令和4年1月18日(火)14:00~14:18
国土交通省会見室
武田委員長
運輸安全委員会委員長の武田でございます。
ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。
はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道モード合わせて6件ありました。
航空モードは、12月22日に群馬県桐生市で発生した朝日航洋の回転翼機から吊り下げた物資の一部が落下した重大インシデント、1月8日に鹿児島空港で発生した他の航空機が使用中の滑走路への着陸を試みた重大インシデントの2件です。
鉄道モードは、12月27日に滋賀県内の近江鉄道本線で発生した列車脱線事故、12月28日に広島県内のJR山陽線で発生したJR貨物の列車脱線事故、12月30日に群馬県内の上信電鉄上信線の第4種踏切道で発生した踏切障害事故、1月4日に岐阜県内の長良川鉄道越美南線の第3種踏切道で発生した踏切障害事故の4件です。
このうち、JR貨物の列車脱線事故について、当委員会は翌29日に鉄道事故調査官3名を現地に派遣し、軌道及び車両の状況、積荷の状況、乗務員からの聴き取りなどの調査を行いました。
これまでの調査において、既に報道されておりますとおり今回脱線した貨車の積荷に偏積が認められましたが、当該偏積と脱線との因果関係については、今後の検証を必要と致しますので、具体的にご説明する段階にはありません。
今後、車両や軌道の整備状況など所要の調査を進め、これまでの調査で得られた情報とともに分析を行い、列車脱線の原因を究明してまいります。
事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。
次に、運輸安全委員会ダイジェスト第38号として、遊漁船の衝突事故に関する分析集を本日公表しましたのでご報告します。お手元の資料2をご覧願います。
近年、遊漁船とプレジャーボートや漁船との衝突事故が増加しています。昨年には、5月に千葉県いすみ市沖で釣り客1名がお亡くなりになる事故が発生したほか、9月には大阪府阪南市沖で釣り客5名と乗組員合わせて7名が負傷される痛ましい事故も発生しているところです。
このようなことから、今回の分析集では、遊漁船の衝突事故の調査結果について分析を行い、航行中の遊漁船のうち、相手船に気付かないまま衝突した事故が約8割を占めていることなど、発生した時の状況を分かりやすく示すとともに、周囲の見張りを強化するため、レーダーの搭載やAIS(船舶自動識別装置)アプリの活用など、衝突事故の防止に向けたポイントを提言しています。
この分析集については、これから年度末にかけて全国で開催される遊漁船事業者の方々を対象とする安全講習会において説明を予定しているほか、関係団体等を通じて、遊漁船を操船される皆様に提供していくこととしています。関係の皆様にこの資料をご活用いただき、今後の事故防止に役立てていただきたいと考えています。
最後に、本日は令和4年最初の記者会見ですので、所感の一端を述べさせていただきます。
昨年、運輸安全委員会の調査対象となった事故等の件数は、航空が21件、鉄道が12件、船舶の重大案件が7件で、各モードを合わせて40件でした。
また、地方事務所の調査対象となった船舶事故等は全体で845件でした。
各モードの主な事案としては、航空モードでは、10月に神奈川県秦野市で回転翼機の墜落による死亡事故や北海道美瑛町で動力滑空機の墜落による死亡事故の発生がありました。
鉄道モードでは、先ほどご報告したJR山陽線の貨物列車の脱線事故のほか、10月に日暮里・舎人ライナーの脱線事故が発生しています。また、これも先ほどご報告のとおり、年末に第4種踏切道の死亡事故が発生し、昨年一年間の第4種踏切道の死亡事故は5件となっています。
船舶モードでは、5月に愛媛県沖で日本の貨物船とマーシャル諸島船籍のケミカルタンカーの衝突事故が、また8月にはパナマ籍の貨物船が八戸港内で乗り揚げる事故が発生しました。
このほか、一昨年に発生し現在も調査中の事案として、令和2年2月の福島県警航空隊の回転翼機の不時着により重軽傷者が発生した事故、7月のモーリシャス沖の貨物船座礁事故、12月に発生したJAL機のエンジン損傷インシデントなど注目されている事案もあります。
