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委員長記者会見要旨(令和4年4月26日

令和4年4月26日(火)14:00~14:24
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、4月23日に北海道知床半島沖の海域において、観光船「KAZUⅠ」から浸水している旨の救助要請が行われ、その後連絡が取れなくなる事故が発生しております。これまでに11名の方が救助されましたが、全員の方の死亡が確認されております。お亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表します。また、ご家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。現在も行方の分からない方々の捜索が行われております。一刻も早く救助されることを願っております。 この事故について、当委員会は翌4月24日に船舶事故調査官3名を現地に派遣し、調査を行っております。今後、収集した情報を精査し、更に所要の調査を行うとともに分析を進め、原因を究明してまいります。
 航空モードは、2月15日に大阪国際空港の北北西方を飛行中の日本エアコミューター機が動揺して乗客が負傷した事故(航空局からの通報は4月12日)、3月21日に岐阜県木曽川滑空場で発生した、滑空機が着陸した際、機体がバウンドして搭乗者が負傷した事故、3月26日に名古屋飛行場の東方を飛行中の日本航空機が動揺して乗員が負傷した事故、4月3日に岩手県下閉伊郡岩泉町付近で発生した、消火活動中の防災ヘリコプターからの散水により人が負傷した事故、4月18日に佐賀県有明海に小型機が不時着水して2名の方が亡くなられた事故、同じく18日に発生したアイベックスエアラインズ機の重大インシデント、4月22日に関西国際空港で海上保安庁の回転翼航空機が使用中の滑走路に、車両が進入した重大インシデント、4月23日に福井空港で発生した動力滑空機が着陸時にプロペラが地表面に接触した重大インシデントの8件です。
 鉄道モードは、4月5日に福島県内の福島交通 飯坂線の第4種踏切道で発生した踏切障害事故、同じく4月5日に静岡県内の天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線の第4種踏切道で発生した踏切障害事故の2件です。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.プレジャーボート事故防止情報のHP掲載  

 次に、プレジャーボートの事故防止情報のホームページ掲載についてご報告します。
 本日、運輸安全委員会ホームページに、「プレジャーボートの安全運航のために」と題して、これまでの事故等調査結果をもとにした発航前・発航後のプレジャーボートの事故防止情報を一つにまとめたページを作成しました。
お手元の資料2をご覧下さい。

 このページでは、当委員会の調査対象の船舶事故、インシデントの約3割を占めるプレジャーボートによる事故等の防止を目的として、発航前の点検や、航行中におけるレーダーやAISを活用した衝突事故の防止策などを、事故調査事例と併せご紹介しています。
 また、発航前点検等の参考としていただくため、小型船舶のエンジン故障による航行不能事例を検索できる「小型船舶機関故障システム」の活用方法などをご紹介しています。
 さらに、航行を予定している海域の事故の発生状況や傾向を事前に確認いただくため、地図上から発生場所や要注意情報を把握できる「船舶事故ハザードマップ」を用い、航行時に注意すべき事項を主な海域毎に掲載しています。
 これからの大型連休や夏場のプレジャーボートの利用が増えるシーズンを迎え、プレジャーボートを利用する皆様の事故防止の一助としてお役立ていただけると幸いです。

3.委員の異動  

 最後に、委員の異動について、ご報告します。

 任期満了に伴い、航空、鉄道、海事の各分野において、法制担当の常勤委員を務めた柿嶋美子氏が退任し、新任の委員として、早田久子氏が、4月1日付けで国土交通大臣から任命されました。
 早田委員は、損害保険会社勤務を経て、司法試験に合格し、大阪地方裁判所判事補に任官されました。その後、ハーバード大学法科大学院に留学して法学修士課程を修了し、帰国後も判事補及び判事を続け、2期20年間の任期満了に伴い退官後、弁護士業にも従事していました。
 早田委員は、地方裁判所の一般民事事件及び家庭裁判所の取り扱う事件を長く担当するなど、国民に身近な事案を担当した経験もお持ちですので、リーガルマインドを持つ法律の専門家としてだけではなく、委員の大半が各分野の技術的な専門家である中、国民・利用者目線で審議に参画する委員としてもご活躍いただけるものと期待しています。

 また、私、委員長の武田展雄及び航空分野の非常勤委員である津田宏果氏についても、4月1日に再任されております。
 津田委員には、引き続き、飛行力学、制御、飛行シミュレーション及び飛行試験に関する高い識見を生かし、当委員会でご活躍いただくことを期待しています。

 さて、ご報告のとおり、私も委員長に再任されましたので、少し所感を述べさせていただきたいと思います。
 運輸安全委員会委員長として二期目を迎えるにあたり、航空、鉄道、船舶の事故等の原因究明のための調査を適確に行い、再発防止、被害軽減のための施策・措置を提言することにより、公正・中立の立場から日本の運輸安全に資するという重要な役割を担う責任の重さを、これまで以上に、ひしひしと感じています。
 事故調査の基本は適確な事実情報の収集です。一つ一つの事案について、関係者からの詳細な聴き取りなどとともに、科学的な調査手法も駆使して着実に事実情報を積み上げ、定量的解析・分析へと繋げていくことが重要と考えています。様々な規模、態様の事故等について、こうした調査、分析を重ねていくことによって、どのような事案にも即座に対応していけるようにしていきたいと考えています。
 今後とも、製造者、運行者、運輸当局などと対話もしながら、運輸安全委員会として着実に日本の運輸の安全文化に貢献する役割を果たしていきたいと考えます。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(知床半島沖旅客船浸水事故関係)

