令和5年6月27日(火)14:00~14:13
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道モード合わせて7件です。
航空モードは、1月21日に滑空機が長野県長野市滑空場に着陸した際、機体の胴体前方下面が滑走路に接触した重大インシデント、5月6日に成田空港に着陸したユナイテッド・パーセル・サービスの貨物機について、到着後の点検において機体後方隔壁等の損傷が確認された航空事故、5月29日に高知空港に着陸した本田航空の小型飛行機について、到着後の点検においてエンジンの内部部品が破損しクランクケースを貫通していることが確認された重大インシデント、6月15日に京都府南丹市(なんたんし)の山中において、朝日航洋のヘリコプターの機外に吊り下げた荷物が地上作業員に接触し、負傷した航空事故、6月16日に那覇空港で、小型飛行機がエンジンを始動後にエンジンから発煙し、消防車両による消火活動後、エンジンの防火区域内に火災の痕跡が確認された航空事故、6月20日に岡山県の岡南(こうなん)飛行場で、岡山航空の小型飛行機が着陸進入中の滑走路に匠(たくみ)航空のヘリコプターが進入した重大インシデントの6件です。
鉄道モードは、6月2日に高知県の土佐くろしお鉄道で、列車が線路上にあった土砂に乗り上げた脱線事故の1件です。
運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、神戸事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。
神戸事務所の管轄区域には全国でも有数の釣り場が多く、当委員会が発足した2008年から2021年までの14年間に、遊漁船の関連する船舶事故及びインシデントが、神戸事務所の管轄区域内で100件発生しており、そのうち35件が若狭湾で発生しています。
神戸事務所ではこの現状を踏まえて、若狭湾における遊漁船関連事故の特徴などを分析し、Q&A形式で紹介した安全啓発資料を本日公表しました。
分析の結果、他船との衝突事故が全体の約5割を占め、その中でも航行中の遊漁船と漂泊・錨泊している他の船舶とが衝突する事故が多く発生していることから、実際の衝突事故の事例を紹介するとともに、航行中及び漂泊・錨泊中それぞれの安全対策をまとめています。
これからの季節は、釣り船が増え、それに伴って遊漁船が関連する事故等が多く発生していますので、遊漁船業を営む関係者の方々においては、当資料をご覧いただき、事故等の防止に役立てていただきたいと思っております。
最後に、国際運輸安全連合(ITSA)委員長会議に参加しましたのでその内容についてご報告します。
ITSA委員長会議は、世界の18の国・地域の委員長級をメンバーとし、航空、鉄道、船舶など複数の輸送モードの事故調査から得られた様々な教訓や取組課題等の情報共有及び意見交換により、運輸の安全性を向上させることを主な活動目的とし毎年開催されている会議です。
今回は6月5日から7日にかけて台北で開催されました。
今回の会議では、各機関からの調査事業の紹介や共通に関心の高いテーマに関するパネルディスカッションが行われました。
私からは、新技術に関するパネルディスカッションにおいて、当委員会で活用しているX線CTスキャナ、3Dレーザースキャナ及びドローンといった新技術に関する発表を行いました。X線CTスキャナは運航データなどをメモリーする記憶媒体が破損してもデータをリカバリーするために活用することとしています。また、3Dレーザースキャナは正確な形状、寸法、角度などの測定に活用され、2020年9月に猪苗代湖で発生したプレジャーボートの事故や昨年知床で発生した旅客船の事故でも利用しております。
さらに、各国で扱った事故をベースに各機関が纏めた安全情報に関するリポート集のパネルディスカッションでは、私がモデレーターを務めることにより、各機関の情報交換を促しました。我々が事故調査を行う上で他国での経験が生かせることになります。
各機関の委員長と顔を合わせて直接意見交換することにより、世界の動向の把握や各機関との信頼関係の醸成、協力関係の確認ができたことは大変有意義でありました。
今後とも、積極的に情報共有、意見交換を行い、当委員会の事故調査活動がより充実したものとなるよう、努めてまいります。
問: 6月10日に羽田空港でエバー航空とタイ航空の旅客機が誘導路で接触する事案がありましたがイレギュラー運航に該当するということで、重大インシデントにも航空事故にも該当しないということですが、運輸安全委員会として改めて調査をすることはあるのでしょうか。
答: 航空局の方で両機の機体の損傷を確認したところ、重大インシデントにも事故にも該当しない損傷であったということだったので、調査をする予定はございません。