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委員長記者会見要旨(令和5年8月29日

令和5年8月29日(火)14:00~14:21
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、8月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故は、航空、鉄道、船舶モード合わせて4件です。

 航空モードは、8月14日に、本田航空の運航する小型飛行機が、大分空港に着陸した際、機体の胴体下面が滑走路に接触し損傷した航空事故の1件です。

 鉄道モードは、8月5日にJR東日本 東海道線の大船駅構内において、走行中の列車と電化柱が衝突し、乗客3名、運転士1名の計4名が負傷した鉄道人身障害事故、8月6日に青森県の弘南鉄道 大鰐(おおわに)線において発生した、列車脱線事故の2件です。

 船舶モードは、8月24日に和歌山県沖の紀伊水道において、日本の貨物船いずみ丸とリベリア船籍のコンテナ船CONTSHIP UNO(コントシップ ウノ)が衝突していずみ丸が転覆、沈没し、乗組員1名が死亡、1名が行方不明となっている事故の1件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.安全啓発資料の公表 

 次に、運輸安全委員会ダイジェスト第42号として、簡易型飛行記録装置(FDM)の搭載促進に関する分析集を本日公表しましたのでご報告します。お手元の資料2をご覧ください。

 始めに、FDMと申しましても、なかなか、皆さんお聞きなじみがないものかと思いますが、これは、主に、フライトレコーダーが搭載されていないような小型飛行機等を対象として、航空機の位置、高度等の情報や操縦室内の音声、映像等を記録できる簡易型の機器のことです。今回の分析集では、小型飛行機等の運航の安全リスク軽減のために活用されることが期待されているFDMについて紹介するとともに、事故の未然防止に向けた機器の有用性等のポイントを分かりやすくとりまとめました。

 最近10年間に発生した航空事故を見てみると、その約6割が小型飛行機等によるものです。さらに、その事故の要因を見てみると、人的要因が関係するものが8割以上となっていますが、その中には適切なリスク管理によって事故が防げたと思われる事例も多く見られます。FDMは日常運航における運航データを収集する機能を有しており、そこから得られたデータを分析することにより、操縦士の技量の維持向上を図るとともに、効果的なリスク管理等を行うことが可能となります。また、そのデータは、当委員会が行う事故等調査においても非常に重要なものとなります。

 FDMの装備については、当委員会の調査報告書の中でも何度かその有用性を示してきており、海外の事故調査機関もその必要性を指摘しています。特にアメリカ、カナダなどは何度も調査機関が提言をしておりますが、義務化はされておりません。また、国土交通省航空局でも、このFDMの導入促進を図るため「小型航空機用FDM導入ガイドライン」を先日公表しているところとなります。当委員会も航空局と連携して同時期に公表させていただき広めていきたいと考えております。

 小型飛行機等を運航している皆様に本資料を参照していただくことにより、FDMの有効性についての理解が広がり、多くの機体にFDMが搭載されていくこと、これによって航空の安全性が高まることを期待いたします。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

3.質疑応答

(知床半島沖旅客船沈没事故関係)

問: 北海道知床半島沖の観光船事故についてです。先月、意見聴取会が行われ、先週には内容も公開されました。現在の調査の進捗状況を教えてください。
答: 意見聴取会を開催し、貴重なご意見をいただいたところですが、現在、調査報告書の取りまとめに取り組んでおります。報告書案について審議を行っており、所要の手続きを経て報告書としてとりまとめる必要があるため、具体的時期を申し上げることはできませんが、早期に公表できるよう努めてまいります。
問: KAZUⅠの意見聴取会の件でお聞きしたいのですが、公述人の方から会社にパワハラ的な体質があったかということを調べてほしいとありましたが、そのような声を踏まえて追加で調査をするという考えはあるでしょうか。
答: 本事故については、事故の原因究明と再発防止の観点から幅広い調査を実施しているところですが、調査の内容に関することについては、お答えできません。
問: 知床の意見聴取会について聞かせてください。最終報告書に意見聴取会の意見に関連した何かが反映されるのでしょうか。
答: 伺いましたご意見については、参考にさせていただき、有用であれば反映させていただくこともあります。
問: 匿名でご発言された方の要旨は当日いただきましたが、詳しい内容はいつアップされるのでしょうか。
答: 非公開の方のご意見もすでにホームページに載せておりますが、ご本人に確認した上で、公開してほしくない部分が一部ありましたので、その部分は載せないで、それ以外の部分は載せているという状況ですので、ホームページをご覧いただければと思います。

(JR東日本 東海道線 大船駅構内 鉄道人身障害事故関係)

問: 8月5日の夜に発生したJR東海道線の電柱との接触事故について、15万人も影響がでた事故にもかかわらず、鉄道事故と認定されたのが2日後となったということですが、鉄道事故に認定された経緯について教えてください。
答: 本事故は、鉄道人身障害事故に該当しますが、運輸安全委員会が調査対象とするのは、5人以上の死傷者を生じたもので、死亡者を生じたものに限るとしており、条文上では調査対象ではありません。しかしながら、鉄道施設である電化柱と列車が衝突して、車両が損傷し、負傷者が発生するという事故であり、当委員会として、原因究明が必要であると認められること、また、一歩間違えれば脱線するおそれや負傷者が増えるおそれがあったことということもあり、条文上の「特に異例と認められるもの」と判断し、調査対象としたものであります。

(安全啓発資料「ダイジェスト第42号」関係)

問: ダイジェストの説明にあったフライトレコーダーについて、世界的に義務化にならない理由はどういうことでしょうか。
答: 費用面など考えられますが、アメリカ、カナダなどの安全機関は強く要望しており、義務化に近づいていると期待はしています。航空のレジャーを楽しまれるのは安全が最重要でありますので、それを認識していただく上でも航空当局とも連携しながら提案していきたいと思っています。
問: いくらぐらいするものなのか。
答: どれくらいのパラメーターを記録できるかにもよります。数万円から百万円のオーダーになっているものまで色々あります。フライトパラメーターがなくても画像があることが重要でもあり、実際の計器が映り、それを確認するだけで、スイッチの場所、速度がどうなっているのか、パイロットのその時の反応などがわかります。また、訓練時にも非常に役立っております。そういうデータは安全のためにも重要であると思っております。

(和歌山県沖 コンテナ船CONTSHIP UNO貨物船いずみ丸衝突事故関係)

問: 船舶の事故の和歌山沖の調査の件ですが、現在の最新状況とか、わかったことがあれば進捗状況を教えてください。
答: 外航船の方の調査を行って、初動としては一通り調べて終わっております。内航船の方は、怪我をされて入院されている状況なので回復を待ってお話を聴きたいと思っております。引き続き調査を進めていきたいと思っております。

資料

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