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委員長記者会見要旨(令和5年10月24日

令和5年10月24日(火)14:00~14:19
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.発足15年を迎えて  

 運輸安全委員会は、本年10月1日をもって、平成20年(2008年)の発足以来、丸15年となりましたので、この機会に、これまでの歩みと現状についてお話ししたいと思います。

 まず、運輸安全委員会のこれまでの歩みを示します。船舶については事故原因究明及び船員等の懲戒を行う海難審判庁がありました。幾つかの航空機事故を経験し、1974年1月に「航空事故調査委員会」が発足し、1985年に発生した「日本航空123便御巣鷹山墜落事故」を調査しました。また、重要な二つの鉄道事故を経験し、2001年10月には、「航空・鉄道事故調査委員会」が発足しました。その後、「JR西日本福知山線列車脱線事故」を調査しました。さらに、2008年の海上人命安全(SOLAS)条約採択を経て、航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁の原因究明機能を統合するとともに、機能や権限が強化された、現在の「運輸安全委員会」が2008年10月に発足しました。そして、昨年2022年に発生した「旅客船 KAZUⅠ沈没事故」を調査しました。

 組織の名称や内容が変遷しつつも、航空、鉄道、船舶の三モードにおいて、事故や重大インシデントが発生した場合に直ちに調査を行い、その原因を究明して事故等の再発防止を促すことで、運輸の安全性をより一層高めて人々の生命と暮らしを守ることに、組織一丸となって取り組んでまいりました。

 運輸安全委員会では2019年10月、発足10周年を契機に、過去の教訓を踏まえた調査の更なる向上を目指して、「業務高度化アクションプラン」を策定し、実行してきました。大目標は4つあります。

 第一は「分析力・解析力の強化」です。事故の対象を可能な限り科学的な手法で計測し、解析を行うことにより、正確な事実情報を収集します。この情報はヒューマンファクタ―分析の土台となります。先日公表したKAZUⅠ沈没事故では、分析力・解析力の強化が生かされたと考えています。

 第二は「発信力の強化」です。ここに掲げた発信に加え、ここでは、最近の類似事故報告を教訓としてまとめた「ダイジェスト」や「地方分析集」を挙げたいと思います。ここ2カ月に公表しました、「小型飛行機等の事故防止に向けての簡易型飛行記録装置(FDM)」、「地域鉄道における事故防止対策」は、この試みの一つです。

 第三は「国際力の強化」です。航空、鉄道、船舶の三モードのいずれにおいても国際的な連携は不可欠であります。事故調査を通した安全確保のための国際基準化においてリードしていくことや国際協力強化は、特にアジア地域においては重要と考えています。

 第四は「組織力・個人力の強化」です。大事故や複数モードにまたがる事故等発生時の組織全体としてのマネジメント機能の重要性は継続的な努力が必要です。個人力の強化には、長期的視野に立った戦略的人材確保・育成が不可欠です。

 最後に現在の運輸安全委員会のホームページの様子を示します。多くの情報の中で、ここでは一見社会的影響は少ないように思えますが、個々の事故で亡くなられる方が多いテーマである「超軽量動力機」、「踏切事故」、「プレジャーボート」についてのバナーを掲げています。今後とも分かりやすい事故・インシデント情報の提供に心がけていく所存です。

2.事故等調査の進捗状況 

 次に、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空モード3件です。

 9月29日に鳥取県西伯郡大山町の大山山頂において、四国航空のヘリコプターによる物資輸送中に、地上作業員が負傷した航空事故、10月7日に小型飛行機が、岐阜県高山市の飛騨エアパークに着陸した際、機首部分及び右翼が滑走路に接触した重大インシデント、10月19日に東京都江東区の東京ヘリポートで、朝日航洋のヘリコプターが進入中の滑走路に、他のヘリコプターが進入した重大インシデントの3件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料をご覧ください。

3.委員の異動 

 委員の異動について、ご報告します。

 先月の会見でもお話ししたとおり、任期満了に伴い、海事分野の常勤委員を務めた佐藤雄二委員及び田村兼吉委員が退任し、新任の委員として、伊藤裕康氏及び上野道雄氏が、10月1日付けで国土交通大臣から任命されました。

 伊藤委員には、豊富な海上勤務経験と海上交通の安全に関する多角的かつ高度な識見を生かし、ご活躍いただけるものと期待しています。

 上野委員には、船舶事故等調査に不可欠な分野である船舶工学・造船工学に関する高い識見と、海難事故の解析に関する豊富な実務経験を生かし、ご活躍いただけるものと期待しています。

 また、海事分野の非常勤委員である岡本満喜子氏については、10月1日に再任されております。

 岡本委員には、引き続き、ヒューマンファクターに関する高い識見を生かし、当委員会でご活躍いただくことを期待しています。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(発足15年関係)

問: 委員長がおっしゃられた発足15年ということで、これからもプレゼンス、存在感を出していくためにはどういったことが重要だと思っていますか。
答: 先ほど申し上げました4つの視点にもう少し付け加えて説明しますと、分析力・解析力は、当委員会の能力が問われているものです。組織力・個人力というのもありますが、例えば、航空関係では、事故が発生した場合、機体の製造国の方々に技術的な検討を依頼しなければならない。そのような時に相手からの回答だけで解釈するのではなく、当委員会で十分な知識があれば、疑問を返したり、こういうシミュレーションをしてくださいということが言えます。そのためにも分析力・解析力は非常に重要なものとなります。船舶関係では、KAZUⅠの事故の場合も船体の外部・内部構造の形状をレーザーで計測することができ、定量評価が可能になっております。鉄道関係では、踏切道でお子さんやシニアカーに乗っておられる方がどういう角度で電車を確認できるのか、ということを解析することによって、どこの段階で注意を払えばよかったのかなどの検討課題がわかります。今後とも当委員会の能力を高める必要があります。
    また、飛行機・ヘリコプターは、色々なところで事故が起きており、他で発生している事象も国際的連携があれば情報が得られやすくなり、迅速な対応もできるということもあります。
    発信力の強化については、このような会見の場も含めご説明させていただいた情報を、国民の安全を守るために伝えていただいておりますので、それらに応える発信をしていきたいと思います。

(宇宙機関係)

問: PDエアロスペースの無操縦者航空機についてお伺いしたいのですが、宇宙機ですので上空でジェットエンジンに切り替えて宇宙に行くということだと思います。今回無人航空機として調査の対象となったと思いますが、宇宙に行った場合も今後調査対象として考えていくのでしょうか。
答: その機体が航空法の適用を受けるものであれば調査対象となるかと思います。今回調査対象となったものは、宇宙関係の開発用ではありますが、航空機とほぼ同じで無操縦者航空機として航空法の許可も受けておりましたので調査の対象となったということです。今後は何が航空法の適用になるのかを含め議論を待たないといけませんし、当委員会だけでは決められませんのでコメントは控えさせていただきます。
問: 将来的には民間の開発も進んでいくとは思いますが、スペースシャトルのような垂直に離陸して水平に滑空して着陸したりするものなど、色々なタイプのものがあると思いますが、今後、検討課題として上がってくるという理解でよろしいでしょうか。
答: 当委員会は航空機を対象としておりますが、米国(NTSB)などは宇宙機も含めた対策をしていますし、現在もし何かあったときにはJAXAが対応することになるかと思いますが、民間になるとそうもいかなくなるので、どこかで当委員会が関与しなければならなくなる可能性はあるかもしれません。航空分野では、ドローン・空飛ぶクルマというものがでてきておりますし、このような新しい分野においても当委員会の能力を上げておかなければいけないと思っております。

資料

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