問: 2問おうかがいします。知床の観光船の事故ですけれども、初動の段階とのことですけれども、どんなことを調査されたかということと、初動の段階だとは思うんですけれども、今後、直近ではどんな資料、証言とかを重点的に収集していきたいかという点を、まずお伺いできますでしょうか。
答: はい。先ほども申し上げましたとおり、正確な事実情報を確実に得るということ、その中には口述も含まれますけれども、事実情報の確保に努めております。原因等については調査中でございまして、今は本船に関する情報の収集や、船舶所有会社への聴き取りの調査を進めております。収集した情報等をもとに分析を行い、原因を究明してまいりますが、なかでも定量的に解析できるような事実情報、それを得ていくという、原因を究明するための事実情報を集めている最中であります。
問: ありがとうございます。2点目なんですけれども、現状船体が見つかっていない状況だと思うんですけれども、先ほど海底で一定の大きさの物体の反応があったという情報もありますけれども、これが船体かどうかというのは別にして、仮に船体が見つかった場合は、どんな点を確認されて、それが事故原因の究明にどのように寄与されるというふうにお考えでしょうか。
答: まだなにも出ていない段階で言う事は差し控えたいと思いますけれども、もし見つかればですね、当然船体の状況、事故前にどういう状態であったか見ることができれば、そういう解析ができるわけでございますので、先ほど申しました科学的に解析することができる大事な情報であると思っています。
問: 引き揚げとか、その辺はいかがでしょう。
答: それに関して我々は言える立場にありませんが、定量的な分析をするためにはあったほうがいい。重要な情報だと思っています。

問: 初動調査でどこまでやれるかということもあるんですが、今までの報告書でも、かなりこういう悪天候とか、運航基準とかっていうものをしっかり守っていきましょうという報告書があると思うんですが、今回もかなり気象が荒れる中での出航だというのが言われていることなんですけれど、委員長のご所感を聞かせてください。
答: そういった事例は今までの報告書でたくさんあります。どの事例が参考になるかということは言える段階ではございませんけれども、今まで蓄積した情報があるわけです。それらを活用することも考えながら、この事故の調査にあたっていくということではないかと思います。

問: ちょっと、まだ時期尚早かもしれないんですけれども、今回の知床の事故なんですけれども、やはり他の漁船とかが出港を控える中で、この観光船は出て行っていたということで、人災なのではないかという専門家の声とかも上がってきているんですけれども、その辺りはどんなふうな印象を持たれていますか。
答: 印象を簡単に言うことはできません。事故の原因について現在調査中ですので。今集めている情報をですね、本船に関する情報ですとか所有者等の聴き取りを進め、その情報等をもとに原因を究明してまいります。

問: まだ初動段階ということですけれどもゴールデンウィークに向けて早めに今回のルートについて事業を始めたということで、コロナ禍で経営も厳しかった中、無理をしたところがあったと思います。そうした事業者の経営問題について踏み込んで言及する可能性はありますでしょうか。
答: それが事故の原因に関わる場合には言及せざるを得ないかも知れません。現在調査中でございますので、背後要因についても今後の調査の内容を踏まえて分析してまいりたいと思います。

問: 今回の事故に関して、運輸安全委員会の調査官の方のほか、国交省の特別監査、それから海上保安庁の捜査というのが、それぞれ並行して行われていくわけなんですけれども、その辺りっていうのは調整みたいなことというのはどういうふうにされるんでしょう。例えば事業者の方への聴き取りみたいな部分では、同時に同席して聞くことがあるのかどうかというところとか、その辺り教えていただければと思います。
答: 海上保安庁は捜査を、我々は調査を行います。運航労務官は運航管理状況についてということで、観点が違います。ただ、調べる会社は同じですので、重複しないように時間の調整とかはやらせていただいております。聴く内容によりましては一緒に聴くこともあるし、それぞれが聴かなければいけないことがあります。

問: 観光船の事故ですけれども、まず事実関係と原因究明ということなんですけれど、最終的な調査報告書には、こういう事故を起こさない防止策とか被害を抑える改善策とか、そういう提言なり指摘なんかも含まれるということなんでしょうか。
答: はい。そこを目指してやっております。それが如何に定量的な調査に基づいてできるかというところが我々のやらなければいけないところです。背後要因について先ほども質問がありましたけれども、そういうものが関与している場合には、それも含まれるかも知れません。今の段階でなにか言えるわけではございませんが、やはり観光船というのはプレジャーボートと並ぶ海のレジャーにとって重要なものでございます。それに事故・インシデントがある場合には我々が事故防止策を提言できないといけないと思っていますので、それに向けて努力したいと思います。

問: 一点だけ。今、事実関係の確認をされているということなんですけれども、社長にもお話を伺っているような状況でしょうか。社長、従業員へのお話しをうかがうことと、運航に関する記録を収集すると、そのようなことという理解でよろしいでしょうか。
答: 運航会社については調べております。ただ、今はこういった状況下ですので、社長の話は聞くことになると思いますが、そういったあたりにつきましても今後調整しながら行っていきたいと思います。

(有明海小型機不時着水事故関係)

問: 有明海への不時着のことでお伺いさせてください。調査の状況、燃料切れの話もちょっと出ていますけれど、調査の状況と今後の調査の見通しについて教えてください。
答: 本件も初動調査中なのでお話しできることは少ないですけれども、3人乗っておられて2名の方が亡くなられておられますので、1名の方のお話しが聴けるかということが重要でございます。それと阿蘇の離着陸場に事故調査官も行っておりますけれども、その情報と、それから機体の情報が有るか無いかというところ、そこがポイントになりますが、今の段階では何も言うことができないという状況でございます。

資料

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