令和4年12月20日(火)14:00~14:21
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、事故等調査の進捗についてご報告します。本年4月23日に北海道知床半島西側カシュニの滝沖で発生した旅客船KAZUⅠ浸水事故について、当委員会は、先週12月15日、国土交通大臣に対し、調査の経過とこれまでの調査で判明した事実等を報告するとともに、これらの情報に基づき現段階で必要と考えられる再発防止策について意見を述べました。
KAZUⅠの事故については、現在も調査を続けているところですが、経過報告でお示しした、本事故の発生に関与した要因等について、さらに詳細な調査を行い、事実関係を明らかにしつつ分析を進め、最終的な事故調査報告書の早期公表に向けて取り組んでまいります。
次に、前月の定例会見から新たに調査対象となった事故及び重大インシデントは、航空モードの3件です。
11月28日に鹿児島県霧島山(きりしまやま)付近上空で、四国航空のヘリコプターによる物資輸送中に、地上作業員が負傷した航空事故、12月10日に岡山航空の小型飛行機が岡山県の岡南(こうなん)飛行場に着陸進入中、鳥と衝突した航空事故、及び12月12日に佐賀空港で、佐賀航空の小型飛行機が着陸進入中の滑走路に、地上車両が進入した航空重大インシデントです。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、委員の再任について、ご報告します。
常勤の委員について、航空分野の丸井祐一(まるい ゆういち)氏、鉄道分野の奥村文直(おくむら ふみなお)氏が、12月6日付けで国土交通大臣から再任されております。
丸井委員には、航空機の操縦に関する分野において、奥村委員には、地盤工学、鉄道工学に関する分野において、それぞれ高い識見を生かし、引き続き、ご活躍いただくことを期待しています。
また、非常勤の委員について、鉄道分野の鈴木美緒(すずき みお)氏及び新妻実保子(にいつま みほこ)氏が、同じく12月6日付けで国土交通大臣から再任されております。
鈴木委員には、交通工学、人間工学に関する分野において、新妻委員には、電気工学に関する分野において、それぞれ高い識見を生かし、引き続き、ご活躍いただくことを期待しています。
さらに、鉄道分野の常勤委員である石田弘明(いしだ ひろあき)氏については、12月26日付けで国土交通大臣から再任される予定となっております。
石田委員には、機械力学、車両運動力学及び鉄道車両工学に関する分野における高い識見を生かし、引き続き、ご活躍いただくことを期待しています。
最後に、本日は、本年最後の定例記者会見となりますので、この1年を振り返ってみたいと思います。
初めに、事故等調査報告書の公表について、これは前月公表分までの件数になりますが、本年は、航空が19件、鉄道が12件、船舶の重大案件が7件で計38件の事故等調査報告書を公表しました。
各モードの主な報告書について紹介させていただきますと、航空モードでは、令和2年12月に発生したボーイング777-200型機の発動機が破損した航空重大インシデントについて、疲労破壊によりファンブレードが破断したことによるものとする調査報告書を、本年8月に公表しました。
鉄道モードでは、令和2年6月に発生した京成電鉄株式会社本線の列車脱線事故について、疲労破壊により台車の亀裂が進展し、輪重のアンバランスが大きくなったことによるものとする調査報告書を、本年3月に公表しています。
船舶モードでは、令和2年9月に福島県の猪苗代湖で発生したプレジャーボートによる死傷事故、令和3年2月に高知県の足摺岬沖で発生した外国の貨物船と海上自衛隊の潜水艦との衝突事故の調査報告書を、いずれも8月に公表し、潜水艦の衝突事故については、防衛大臣に対し、再発防止に必要な措置として、露頂作業時の安全確保やソーナー監視の強化等を求める意見を述べました。
また、当委員会の8つの地方事務所では併せて802件の船舶事故等の調査報告書を公表しております。802件の報告書の約4割の350件は、遊漁船やプレジャーボート、水上オートバイといった海洋レジャーを楽しむ船舶の関係する事故・インシデントでした。当委員会では、こうした事故等の予防に資する取組として、地方事務所の調査結果も活用し、事故の傾向や共通要因から事故防止のポイントを安全啓発資料として取りまとめ、海洋レジャーを楽しまれる方々へ広く周知するなどの活動も行っています。
いずれの事案につきましても、報告書としてまとめた調査結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じていただき同種の事故等を防止していただきたいと考えています。
次に、今年発生し、これまでに当委員会が調査対象とした事故等についてです。
令和4年は、船舶モードにおいて、冒頭ご報告した旅客船KAZUⅠの事故を含め、本部が取り扱う重大な事故が3件発生しています。