運輸安全委員会といたしましては、これらの事案も含め、いずれの事故等につきましても原因分析や報告書案の審議を鋭意進めているところであり、できるだけ早期に報告書を公表し、事故等の防止措置につなげてゆく所存です。
さて、一昨年来のコロナ禍では、現場調査や事故等関係者との面接調査に際し、3密の回避や飛沫防止措置といった感染拡大防止対策の徹底が求められるなど、当委員会の事故調査活動も少なからぬ影響を受けたところですが、事故調査官をはじめとする事務局職員の地道な努力により、昨年もほぼ通常に近い事故調査活動を継続してまいりました。
令和4年も、年明けからオミクロン株の急速な感染拡大もあり、通常とは異なる状況が予想されますが、引き続き感染対策を徹底して的確な調査活動をできる限り迅速に行ってまいります。
特に、本年は、昨年成立した航空法等の改正法の施行(令和3年6月4日成立、6月11日公布)に伴い、当委員会では、今後の利用拡大が見込まれるドローン等の無人航空機の事故調査を新たに行うことになります。このため、航空事故調査官2名を新たに採用して、新しい分野の事故調査にも対応できるよう準備を進めているところです。
運輸安全委員会といたしましては、今後も、事故等の原因を究明し、同種事故の防止、被害軽減のための施策・措置を提言することにより、公正・中立の立場から、運輸の安全を守る要となる当委員会の重要な役割を着実に果たすため、引き続き委員と事務局が一体となって取り組んでまいります。
本日、私からは以上です。
何か質問があればお受けします。
問: 昨年12月22日の群馬県桐生市の上空で起きたヘリコプターから生コンが落下した重大インシデントについて伺えればと思います。現状、どういった状況でコンクリートが落下したのかですとか、わかっている範囲内で教えていただければと思います。
答: 昨年12月22日に群馬県桐生市の山中で発生したヘリコプターの外部に吊り下げた生コンクリートが意図せず落下した重大インシデントについて、当委員会は翌23日に3名の航空事故調査官を現地に派遣し、吊り下げた物件の落下状況、落下した生コンクリートを入れていたバケット(運搬容器)の状況、乗員及び目撃者からの聴き取りなどの調査を行いました。
これまでの調査において、物件の落下場所については確認されておりますが、今後、さらに落下に至った経緯についての詳細な調査やこれまでの機体及びバケットの整備状況の情報収集を行うとともに、関係国の協力も得ながら調査で得られた情報の分析を進めてまいります。
問: 冒頭委員長の方からも説明がありました山陽線の貨物列車の脱線事故についてなのですけれども、発生時期が暮れでありまして、この時期に起きた事故で物流や帰省にも影響が出たと思うのですが、今はまだ途中段階ではあると思いますが現時点でのご所感があれば聞かせいただきたいということと、報告書をまとめる時期の見通しというのも教えていただけたらと思います。
答: 冒頭で申し上げましたとおり、現在、事実情報の収集に努めているところであり、具体的にご説明できる段階にはありません。過去に北海道で同じような事例も起きていますので、そういったところも参考にしながら分析を進めていきたいと考えています。報告書の公表時期につきましては、まだ何とも申し上げられるような段階ではないということです。
問: 潜水艦そうりゅうの事故の調査状況は、今どのようになっているのか教えてください。
答: 新たにご報告することは無いのですが、昨年2月8日に高知県足摺岬の南東沖で発生した貨物船オーシャンアルテミスと潜水艦そうりゅうの衝突事故につきましては、これまでに現地調査や、関係者からの聞き取り調査等を実施しており、現在、収集した情報や資料の精査、分析等を進めているところです。
本事故については、今後、さらに所要の分析を進めるとともに報告書のとりまとめ等を行うため一定の期間が必要であることから、発生から1年以内に事故調査を終えることが困難ですので、経過報告を行いたいと考えています。
問: 確認ですが、経過報告は後日発表だと思うのですが、1年以内が困難になっている要因というのは、もう少し詳しく、わかれば教えていただきたいのですが。
答: 今後、報告書の原案を作成し、委員会での審議を経て報告書案としてまとめた後、原因関係者からの意見聴取の手続きを行う必要がありますので、公表までに一定の時間を要するという状況です。従って、現段階において具体的な時期を申し上げることはできませんので、できるだけ早く報告書を出せるように努力していきたいと思っています。