令和4年6月28日(火)14:00~14:20
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、船舶モード合わせて5件ありました。
航空モードは、6月2日に鹿児島空港で発生した、他の航空機が存在するヘリコプター用離着陸地点への着陸を試みた航空重大インシデント、6月23日にジェットスター・ジャパン機が高知空港に着陸した際、乗員が負傷した事故、6月25日に徳島空港の西南西方を飛行中のANAウイングス機が動揺して乗員が負傷した事故、6月26日に茨城県のかすみがうら市で発生した、超軽量動力機の航空重大インシデントの4件です。
船舶モードは、6月5日に、和歌山県和歌山市の地ノ島(じのしま)北側海域において、航行中の遊漁船「第二 恵比須(えびす)丸」から釣り客が行方不明となり、その後、海上で発見されたものの、死亡が確認された事故の1件です。
このうち、6月2日に鹿児島空港で発生した、小型機とヘリコプターが関係する航空重大インシデントについて、当委員会は、発生翌日に3名の航空事故調査官を現地に派遣し、これまでに乗員及び管制官からの聴き取り、発生当時の空港の運用状況などの調査を行っております。
また、6月5日に和歌山県沖で発生した遊漁船の釣り客の死亡事故について、当委員会は6月13日にこれを認知し、翌14日から船舶事故調査官による調査を開始しました。これまでに、本船の関係者から、当時の運航状況についての聴き取りなどの調査を行っております。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、地方事務所における安全啓発資料の公表についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。
当委員会の神戸事務所において、夜間におけるプレジャーボートの港湾施設への衝突事故を分析し、同種の事故を防止するための注意点などをとりまとめた安全啓発資料を本日公表しました。
夜間の港湾施設への衝突事故は、他のプレジャーボートが関係する事故と比べて、死傷者が発生する割合が約8割と高く、花火観覧時など夏季に多く発生し、また、船長の夜間航行経験の多寡(たか)に関わらず発生しています。
この資料では、同種事故の発生傾向などをQ&A形式で紹介するととともに、実際の事故事例も踏まえた航行前及び航行中の安全対策をまとめています。
全国的にも、これからマリンレジャーの最盛期である夏季を迎えることとなりますが、本資料を、プレジャーボートを操船する皆様に参考にしていただき、夜間航行の安全対策を十分に行って、事故防止に努めていただきたいと思っております。
最後に、国際運輸安全連合(ITSA)委員長会議についてご報告します。
ITSAは、米国、フランス、オーストラリア等18の国・地域の事故調査機関の委員長級をメンバーとし、航空、鉄道、船舶など複数の輸送モードをカバーする国際的な組織です。
毎年、各国機関の代表が集まる本会議において、事故調査から得られた様々な教訓や現在の取組課題等の情報を共有し、意見交換を行うことにより、運輸の安全性を向上させることを主な活動目的としています。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、令和2年5月以降、ウェブ形式で開催されておりましたが、今年は6月6日から8日にかけてフィンランドのヘルシンキで対面での会議となりました。私は、国会期間中であることから、今回もオンラインで参加しました。
今回の会議では、ストレス管理、テーマ別安全研究、運輸事故後の家族支援、運輸以外の事故等の調査と経験、事故調査の効率化、最重要課題リスト、勧告とそのフォローアップなどのテーマを設けて、パネルディスカッションが行われました。
私は、テーマ別安全研究にパネラーとして参加し、当委員会の取組として、分析業務を紹介しつつ、その成果としての、「JTSBダイジェスト」の発刊やウェブサイトにおける「船舶事故ハザードマップ」の提供及び「鉄道の踏切事故防止」に関する掲載を例示しました。
そのほかのテーマにつきましても、各事故調査当局のそれぞれの状況に応じた課題への取組の紹介を頂きながら、議論を行いました。
オンラインで参加したのは、私とイギリスのメンバーだけでしたが、会議の様子が映し出され、各国の委員長の顔を見ながら、直接意見交換を行えたことは、世界の動向を把握する上で大変有意義でした。
今後とも、各国の委員長との信頼関係の醸成と当局間の協力関係の強化を図りつつ、積極的に意見交換、情報共有を行い、当委員会の事故調査活動がより充実したものとなるよう、努めて参りたいと思います。
本日、私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 1問お尋ねします。知床で発生した遊覧船の沈没事故について、先月の記者会見以降船体の引き揚げなど、進展がありました。その後運輸安全委員会ではどういう調査をされる、もしくはされる予定なのか何かありましたらお願いします。
答: 本年4月23日に発生した遊覧船KAZUⅠ(カズワン)の事故につきまして、運輸安全委員会では、事故発生の翌日から船舶事故調査官を現地に派遣するなどして調査を進めており、これまでに、本船の運航会社のほか、ウトロ地区の他の観光船事業者、同地区の漁協など、関係者からの聴き取り調査を行い、さらに、本船の運航や船体、設備に係る情報等の収集を行っています。
本事故については、現在、調査を行っている段階であり、事実関係や原因などについて、これから慎重に、客観的かつ科学的に精査、分析を進め、原因を究明してまいります。
今後、船体調査を実施したいと考えており、関係機関である海上保安庁と調整を図っているところです。調整の内容については回答を控えさせていただきます。
問: ボーイング777のプラット&ホイットニーのエンジンの関係ですが、先日ANAが運航再開しましたが、事故のことを知っていて運輸安全委員会の存在を知っている乗客からすると、国がこういうものをと対策を示したとはいうものの、運輸安全委員会の再発防止策とか、そういったものがあってから飛ぶのかなと思っていたら、そうでもないところが、何となく忸怩(じくじ)たるというか、どう考えたらいいのかなと思う人もいるのかなと勝手に想像してるところなんですが。報告以前に運航再開になったことについて委員長はどうお考えでしょうか?
答: 全日本空輸が23日より、プラット&ホイットニー製エンジンを搭載するボーイング777型機の商用運航を再開したとの報道については承知しております。同型機の運航再開については、既に航空局がインレットの改修など再発防止策の実施を条件に認めており、全日本空輸は必要な対応を図ったうえ商用運航を再開したものと理解しております。
また、令和2年12月に、那覇空港を離陸した日本航空ボーイング777型機において発生した、エンジン損傷に係る航空重大インシデント調査については、現在、委員会の審議を経てとりまとめた報告書案について、調査参加国への意見照会を行っております。今後、調査参加国からの回答を待って最終的な取りまとめを行い、報告書を公表する予定です。
この運航再開に関しましては、航空局が本年3月に、同機についてインレットの改修など再発防止策の実施を条件に運航再開を認めており、同局において必要な検討を行ったうえ、運航再開の判断に至ったものと理解しております。
運航再開の経緯や再発防止策の詳細については航空局にお伺いいただきたいと思っております。
我々の報告書においても、再発防止策その他についてはNTSB、ボーイング社、プラット&ホイットニー社に意見照会を行っております。