません。
問: 羽田の事故の関係は調査中ということでお答えできないということでしたが、この事故の最大の謎はホールディングポイントまで進め、という管制指示を海保機のパイロットが滑走路に入っていいと思ったのか、航空局も謎だと思うのですが、当面の対策としてナンバーワンを出発機に伝えるのをやめるという対策を取っています。国交省が取っているこの対策は海保機のパイロットの供述と矛盾しないのでしょうか。全く見当違いの対策を取っていてもしょうがないと思うのですが。
答: 見当違いということがあるとは思っておりませんが、まだ検証の途中でありますので、お答えできる段階ではありません。
もし、調査の途中段階で、航空局、海上保安庁の言うことが、当委員会が調査していることと矛盾するようなことがあった場合には、情報提供をさせていただきますが、現時点ではそのようなことはないと思っております。
問: 羽田の事故の関連で確認ですが、国土交通省のナンバーワンを取り上げるという対策に齟齬がないという話もありましたが、それは運安委の方で海保機の機長に聴き取りをした内容を踏まえても対策に齟齬がないという考えなのか。
答: 調査の過程で得られた情報については、申し上げることはできません。それを前提にした発言はしておりません。具体的に齟齬があるというような確定的なことが現時点で、言える話はないということを申し上げております。
(知床半島沖 旅客船沈没事故関係)
問: 年報の冒頭にもありましたが、知床の旅客船沈没事故から4月23日で2年になります。この間、国土交通省は運輸安全委員会の事故報告書を踏まえて、再発防止策が出来ていると思うのですが、すでに半分ほど実施している一方で、報告書に書かれていた水密化などはこれからという状況だと思います。再発防止策の進み具合について、何かあればお願いします。
答: 救命いかだの話をしますと、現実に船に乗せるのに苦労されていると思います。
安全体制ですが、知床で4社あったところが3社となりましたが、小さい会社なので難しいところもありますが、きっちりとやってほしいと思っております。
また、知床という重要な観光地でもあり、乗り物が安全でなければ成り立たないので、報告書の最後に書いておりますが、地域として、自治体を含め、関係する業者、安全を保つ海保、警察、といった方々が安全をどうやって保って応援していくか、それを国が応援していかなければ難しいと思っております。
問: 水密化、救命ボートは難しいという意味合いでしょうか。
答: 水密化は進めてもらわないといけませんが、救命いかだの方は海事局の方で進めていただいております。どこを解決していけばいいのかというところは注視していきたいと思っています。
問: 安全体制の観点で、地域ぐるみ、総合フォローということが大事だと述べられましたが、現状として、地域協議会が昨年の秋以降、少しずつできていくと思いますが、こういう体制づくりにおいて、重要というか取り組みを進めていくうえで、ポイントがありましたら伺えますか。
答: 地方自治体が前面に立って、まとめるということが必要ではないかと思っております。
例えば、鉄道の第3種及び第4種踏切道を減らしていこうという動きでは、地方自治体の方に入ってまとめていただかないと、進まないということもあります。
問: 各々意識のばらつきがある中で、地方自治体が入って安全対策の構築だとか、意識を均一に伝えていくということでしょうか。
答: そういうことです。
北海道で言いますと、町、道庁、そして国に要望していくということになります。安全を保つことが、この場合では観光のキーとなりますので、安心して行っていただきたいという意味で申し上げております。
(JR東日本 東北新幹線郡山駅オーバーラン関係)
問: 3月6日にJR東日本東北新幹線でオーバーランを起こしてしまうという事象が発生したかと思います。運輸安全委員会として重大インシデントに当たらないので、調査されないとの理解でよろしいでしょうか。
答: ご指摘のとおりでございまして、事故の種別としては乗客が1名負傷されており、鉄道人身障害事故ということであります。条文で調査対象としているものは、5人以上の死傷者を生じたもので、死亡者を生じたものに限るということで、本事案は該当しないことになります。
一方、インシデントに該当するのが、脱線、衝突、火災が発生するおそれがあるものですが、国交省からインシデントに該当するという通報は受けておりませんので、インシデントでもなく、さらに運安委が調査する重大インシデントにも該当しないので調査していません。
問: 国交省側からインシデントということで、運輸安全委員会に上がってこなかったので、調査対象にしないという意味で、運輸安全委員会の方でインシデントに当たらないと判断されたわけではないという理解でよろしいか。
答: インシデントの場合は、インシデント報告があって、我々の方でそれが重大なものかどうか判断して、調査対象にするかどうか決めています。その手前として、インシデントの報告がなかったということになります。
資料