航空モードでは、3月に沖縄県の伊江島空港で特定非営利法人の小型機が墜落して2名の方が亡くなった事故や4月に九州の有明海に小型機が不時着水して2名の方が亡くなった事故など、事故が21件、重大インシデントが14件発生しています。
鉄道モードは、3月16日に東北新幹線の福島駅と白石蔵王駅間を走行中の列車が地震を検知して自動停止したものの一部の車両が脱線した事故など13件の事故と2件の重大インシデントが発生しており、全モード合わせた事故等の件数は53件となっています。
運輸安全委員会といたしましては、いずれの事案についても丁寧かつ的確な調査・分析を重ね、できる限り早期に原因を明らかにし、同種事故等の防止に必要な施策または措置について提言を行うとともに、事故等調査から得られた教訓や知見を蓄積し、それを分かりやすく発信するなどの安全啓発活動にも注力し、運輸の安全に寄与してまいりたいと考えています。
本日、私からは以上です。問: まず一問目ですけれど、冒頭、委員長からご発言ありました知床KAZUⅠの事故についてお尋ねします。15日に経過報告書を公表されましたけれど、もう少しだけ委員長の公表に対するご所感だったりをお伺いしたいと思います。
答: 先ほど申し上げましたけれど、8ヶ月弱で経過報告を出させていただきました。今回の経過報告は、これまでの調査によって、浸水から沈没に至るメカニズムがおおむね解明できて、小型船舶の安全確保のために早急に対策をとっていただく必要があることから、この段階で公表するとともに、現段階において必要と考えられる再発防止策について、国土交通大臣に対して意見を述べることとしたものです。KAZUⅠの事故では、20名の方が亡くなられ、いまも6名の方が行方不明となっておられます。本事故の調査は、現在も続けているところですが、私といたしましても、引き続き今回の経過報告でお示しした要因等について、さらに詳細な調査を行い、事実関係を明らかにしつつ分析を進め、最終的な事故調査報告書の早期公表に向けて、今後も全力で取り組んでまいる所存です。
問: 今のKAZUⅠの事故に関してもう一問お伺いします。最終的な報告書には、なお時間がかかると思うのですが、今後どのような点について力に入れて調査していくかお伺いしたいと思います。
答: 船体に関することについては、事実関係というか、それはほぼ明らかになっていて、浸水から沈没に至る過程というのは、ある程度具体的になったと思いますが、背景要因というか、それを引き起こした要因があるわけで、そこにつきましては、事実関係をもう少し調べていき、どのように再発防止につなげるかという視点が必要でございます。(経過報告4.2の)(1)は船体についてのことですけれども、(2)以下に関しては背景要因でございますので、そちらを丹念に、かつ迅速にやっていくということでございます。
問: もう一つだけ、最終的な報告書ですけども完成させる目処があればお願いしたいと思います。
答: いつということは申し上げられませんが、主管調査官を中心になるべく早急に進めさせていただきます。
問: KAZUⅠの事故の経過報告では、ご家族の協力で得られた資料なども活用して分析を進められたと思います。協力を得られたことについてあらためて委員長の考えを教えて下さい。併せて、ご家族に公表に先だって説明をされたと思いますが、今後こういった対応についての方針等もあれば教えていただけますでしょうか。
答: KAZUⅠの事故に関しましては、亡くなった方がたくさんおられ、まだ行方不明の方もたくさんおられ、また社会的関心が高かったにもかかわらず、得られる情報が、当初あまりなかったということもございました。被害者のご家族、関係者の方は、どんなことが起きたのか、どんな事実があって、原因は何であったか、二度とこういうことが繰り返されないためにはどうしたらいいのかを明らかにしてほしいという想いがあると思っています。私どもの調査官はそういったことも理解したうえでご家族にお聴きして情報を集める必要があります。事実関係を明らかにして原因を追求するためにはご家族にお話をお伺いすることが必要で、その大切さをあらためて感じました。思い出したくないということもあったと思いますが、事実を明らかにするためにとお願い申し上げて、それを認識していただき、納得していただいて提供いただいた情報が、例えばGPSの情報です。携帯のGPSの情報をいただけたり、それから乗っていらした方のカメラからの写真をいただいたり、そういった情報が得られました。そうしたご協力に、我々もお応えできることを一生懸命やらせていただきました。やはり、GPSのデータがございますと、どこを通ったかということが判明し、また、海象の状況をシミュレーションで求めているわけですが、そういったものとを組み合わせると、どういう状況であったかということがわかるようになりました。ご家族の思いを受けて我々が丹念に調査していくということの重要性を感じております。